第63話 家族がエンに着く

「うわぁ~凄い大きい!」

ルルは馬車の窓から身をのりだしエンの町の大きさに驚いていた。

「ルル、子供達が真似するでしょ。止めなさい。」

エダがたしなめるが、

「おねえちゃん、はしゃぎすぎ、みててはずかしい・・・」

一番年少のエリーゼに指摘され、ルルは顔を赤くする。

「ほら、ルル、エリーゼより子供なの?」

「うっ!わかりました!大人しくしてます。」

ルルは椅子に座り大人しくなる。


馬車は町に入ると馬車は足を止めた。

「あのどうかしましたか?っ!アベル!」

エダが聞くと、前にアベルが立っていた。


「えっ!お兄ちゃん!」

ルルが立とうとすると先に子供達が馬車の外に駆け出す。


「「「お兄ちゃん!!」」」

ルークを筆頭にセト、マルカがアベルに抱きつく。

「ルーク、セト大きくなったな、ちゃんとお手伝いしてるか?」

「してるよ!」

「マルカも大きくなったね、それと可愛くなったよ。」

「お兄ちゃん、会いたかったよ!」

三人と再会を喜んでいると1人後ろでモジモジしているエリーゼがいた。

「エリーゼかい?おいで。」

俺が誘うとエリーゼも抱きついてきた。

「にいちゃん、にいちゃん。」


子供達と抱き合っているとルルの姿が見えた。

「ルルも久しぶり、元気にしてたかい?」

「うん、お兄ちゃんも元気?」

「ああ、元気にしてるよ。あれ?ルルは来ないのかい?」

「私はもう大人だからね。」

「そうか、そうだね、ルルも大きくなったな。」

「うん。」


「アベル!連絡もせずに何をしてたんだ。」

アダはきつい口調でアベルを叱る。

「ご、ごめん。冒険者として有名になってからと思っていたんだけど、中々なれなくて。」

「私は有名になんてならなくていい、無事にさえいてくれたらいいんだ。」

アダもアベルを抱き締める。

「おじさん・・・」

俺は涙が出てくる。

「ほら、ルルもアベルに抱きつきなさい、折角の感動の瞬間なんだから。」

「お、お母さん何を言ってるの、こんな通りで抱きつくなんて。」

「あらあら、恥ずかしがっちゃって。年頃かしらね。アベル、元気そうでよかったわ。あなたはすぐに無茶をするから心配で・・・」

「俺はそんなに無茶をしないよ!それより久しぶりです。叔母さんも元気そうでよかったよ。」

「私は元気がとりえだからね。」

和やかに談笑していると・・・


フランクが割って入ってくる。

「アベル!マインはどこだ!」

「フランクさん?マインの事は知りませんよ、シーマの町で別れてから会っていません。」

「なに!うちのマインに何をした!」

「いやいや、何も。というかされた側です。冒険中にキングベアーに襲われた所、見捨てられて逃げられてから会っていません。」

「・・・それは本当の事なのか!うちの娘に限ってそんなことをするはずが無い。お前が話を作って広めているんだろう。」


一方的な決めつけに俺はムッ!とする。

「なら、もっと詳しく話しましょうか?」

「なに?」


「カインとマインは付き合い始めて、所構わず盛ってました。キングベアーに襲われた時、カインとマインが見張り時間だったのですが、それも忘れて盛ってまして。

テントで寝ていた俺にキングベアーが襲ってきて左腕を持っていかれました。

何とかテントを出て応戦していたのですが、奴等は援護してくれる事も、ポーションをくれる事も無く、俺を囮に逃げて行きました。

そして、キングベアーにお持ち帰りされた俺は奴の巣でスキルに目覚め逃げ出す事に成功して、今に至ります。」


フランクは内容を聞いても信じられなかった。

「う、うそだ、マインに限ってそんなことを・・・」

「信じる信じないは自由ですよ、ただシーマの町の冒険者ギルドに確認したらわかる事ですから。」

俺の話を聞いてフランクは固まっていた。


その場にいた、騎士リッキーが聞いてくる。

この騎士はサクソン軍を倒してからというもの、俺を見る目が妙に熱くてちょっと苦手だ。


「アベルさま、そのカインとマインとかいうものを捕えましょうか?アベルさまに危害を加えるなんて許されざる大罪ではないでしょうか?」

「いや、ワザワザ探してまで復讐する気は無いから、俺の見えない所で何をしててもかまわないよ。」

「なんとお優しい、そうですね、アベルさまのお時間を使う方が勿体無い事でございました。」

「いやいや、そんなにたいした事じゃないから。」

リッキーに持ち上げられていると、声をかけられる。


「アベル!助けて!アベル聞こえてるでしょ!私よマインよ!」

その声に振り替えると手枷をはめられ、兵士に連れられたマインがいた・・・


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