第96話 オープン馬車再び・・・

色々あったがやっとイマハルにつく。


「セイ、あれがイマハルだよ。」

「あれがアベルの住んでる所・・・私も・・・」

「どうしたのセイ?」

「ううん、何でもないよ。それよりは早くお城に・・・」


町に入ろうとしたらムナシゲに止められられる。

「お待ちください。こちらに乗り換えを。」

そこにはキョウで使用したオープンな馬車があった。


「いや、これはまずい・・・」

俺は拒否しようとするが・・・

「アベルさま、王家との仲の良さを我が領内の民にも教えていただきたく。」

ムナシゲが力強く要請してきた。


俺とセイは顔を見合せ、

「「わかりました・・・」」

仕方なく承諾する。


町に入ると、歓声に包まれる。

「アベルさま!お帰りなさい!」

「ご無事で何よりです!」


「アベル大人気だね。」

「母のおかげだよ、俺自身は何もしてないから。」

「それでも、慕われていることに違いないよ。それに、これからアベルの事を知ってもらって、もっと慕われたらいいだけじゃない。」


「セイ、ありがと。」

「うん?なにが?」

「いや、なんでもないよ。それよりセイも手を振って。」


「ここでは私はオマケだからね。アベルが頑張って~」

セイはにこやかに笑いながら軽く手を振るだけにしていた。


「さぼってるなぁ~」

「ふふん、あまり声もかけられないからね。気楽ですよ~♪さあ、アベルは頑張って手を振って上げて。あっ、あそこの子供頑張って呼んでるよ。手を振ってあげないと。」

セイに言われて手を振る。


「セイも振りなさい、この数は大変なのです。」

「だから、私は名前が売れてないのです♪」

セイは余裕を見せていたが・・・


「姫さま~こっち向いてください~」

セイを呼ぶ声がした。

「あれ、セイ呼ばれてるよ、手を振らないと。」

「・・・おかしいな、なんで私の顔を知ってる人が?」

しかし、セイも呼ばれた以上手を振る。


その行動に姫様と言うことが伝わり・・・

何故か勘違いを起こした町の人達が・・・


「アベルさま!御成婚おめでとうございます!」

「姫さま!アベルさまを宜しくお願いします!」

「お幸せに!」

二人を祝福する声が広がっていく。


「ア、アベルどうするの?何か勘違いが酷くない?」

「どうしよう?取りあえず否定してみるか。違うからなぁー!セイは視察に来ただけだから!」

俺は立ち上がり大声で否定するが・・・


「セイって呼んでるんですか!」

「二人はどこまですすんでるんです?」

全く聞き入れてくれない。


「ちょっと、アベル、ダメじゃない。」

セイも立ち上がった所、馬車が石を踏み少しぐらついた。


「きゃっ!」

「おっと、セイ大丈夫?」

セイが倒れそうになったから俺が抱き寄せると・・・

「ありがと、アベル・・・」


「きゃあー、抱き合った。」

「やっぱり二人はそういう関係なんだ。」

誤解は深くなった。


「セイどうしよ?」

「うーん、これ無理じゃないかな?暫く放置する?」

「いいのか?俺は別に問題ないけど、セイは男との噂があったら色々まずいのでは?

「今さらじゃないかな?キョウで色々やっちゃった後だし・・・」

「あはは・・・」

「笑い事じゃないんだけどなぁ~アベルわかってる。」

「わかってるって。キョウに帰ったら大変だなぁ~」

「むぅ、他人事ですか?」

セイはちょっとホッペタを膨らます。


「実際、他人事だし~俺はキョウに行かなければいいだけだもん♪」

なんだかんだ言っても、キョウは遠いし滅多に行くこともないから噂があったも気にしないでいいと考えていた。


「あーそんなこと言うの!私はアベルせいで大変なのに!」

「が~ん~ば~っ~て~」

俺はセイを軽く励ます。


「あー酷い!そんなこと言う人はこうよ!」

セイは腕を組んできた。

「セ、セイ?何してるの?噂になっちゃうだろ?」

まずい、イマハルでの噂はさすがに恥ずかしい。


「ふふふ、アベルもホームで噂にまみれたらいいのよ。」

セイは顔を真っ赤にしながら少し涙目だった。


俺はセイを説得に入る。

「セイ、恥ずかしいなら止めよう、こんなの誰も幸せになれない。」

「いいの、私の恥ずかしさでアベルが恥ずかしい思いをするなら。キョウであんな醜態さらした私にもう失うものなんてないわ!」

セイの目は正気を失っている。


「落ち着くんだセイ!まだ失ってない物もたくさんあるはず、冷静になるんだ。」

「アベル、一蓮托生よ!あなたも羞恥に震えなさい。」

チュッ♡

セイは俺のホッペタにキスをした。


ただ、セイはイッパイイッパイだったようで、キスした後は俺の腕にしがみついたまま、動かなくなった。

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