第61話 家族を呼びに行く。
「アベルさま、町で何か良いことありました?」
家族に手紙を書いた事が嬉しかったのか知らないうちに浮かれていたようだ。
機嫌が良いのをユミナに気付かれる。
「いや、家族に手紙を書いたんだよ、村を出てきて初めて。」
「アベルさま、何年村を出ているのですか?」
「3年ぐらいかな?」
ユミナはあきれたように、
「もう少し頻繁に手紙を送った方が良いですよ。」
「そうかな?あっ、そうだ俺の家族って言う、アダ、エダ、ルルって人が来たら俺に連絡もらえるかな?」
「良いですよ、その方がご家族ですか?」
「うん、アダが父親でエダが母親、ルルが妹だよ。まあ血は繋がってないんだけど。」
「そうですか、ところでルルという方は何歳なのでしょう?」
「ルル?えーと村を出てきて3年だから・・・15歳かな。」
「そうですか・・・ルルさまとアベルさまは仲がよろしかったのですか?」
「うん、よかったよ。ルルは甘えん坊で村にいる時は何処に行くのも一緒だったかな?」
ユミナは小さい声で呟く。
「そうですか、仲の良い、血の繋がらない妹さまですか。気を付けないと。」
「うん?ユミナどうしたの?」
「なんでもありませんわ。それよりお会いにならないのですか?」
「会うも何も村は遠いからね、簡単に行けないよ。」
俺は村を出る時に決めていた事があった。
それは会うなら有名になってからだと。
家族に恥ずかしくない程になってから会おうと決めていた。
「それならもうお会いになれるのでは?」
不思議そうにユミナが聞いてくる。
「えっ?」
「もう、有名ですよ。救国の英雄さま。」
「もしかして、俺って有名になった?」
「はい。なんなら御呼びになりますか?馬車も手配致しますよ。」
「・・・驚いてくれるかな?」
「それは驚くと思いますよ。」
「よし!呼んでみよう。ユミナ悪いんだけど馬車を用意してくれるかな?」
「はい。準備しますね。村のお名前は?」
「エデの村だよ、シーマの町が近いかな。」
「わかりました。迎えを出しておきます。」
何も考えてないアベルの為、行商人が持ってきた手紙の翌日に公爵家の馬車がエデの村に着く。
随行する騎士はアベルに心酔しているものを選んでいるため、このアベルの家族を迎える任務に当たれる事を皆が誇りに思っていた。
「アベルさまの御実家は何処か?」
騎士の1人が村人に聞く。
「アベル?ああ、孤児院にいた子かね?それならあそこだよ。」
村人がアベルの家を指差した。
「これは忝ない。」
騎士は頭を下げ、アベルの家に向かう。
「アベルさまの御家族の方は御在宅か?」
「はい、どなた・・・」
エデは扉を開けて固まる、そこには鎧を着た騎士がいたからだ。
「あ、あの、どういったご用でしょう?うちの子が何かしたのでしょうか?」
「ああ、これは失礼しました。私はアベルさまの使いのものです。」
「まあ、アベルの?遠いところからご苦労様です。」
騎士は胸を張りながら。
「いえ、そのような事は、アベルさまの為なら艱難辛苦も厭いません。」
「それでも、こんな田舎まで大変だったでしょう、さあ、中にどうぞ。」
エダは居間に案内する。
「小さいところですが、ごゆるりとなさってください。」
「お気になさらず、それよりも本題ですが、アベルさまは御家族の方にお会いしたいようでお迎えにあがりました。」
「あら、でも、うちは孤児院でもあるからすぐにとは・・・」
「孤児院の子供達も御一緒にどうぞ、その為に馬車も三台用意してあります。」
「ちょっと待ってくださいね、あなた、どうしましょう。」
エダはアダに決めてもらおうと話しかける。
「どうせ行くと決めてたんだお言葉に甘えようじゃないか、それに騎士さまと一緒だと道中安全だろうしな。」
「うん、そうね、騎士さま、御迷惑をお掛けしますけどお願いできますか?」
「はい、喜んでお連れいたします。」
翌日、アベルの家族は荷物を纏め、馬車に載せていく。
アベルの所に向かうのはアダとエダ、ルル、
孤児院の子は男の子はルーク12歳、セト8歳、女の子はマルカ10歳、エリーゼ7歳、
合計7名だった。
そこにマインの父親である、フランクがやってきた。
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