第58話 ランスロット帰還

ノースの町から旅立つ前、

ランスロットは1人の男と再会していた。


「おまえ・・・カインか?」

「・・・ランスロットさま。」

「お前どうしたんだ、こんな所で・・・」

ランスロットがカインと再会した場所は路地裏だった。


ランスロットは少しでも戦争を引き起こした償いをしようとの心から、自主的に町中の巡回に参加していた。

そんな中、路地裏に住みついた者がいるとの通報から兵士と共に見にきたら、カインがいたというわけだった。


「俺、何とか生き残れたけど、逃げてしまったし、マインもどっかにいってしまって・・・」

カインは憔悴しきっていた。

「カインすまない!俺が不甲斐ないせいでお前に苦労をかけた。」

「ランスロットさま。」

「お前が良ければ、もう一度俺の側近として、働いてくれないか?」

「よろしいのですか・・・俺は戦場から逃げた男です。」

「ああ、俺だって軍を置いて帰ってしまった人間だ。なんでおまえを責めることが出来よう。」

「ランスロットさま・・・俺を雇ってください。」

「もちろんだ。」

ランスロットはカインと握手を交わし、城に連れて帰る。


「これは支度金だ、これで身支度を整えておいてくれ。近々王都に戻るからそれまでにな。」

「ありがとうございます。」


「それで、何があったか良ければ教えてくれないか?」

「たいした話ではないのですが・・・」

「いや、遠征軍の最後を俺は知る必要がある。教えてくれ。」

「・・・わかりました。ただ自分は一兵士でしたので詳しくはわかりませんが、

俺達はケイ将軍とガレス将軍の指揮の元、少ない食料を食いつなぎ、道中ケモノや食べれる物をとりながら撤退していたのです。ですが、ノースまであと二日というところでサクソン軍の包囲にあい、ガレス将軍、ルーカン将軍が討たれ、最後に少しでも生き残りを増やそうとケイ将軍が囮として突撃し、自分はその隙に森を通りノースまで撤退したのです。」

「そうか・・・」

遠征軍の最後を聞いてランスロットは涙を流していた。


「その後、お前は何故軍に来なかったんだ?」

「それは・・・」

カインは英雄になっているアベルとの確執があり、来れなかったとは言い出せず、

「逃げ出した事を責められるのが辛く・・・」

「そうか、すまん。全ては俺の責任だ、おまえまで罪を背負う必要はない。辛い事を話させて悪かった。しばらくは職務をしなくていいからユックリ休め。」

「ありがとうございます。」

ランスロットは部屋を出ていった。


カインは与えられた部屋でくつろぎながら、今後の事を考える。


『さすがにアベルと顔を合わせるのはまずい。

向こうは絶対に俺を恨んでいるだろう。しかし、俺を拾ってけれたランスロットさまの為に働きたいのも嘘ではない。』


考えた結果、顔を隠す事にした。

任務の時にはフルフェイスの兜を被り、鎧を着れない場ではマスクをつけよう。

そうすれば、近づかなければバレないだろう。

後はランスロットさまに逃亡したことを隠すためにも名前と顔を隠す許可をいただいたら

・・・

カインは別人になり、ランスロットの傍に控える事になる、

ランスロットもカインの心境を組み、ロットという名前を授けた。


アベルの軍は一度エンに寄るみたいだが、ランスロットさまはそのまま王都に向かう事になった。

話に聞くとランスロットさま自身も身の保証はないようだったが・・・

『俺には心配するな、お前の行き先ぐらいは用意してやる』

と優しい言葉をかけてくださった。

王都に着くとランスロットさまは罪人のように捕らわれ、謁見することに。


俺も頼みこみ側近ということで一緒に謁見さしてもらう事になった。

「ロットよ、俺に付き合わなくてもいいのだぞ。」

「ランスロットさま、路地裏で果てるところを拾われたご恩忘れてません。どうせ果てるなら、主君と仰いだランスロットさまと共に。」

「ロット・・・」

ランスロットさまの瞳から涙がでていた。


そこに国王が入ってくる。

「ランスロットよ、此度の一件、申し開きはあるか?」

「父上、私の身勝手な振る舞いにより、国に迷惑をかけた事、深く反省しております。如何なる処罰も受ける次第です。」

「・・・ランスロット、そなたを処刑して見せしめにするべきとの声も多かったが・・・

アベルより助命嘆願が届いておる。自分の全手柄と引き換えに命を助けてくれとの訴えを無下には出来ん。

よって、ランスロットの王位継承権を剥奪、私財の8割の没収と致す。」

ランスロットは深々頭を下げ、

「ありがとうございます。今後は粉骨砕身、国に尽くしたいと思います。」

「うむ、アベルに会ったら良く礼を言うのだぞ。」

「はい、生涯かけて返さねばならぬ恩がアベルさんに出来ました。」

「わかっておるなら良い。あと・・・ランスロットよ、今後は兄弟仲良くするのだぞ。」

「はい・・・不出来な弟で申し訳ないですが、兄上にも謝罪をしようと思います。」


こうして、ランスロットは許され。

継承権のない王子として新たな人生を歩き始める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る