第62話 馬車に乗る
「あら、フランクさんどうしました?」
エダがたずねると。
「なんだ、この馬車は!」
「アベルが迎えに寄越してくれたんですよ。ちょっと会ってきますね。」
「そうか、じゃあ、そこにマインもいるんだな!俺も連れて行ってもらおう。」
アダは言いにくそうにフランクに告げる。
「・・・フランク、マインはいませんよ。」
「何でだ一緒にいるに決まってるだろ!」
「アベルの手紙にカインとマインに見殺しにされたから別行動をとると書いてました。ですので一緒にこられても居ないと思いますよ。」
「なっ!うちの娘が仲間を見殺しにする訳がないだろうが!」
フランクはアダに掴みかかろうとするが、騎士が剣を抜き、フランクに突きつける。
「貴様は今何をしようとした?」
フランクは剣を突きつけられ、恐怖に震えながら、
「い、いえ、アダがあまりに失礼な事をいうからつ、つい・・・」
「アダさまはアベルさまの手紙の内容を語っただけであろう、それより貴様の娘がアベルさまを見殺しにしようとしただと?」
騎士から殺気が漏れていた。
「あ、あ、ありえません、マインがそんなことをするなんて・・・」
「これは調査の必要があるみたいだ、場合によっては指名手配にする必要がある。」
「そ、そんな・・・」
「貴様もアダさまに危害を加えようとしたんだ、覚悟はいいな?」
「いえ、覚悟なんて・・・」
フランクは既に恐怖で腰を抜かし地面にへたりこんでいた。
「騎士さま、私はいいのでフランクを許してもらえませんか?」
「アダ・・・」
「よろしいのですか?」
「はい、同じ村の仲間が些細な事で罪に問われるのは・・・」
騎士は剣をしまいながら、
「アダさまに危害を加えるのは些細なことでは無いのですが、まあ、アダさまがおっしゃられるならいいでしょう。貴様よかったなアダさまの寛大さに感謝しておけ。」
「アダ、ありがとう。助かったよ。」
「フランク、よかったな。」
アダも一安心だった。
「そうだ、お前の口からマインの事も誤解だと伝えてくれないか?」
「・・・それは、アベルに会ってみないとわからない。本当に見殺しにされたのか、アベルが恨んでいるのかもわからないのに簡単に答えられないよ。」
アダは複雑な表情を浮かべていた。
「マインがそんなことをする訳がない、聞かなくてもわかるだろう。」
「聞かないとわからないよ、少なくともマインが一緒にいないのは本当だと思う。」
「なぁ、俺も連れて行ってくれよ。」
「でも、いないと思いますよ。」
「俺もアベルから直接聞いてみたいんだ、頼む。」
頭を下げて頼んできたフランクに、アダは娘の行方がわからない親の気持ちに同情し・・・
「・・・わかりました。ただし、アベルが会わないと言ったらそれまでですからね。」
アダは騎士に同行することを伝えて、一緒に行くことになった。
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