第84話 オオチ家の末路

オオチ家は軍勢をイマハルに向け出陣させていた。

オオチ家の認識だとサチの家臣タケヨシは、元が海賊ということもあるのか、サチがいなくなってからは家臣団と距離をとっており。

現在は交易を通じてオオチ家と友好的な付き合いもしていた事もあった為、今回の戦争には参戦しないとみていた。

そして、その認識が滅亡へと繋がる。


イマハルに上陸するため、船を急がせる総勢中型船三百隻、上陸用に兵士三万を乗せての大艦隊だった。


しかし、ヨイが見えた辺りで、タケヨシが艦隊を連れて立ちはだかる。


「俺の海で何をしている。」


タケヨシがオオチ家の艦隊に問いかけ、

オオチ家の指揮官スエが答える


「タケヨシ殿、道を開けてもらえぬか!」


「何故だ?」


「これより我がオオチ家がイマハルを支配致す。もちろん、キシマは今まで通りタケヨシ殿のものだ。

我等はタケヨシ殿とは今後も良い付き合いをお願いしたい。」


「断る!我が友サチより息子アベルを託された。

俺はアベルを守る。アベルを狙うお前らはここで海の藻屑になるがよい。」


「待たれよ!考え直されよ。サチ殿の子供を名乗る者は、何処の馬の骨とも解らぬ男の子ではないか、はえあるオウカ国の貴族に相応しくないではないか!」


「黙れ!サチを侮辱しやがって!生きて帰れると思うな!やれ!」


タケヨシの号令の元、タケヨシ艦隊から魔道砲が発射される。


この魔道砲はサチが海戦用に開発した魔道具で、魔力を込めると鉄が生成され打ち出される仕組みとなっている。


なお、現在所持しているのはタケヨシだけで作りの難しさから、キシマに住むサチの一番弟子のゲンナイのみが作る事ができ、タケヨシの独占状態であった。


魔道砲に船を破壊され、オオチ家の船はなす術もなく次々に沈んでいく。


スエは最後の交渉を求める。

「タケヨシ殿お止めください!必ずタケヨシ殿にも必ず利が有るように約束します。

そうだ、通行料をお支払い致す。金貨二万枚でどうだろう?」


「・・・」


「さ、三万だす!だから攻撃を止めて通してくれ!」


「友を金で売れるか!何処まで俺を馬鹿にするんだ!」


タケヨシの怒りに呼応するようにスエが乗る船に砲撃が一斉に撃ち込まれる。


「うわぁーーー!」

その後、オオチ家の船は全て沈められ、兵の多くが上陸に備え鎧も着ていた事も有り、ほとんどが船と運命を共にした。


そして、ヨイに侵攻した為にオオチ家の守りは手薄になっていた。


「行け!突き進むのだ!」

モウリ家次男モトハルがオオチ家を強襲する。

モトハルは武勇に秀でた漢で、瞬く間に防衛線を突破、進路以外の砦を無視して領内グチを目指す。


オオチ家重臣オキモリはグチの手前に残る兵を全て配置する。

「モウリよ!何故攻めてくる。大義なき戦は禁じられておるはず!ただちに領国に帰られよ!」

「義を知らぬオオチ家に言われるとは片腹痛い!我等はサチさまの領地を守る為に軍を起こした。誰がこれを責めようか。」

「ほざけ!己らはただ領地を広げたいだけであろう。」

「それをオオチ家が言うとはな。それはお互い様だろ、見込みが甘かったと思い諦めるのだな。」

「我等の主力が戻ればお前らなど敵ではないわ!」

「その前に片をつけるからな。覚悟しろ!」

両軍がぶつかり合う。モトハル率いる一万に対して、オキモリは八千。

モトハルが突撃を仕掛けるが、オキモリは相手にせず時間を稼ぐ。


グチは守りに向かない城のために、オキモリは手前の守りに向いた地形を利用して防戦していたのだが、予期せぬ事が起きる。

「なっ!グチが燃えている。」

「急報!オキモリさま、戦をお止めください、殿は、オオチ家はモウリに降伏しました。」

伝令兵は泣きながら、敗戦を伝えてきた。


「ば、ばかな・・・何処から・・・」

「敵は海より押し寄せてまいりました。戦で此方の船団がいなかった事で発見すら出来なかったようです。」

「くっ、くそ!」

オキモリは軍配をへし折る。

「オキモリさま!」

「仕方あるまい、戦は終わりだ。」

オキモリは肩を落とし降伏を受け入れた。


「親父!なんでグチにいるんだよ!」

「お前があまりに遅いからの、先回りしてみたわ。」

モウリ家当主モトナリは笑いながらモトハルに伝える。

「俺は陽動か?」

「見事役目を果たしたな。まあ、教えなかった事は謝ろう。」

「悪いと思ってないのにか?」

「そうじゃの、モトハル、戦は多方面から考えるものだ、よく覚えておけ。」

「ああ、今回は親父にしてやられたよ。」

「まあ、勝ったんだから、良しとせい。さて、此処からは政治じゃな。タカモト、陛下に使者となれ。アベルさまを救うためにオオチを成敗したとな。」

「はっ!」

「良いか、我等はあくまでもアベルさまを救援したのだ。其処を強調するのだぞ。」

モトナリはアベル救援を名目に、侵略を正当化、あわよくば領地として認めさすつもりだった。

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