第64話 マイン襲撃?

「マインか?」

「そうよ!私よマインよ、ねぇ兵士さん言った通りアベルの知り合いでしょ!さぁ手枷を外して!」

マインは偉そうに兵士に命令する。


「し、しかし・・・自分の判断では出来ません。」

「何よ、アベルが許可出してくれるんだからいいでしょ!」

「アベルさまが許可してくれるなら・・・」

兵士はアベルの方を見る。


「いや、許可は出さないよ。何をしたかもわからないのに解放はしちゃダメでしょ。」

「何よ、アベル!私が可哀想じゃないの?」


「うん、まったく。むしろ、『ざまぁ♪』って感じかな?」

「なんで、アベルは私の事を好きでしょ!」


「・・・そんな昔もあったかなぁ~でも、残念ながら今は嫌いだから、カインと仲良くしてろよ。ってカインもいるのか?」


「知らないわよ!カインとはノースの町で別れたから。だから、私を養ってよ。」


「なんでそうなるんだ?俺を見捨てたお前を養う訳がないだろ、あっ、ちょうどいいや、フランクさん、見つかりましたよ。さっさと連れて帰ってください。」

俺はマインをフランクさんに押し付けようとする。


「えっ、お父さん?あっ、本当だ。お父さんからもアベルに言ってやってよ!」


「・・・アベルくん、マインを助けてやってくれんか?」

フランクの態度が急に下手に出てくる。


「いきなり『くん』呼びですか、まあ、いいか、そこの兵士さん、コイツの罪状と罰は何?」


「はっ!罪状は公爵邸への侵入です。罰は領都エンからの追放です。」

「・・・それやばいよね?」

「やばいですね。しかも、厳重注意の後の再犯ですから・・・」


何も言えない空気が流れる。

「フランクさん、ダメでした。大人しく罰を受けてください。」

「アベルくん、諦めないでくれるかな!」


「頑張る気になれない相手ですし、公爵邸に侵入なんて考えるだけでも恐ろしい。命があるだけましだと思わないと。」

俺の言葉にフランクさんも思うところがあるのか黙った。


「ねえ、ねえ、にいちゃん。わたしたちはこのあとどこにいくの?」

エリーゼが俺の服の裾を引っ張りながら聞いてくる。

「エリーゼ、このあとは公爵邸に行くからね。」

「わたしもつかまるの?」

「大丈夫だよ、お兄ちゃんがいるから、心配しなくていいよ。」


俺とエリーゼの会話を聞いて、フランクが騒ぎだした。

「アベル!どうとでもなるんじゃないか!」


「そりゃ、家族の面倒はみるに決まってるだろ?でも、マインは赤の他人だし、勝手に入ったらダメなのは子供でもわかるだろう。」

「しかし、お前が口をきけば。」

「なんで口を聞く必要がある、さっさと町から出ていってくれないかな?」

マインとフランクを追い出そうとすると、


エダが、たしなめてくる。

「アベル、そんなことを言わなくてもいいでしょ。フランクさんも来たばかりで何もわからないのにマインちゃんが捕まってて混乱しているのよ。せめて話す時間ぐらいは作ってあげれない?」


「叔母さんに言われたら、しょうがない、あー兵士さん、話を聞いてたと思うけど、一応預かっていいかな?」

「アベルさまが望まれるのなら。」

「ありがと、上司には俺から連絡入れておくよ。」

「はっ!」

兵士は下がっていく。俺は騎士の1人に連絡するよう伝える。


残されたマインは、

「ちょっと、手枷を外しなさいよ!」


「はぁ、幼馴染みのよしみだ、内容次第では外してもらうから取りあえず話を聞かせろ・・・とその前に、叔父さん、子供達を先に公爵邸に連れて行ってもらえるかな?」


「いや、俺達だけで行くにはハードルが高い・・・」

「うーん、それならそこの店に入ろうか、子供達とケーキでも食べててもらえる?」

「ああ・・・」


アダは村にはない見るからに高そうなカフェを見て二の足を踏む。

「代金は俺が払うから、みんな遠慮なく好きなの食べていいよ。でも、公爵家に行ったら美味しいものもあるから、その辺は自分の責任で食べてね。」

「「わーい♪」」

子供達は無邪気に喜んで、中に走っていった。


「アベルいいのかい?結構するんじゃ・・・」

エダは値段を気にしていた。

「稼げているから大丈夫。それより店に入ろう。」

俺は家族とマイン、フランクを連れて店に入った。


店に入ったら、先に行った子供達が固まっていた。

「どうした?」

俺が声をかけると・・・

首をユックリまわして俺を見る。

「ここ何?はしゃげそうにないよ。」

どうやら高級な店の雰囲気に負けたようだった。


「くくく、お前らも緊張するんだな。まあ、気にするな、ちょっとぐらい悪さしてもお兄ちゃんも謝ってやるから大丈夫だ。」

「いらっしゃいませ。何名さまですか?」

店員さんが声をかけてきた。

「10人に護衛を4人で14人です。」

「多いですね。」

「まあ、ちょっとね、対応できる?」

ここで店員が俺に気付く。

「ちょっと難し・・・アベルさま!」


「うん、アベルだけど。」

「対応します!ちょっとお待ちください、店長!アベルさんが来ました。」

店員さんは奥に走っていった。


あわてて店長がやってきた。

「アベルさま、ようこそお越しくださいました。さあ、こちらに。」

店長は席に案内してくれる。

「ありがと、無理言ってわるいね。」


「いえ、アベルさまが来たと聞こえたお客様が皆さん協力してくれまして、すぐに席が作れました。」


「悪いことをしたかな、店長さん、そのお客さんに俺が謝っていたと伝えてください。」

「かしこまりました。」


席に通され、俺は話を始めようとするが、マインもフランクも固まったまま動かない。

「お前ら話があるんじゃないのか?」


「だ、だって、この店人気店だよ、なんで普通に入れるの。」

どうやらマインは知ってる店だったようだ。


「そうなんだ、まったく知らんかった、みんな、有名店だそうだからきっと美味しいぞ。」

「う、うん。」

「お兄ちゃん、値段がないんだけど・・・」

「気にするな。払うのは俺だから。」

しかし、子供達は固まって、注文出来ないでいた。


「店員さん、子供達が好きそうなもの適当に見繕ってもらえますか?どうもこんな雰囲気になれてないみたいで。」

「かしこまりました、所で此方のお子様達はアベルさまの?」

「家族です。弟、妹なんですよ。田舎から出てきたばかりなんです。」

「そうですか、エンの町の良いところをわかってほしいですね。」

「お願いします、美味しいものを食べさしてあげてください。」


子供達はこれでいいとして。

「さて、じゃあ、話をしようか、と言っても話すことなんかないんだが。」

俺はめんどくさいが話を開始する。

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