第57話 帰路につく。

「アベル殿、逃げ出して何処にいたのですかな?」


ハインリッヒの笑顔が怖い。

「病院かなぁ~ほら、俺は回復魔法使えるからみんなを治すのに時間を使おうかなぁ~って。」

「アベル殿は今回の功績で領地を与えられる可能性が高い。今の内に学んでおかないと後で苦労するぞ。」

ハインリッヒはタメ息混じりに俺に告げる。


「領地はいらないかなぁ~のんびり王都で過ごすのもいいよね。」

「アベル殿、現実から逃げても何にもならん。さあ、続きを。」

俺はハインリッヒから個人授業をみっちり行われていた。


そして、王都から使者が着き、ジャックに城代を任せる命令書が届いた。


「ジャック、これから頑張れよ。」

「アベルさまのお陰で城代になれました。本当にありがとうございます!」

「ジャックの力だよ、それにこれからが大変なんだよ。防衛に統治もしないといけないんだから。」

「はい!でも、アベルさまのお陰でそれも大丈夫かと。」

「うん?なんで?」

「だって、敵のサクソンは壊滅的ダメージを受けてますし、町の人達もアベルさまへの感謝の気持ちは凄いですよ。そして、アベルさまの副将だった私の立場も実は凄くいいんです♪」

「そうなの?まあ、ジャックの手助けになってるならいいんだけど、

ジャック、短い間だったけど副将として助けてくれてありがとう。」

俺はジャックに手を差し出し握手を交わす。


「アベルさま、今後何か私に出来ることがあればいつでもお声をかけてください。」

「わかった、その時は頼りにさしてもらうよ。」

俺はジャックと別れをし王都への帰路についた。


ノースの町を出て、エンに向かう。

「アベル殿、エンが見えてきたぞ。」

ハインリッヒは自分の領都に戻って来て凄く嬉しそうだった。


「アベルさま!」

城門前に着くとユミナが待っていた。

「ユミナ!」


俺とハインリッヒは馬を降りユミナに向かう。

待ってくれていた事に感動したハインリッヒは足早にユミナに向かうが・・・

見事にスルーされ、ユミナは俺の方に来て抱きついてきた。


「アベルさま!よかったご無事ですね。」

「ただいま、怪我無く帰ってこれたよ。」

「よかったです。」

ユミナは泣いていた。


「ユミナ、お父さんも無事だよ。もう少し感動してくれないかな?」

ハインリッヒも泣いていた。


「お父さんが無事なのは報告を受けてます。」

「それでも、感動の再会とかあるだろ?」

「それはアベルさまにしましたわ。」

「ユミナ~」

ハインリッヒから悲しそうな声がする。


しかし、ユミナはハインリッヒを無視してヨシモリに向かった。


「ヨシモリさま、良く主人と父を無事に連れて帰ってきてくださいました。どれだけ感謝してもたりません。」

ユミナは深々頭を下げる。


「ユミナさま、俺は何もしてません。一重にアベルさまの活躍のお陰です。」

「いえ、報告は受けてます。いち早く町に入り、防衛に努めてくれたのでしょう、貴方じゃなければ出来ない事です、もっと誇ってください。貴方がノースの町を主人が率いた援軍をそして、父を救ってくれたのです。」

「も、もったいなきお言葉・・・」

ヨシモリは涙していた。


「さあ、こんな所で立ち話もどうかと思いますから、中に。既に宴の準備は出来ております。」


エンの町の広場には大きな宴会場が、城内にも盛大な宴の準備が出来ていた。

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