第65話 話し合い

「それで、なんでエンにいるんだよ、そこから聞こうか?」

「それより早く手枷を外してよ。」

マインは手枷を外せと騒ぐが・・・


「うるさい!正直に答えろ。答え次第でどうするか考える。いいか、お前は俺を見殺しにしたんだ、そろそろふざけた態度を止めないと始末するぞ。」

俺は殺気を込めてマインに問う。


殺気に負けたのか、マインの態度がしおらしくなる。

「えっ、えーと私はアベルを追って・・・」

「正直に言えよ!そもそも、お前ら別の町に行ってたよな?」


「うん、私とカインはシーマを出たあとノースに行って冒険者をしていたんだけど、上手くいかなくて・・・」

「それで?」

「カインが兵士になれば出世出来るって言って、私は嫌だったんだけど、遠征軍に参加して・・・命からがら逃げて来たの。」

「うん、そこまではわかった。よく生き残れたなというのが本音だが。」


「運が良かったんだと思う・・・そして、私はノースの兵士用の女性宿舎には入れたんだけど、カインは男性用宿舎は部屋が無くて、そしたら、段々みすぼらしくなっていって・・・」

「それで、捨てたのか?」

マインは黙ってうなずいた。

カインにも恨みはあるが、少し同情してしまう。


「仕方ないじゃない!冒険者としてもダメだったし、兵士もやれてないのよ!そこにアベルが将軍よ、私を養ってくれてもいいじゃない!」


「なんでそうなるんだよ。」

もうあきれるしかなかった。


「ねぇ、アベル、私知ってるのよ。昔から私の事を好きだったでしょ?今なら彼女にでもお嫁さんにもなってあげるからさ。」

「はあ?」

俺があまりにも身勝手な話に呆気をとられるとフランクが便乗して押し付けてくる。


「それはいい、アベルくん、マインを宜しく頼むぞ!今の君なら任せられるな。」


「何を勝手な事を!」

俺が反論しようとすると、後ろから声が聞こえてきた。


「あら、おかしな話をしてますね。私にも聞かせてもらえますか?」

振り返るとユミナがいた。


「何?この子、今お姉さんは大事な話をしているのよ、関係ないお子様はどっか行ってくれないかな?」

マインはユミナを知らないのか適当にあしらおうとする。


「あら、関係はあります。だって、私はアベルさまの婚約者ですから。」


「婚約者・・・?」

「あら、聞いたことぐらいはあるでしょう?アベルさまの婚約者の公爵令嬢ですよ。」


「あなたが?まだ子供じゃない!」

「ふふ、すぐに大人になりますから。あっ、その頃には貴女は叔母さんですか?」

「そこまで年は離れてないでしょ!」

ユミナとマインはやり合う。


ユミナの後に控えていたサイゾウが俺に話しかけてきた。

「アベルさま、話はお伺いいたしました。アベルさまを見殺しにしただけではあきたらず、奥方の地位を狙うなど不届き千万、始末さしてください。」


普段冷静なサイゾウが切れていた。

「サイゾウさん、落ち着いて。」

「いえ、公爵令嬢との婚約すら納得させるのは苦しいのに・・・よりにもよってビッチだと・・・」

マジ切れのサイゾウに引きつつ、


「落ち着けって、俺がマインを選ぶ訳がないだろ?」

「そうですが・・・」

サイゾウは渋々納得してくれたが・・・


「ふーん、それならユミナさんなら選ぶんだ。」

俺の後に不機嫌なルルがいた。


「ルルどうした?」

「お兄ちゃん、子供に手を出すってどういうこと!マルカとほとんど変わらないじゃない!」

ルルはマルカを指差す。

「あーそういえば、そうだな。」


話が聞こえたのか、ケーキを食べてたマルカが反応する。

「うん?お兄ちゃんマルカと結婚するの?いいよ。」

「マルカそんな話じゃないからな。」

「そう?別にいいのに。」

マルカは気にも止めずケーキを食べ続ける。


「ルルが変な事を言うから。」

「私が悪いの?そもそもマルカと同じくらいの子供が婚約者って何よ。」


「これには理由があるんだよ、援軍の将をするのに血縁とかが大事だったんだよ、きっと全てが終わったら破棄されるって、ほら俺は貴族になったけど元々平民だからな。」


その言葉を聞いたユミナは。

「あら、破棄なんてしませんよ。それより王都に帰ったら挙式しましょうね。」


ユミナの言葉にルルがジト目を向けてくる。

「お兄ちゃん、話が進んでるんだけど?」


「あれ?今だけだと思ったのに?」

「ふふ、お父様も逃がさないと思いますけど、何より私が逃がしませんよ。」

同じ年のマルカと違って、ユミナは妖艶な感じがした。


「ちょっと、私の話をしてるのに邪魔しないでよ!」

マインがヒスをおこしながら叫ぶ。


「あー、事情はわかった、手枷ぐらいは外すから、俺に関わるな。」

「なんでよ、この際側室でもいいわ、養ってよ。」


「嫌だよ、俺はお前への恨みを忘れた訳じゃ無いからな。まあ、町から追放ぐらいは撤回してもらってやるから、あとは俺の知らないところで好きにしろ。」

「何よ、私が貴方のものになってあげると言うのに何が不満なのよ!」

自分の主張を曲げないマインに俺はアキアキしたので。


「はぁ、話が通じないな、リッキーさん、手枷を外してマインとフランクさんを宿屋にでも置いてきてくれるかな?代金は一晩ぐらいは俺が持つからあとは自由にさして、俺達はこのまま公爵邸に向かおうか。」


「よろしいのですか?」

「一応同郷の幼馴染みだからね、最後の情けだよ。」

「わかりました。お前らアベルさまに感謝するんだな。」

リッキーは力任せに二人を連れて行く。


「いたい、いたい、離しなさいよ、まだアベルと話は終わってない!いたい、いたいって!」

「マ、マイン、騎士さま、あまり手荒な事は・・・」

「俺としては斬ってもいいんだぞ?それが嫌なら黙って着いてこい。」


殺意しか向けないリッキーにマインとフランクも黙って着いていった・・・



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