第66話 公爵邸

マインとフランクを追い出したあと、俺達は公爵邸に向かう。


屋敷に着いたら、ユミナが先に降り、俺達を出迎えてくれる。


「ようこそ、ローエン公爵家に、私達はアベルさまの御家族を歓迎いたしますわ。」


屋敷には使用人達が勢揃いしており。

全員が深々と御辞儀をしていた。


「あ、あの恐縮です、でも、私達にそんな礼は必要ありません。」

アダはあたふたとしていた。


「ユミナみんなが緊張するから、そこまでにして。」

「わかりました。皆さん職務に戻ってください。ここからは私が案内致しますね。」


俺達はユミナに案内され応接室に通された。

「おお、よくお越しくださった、私がローエン公爵ハインリッヒである。」

「公爵さま!」

アダとエダ、ルルは土下座をする。


「頭をおあげください、アベル殿の親なら私と兄弟みたいなものではないですか、そんな礼など必要ありませんよ。」

「それはどういう?」

「なに、娘の婿になるからな、アベル殿の父に私もなるということだ、おっ、となると私の方が父としては後輩になるのかな?」

ハインリッヒは笑いだした。


固まる家族を見て、俺は助け舟を出す。

「ハインリッヒさま、家族が困ってますから、それぐらいで。それより子供達もいるので休ませてあげれませんか?」


「これは失礼した。部屋は準備させてある。何か足りないものがあればメイドに伝えてくれ。」


ハインリッヒとの会見は早めに終わらせた、長くはアダとエダが持たないと判断したからだ。


そして、案内された部屋でも家族は固まっていた。

「叔父さん、叔母さん、何を固まってるの?」

完全停止している、アダに代わりエダが答える。


「だ、だって、この部屋なに?なんでこんなに立派なの?」

「そりゃ公爵家だからね。立派じゃないとカッコもつかないだろ?」


「じゃなくて、なんで私達の部屋もこんなに豪華なの?」

「歓迎の証しじゃないかな?」

「アベルはなんで平然としてるのよ。」

「うーん、慣れたからかな?」

「はぁ、そうよね。あんたは現状を受け入れるのが早い子だもんね。」

エダはタメ息混じりに言う。


「それで、お兄ちゃんは公爵家の婿になるのかな?」

ルルは不機嫌そうに聞いてくる。

「まあ、そうなるかな?貴族社会の後ろ楯にもなってもらうし。」


「何それ!そもそもなんで貴族になってるの?」

「成り行きかな?」

「お兄ちゃん、普通は成り行きで貴族になれないし、公爵令嬢と結婚したりしないんだよ。」


「・・・ハッ!確かに!」


「もう、お兄ちゃんはいくつになってもしょうがないんだから・・・わかりました。私がお兄ちゃんの世話をしてあげます。」

「ルルが?」

「お兄ちゃんは常識が無さすぎです。私が見てあげないとダメな人になってしまいます。」


「そんなことないよ、これでも、貴族として・・・何かやった?」

「なんでお兄ちゃんが疑問系なの?」

「そういえば、貴族らしいことしてないなと。」

「はぁ、やっぱりダメだよね。お父さん私はお兄ちゃんの所で暮らすから!」

ルルの言葉にアダは反応する。

「何?ダメだ、家族は一緒にいないとな、何処かの誰かみたいに消息不明は許さん。」


アダの言葉に惚けてみる。

「どっかの誰かってだれ?」

「お兄ちゃんに決まってるでしょ!お父さん、せっかく見つかったんだよ。ここで捕まえて置かないと次はどうなってるか!」


「それはそうだが・・・」


「納得しないで!それに今後は消息わかるよ。ローエン公爵家に聞けばわかるようにするから。」


「お兄ちゃん、普通の人は公爵家に問い合わせなんて出来ないからね。」


「・・・そうだ、それならみんなで王都で暮らそうよ。」

「えっ?」

「孤児院のみんなも此処にいるし、どうかな?」


アダは深く悩む。

「あなた、いいんじゃありません?何を言ってもルルはアベルに着いて行きそうですし。それなら家族みんなで行きましょうよ。」

エダがアダを説得する。


「わかった、だが、仕事をどうするかだな・・・」

「叔父さん、孤児院をしたいならそれを用意するし、いっそ働かなくても将軍としての給料もあるから大丈夫だよ。」


「それならみんなで行こうかな、私も王都に行って見たかったしな。」

アダが了承したことでみんなで王都に行くことが決定した。

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