第85話 ヤマ家に進軍

ヤマ家に対して、ムナシゲとチカヨシに侵攻を命じた。

その数騎兵三千、屯田兵一万の総勢一万三千だった。


俺は数を聞いてセキシュウに増援を出せないか相談する。

「セキシュウさん、やはり数が少なくない?もっとだせないかな?」


俺は侵攻するのに少ない気がしていたが、

セキシュウにしては充分との事だった。


「アベルさま、大丈夫にございます。それに傘下の兵だけの方が戦い易い事もあるのです。報告を待ちましょう。」


「しかし、兵の大半が屯田兵ということはそこまで強くない戦力なのでは?」


「なるほど、アベルさまの不安はそこでございましたか。

御安心を屯田兵と言いますが彼等も訓練、実戦ともに充分の兵にございます。」


「でも、畑がメインなんだよね?」


「そうですが、彼等が畑にしているのは魔物の領域です。

長年開墾が難しい所に入り、畑と魔物を耕しているのです。」


「それって、屯田兵の人達の負荷が酷くないかな?」

屯田兵の現状を聞いて改善するべきと考えたが・・・


「彼等は進んで厳しい所に向かうのです。

彼等の望みがサチさまの為に国力を上げる事なのですから。」


「・・・母が何かしたのかな?」

母はいったいどれだけ人に慕われているのだろう。


「彼等は全国でサチさまに拾われた孤児なのです。

優れた才能のあった人はその分野で活躍しておりますが、

どうしても才能に乏しかった者達が如何にすればサチさまに褒めてもらえるかで考えた結果、

血と汗を流し、時には体を改造して、皆で協力して、広大な農地を作るのに至ったのです。」

感動出来る話だが一部おかしな所があった。


「すいません、何も知らないで屯田兵が弱いと決めつけしまって・・・あれ?体を改造?」


「何の事でしょう?」

セキシュウはとぼける。


「セキシュウさん、教えてもらえます?」

セキシュウは此方を見ない。


「・・・彼等はちょっとだけ、人と違うところがあるだけですよ。」


「・・・たとえば?」


「・・・火を吐くとか?」


「だいぶ違うじゃん!ねえ、大丈夫なの?」


「大丈夫です。ちゃんとみんな生きてますから。」


「どういうことか説明してもらえる?」


「彼等は力を得るために魔道具を体内部に移植したんです。」


「それって大丈夫なの?」


「ちゃんと手順を守れば大丈夫のようです。その道の専門家も領内にはいますから。」


「じゃあ、屯田兵というのは?」


「体に魔道具を埋めた兵士ですね。いろんなのがいますよ。」


「それは本人の意思ですか?」


「ええ、サチさまが作った魔道具を埋めるのが彼等の幸せのようです。今は何個埋めたかを競っている者もいるとか。」


「・・・なんで、そんな事に。」


「元々、怪我をして腕を無くした者を助けるために腕を魔道具に変えたのが始まりでした。そうしたら魔道具の力を使える事に気付き・・・あとは、色々試しながら埋めていったら・・・」


「それが一万も?」


「一万です。強いですよ、一般人なんて敵じゃないです。」


俺は別の意味で不安を感じたが、その頃ヤマ家領内では、

既にムナシゲとチカヨシは戦端を開いていた。



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