第56話 戦後

俺は敵将フレイを捕虜にして町に戻る。

既にサクソン軍は壊滅しており、あとの殲滅をジャックに任せて、戦っていた者は町に戻っていた。

「フレイ殿、このような結末になるとは悲しいものだ。」

ハインリッヒはフレイに声をかける。

「・・・」

「何故、戦にしたのだ。あの時点で停戦は其方も望む所であっただろう。」

「・・・すいません、我が国は貧しく、此度の戦費を考えると何としてもノースの町を手に入れる必要があったのです。」

「そうか、其処まで追い詰められていたか・・・」

「それでも、アベル将軍がいれば諦めもついていたんです。それが3日も姿を見なかったんです、重傷で動けないか、既に死んでるかのどちらかと考え・・・」

「ワシだけなら落とせたといいたいのだな。」

「・・・はい。」

「ふぅ、此度の件はサクソン国と友好を結ぶのに大きな障害となるであろう。」

「其方からの戦争だったじゃないですか!何故我等に非があるように!」

「停戦条約を直前で破ったんだ、当然であろう。フレイ殿も残り僅かな命、思い残す事がないようにな。牢にいれておけ。くれぐれも丁重にな。」

ハインリッヒはフレイ牢に入れる。

「ハインリッヒさま、大丈夫ですか?かなり憔悴なされてますが。」

「アベル殿、甘いと思われるだろうが私は停戦にしたかったのだよ。そして、フレイ殿を窓口に友好条約を結ぼうと・・・それが全部ダメになった。」

「申し訳ありません。俺が寝ていた為に。」

「いや、アベル殿のせいではない、結局信じれない相手だったと言うことだ。それより軍議をしよう、停戦が流れた以上対応を考えねば。」


俺とハインリッヒ、ランスロットの三人で話し合う。

「さて、どうする?」

ランスロットが話し始める。

「とは言っても兵站を考えると再侵攻は無理だな。」

ハインリッヒが答える。

「となると此処で防衛だけど、誰に任せるかだよね。」

俺はハインリッヒに答える

「俺は無理だな、幕僚もいないし、何より1度王都に戻り罰を受けねば。」

ランスロットも現状を考えると無理であった。

「私も直属の兵を失いすぎた。それに領土に戻り内政をせねば領内が乱れてしまうからな。」

ハインリッヒも無理となると・・・

俺はジャックを推薦してみた。

「それならジャックに任せれませんか?」

「ジャックにか?」

「はい、彼は無難にこなす事が出来ると思います。現在率いている七千をそのまま預け、防衛をしてもらいましょう。サクソンはしばらく攻めてこれないでしょうから、ちょうどいいのでは?」

「ふむ、ならワシが推薦状を送っておこう。」

話しは纏まり、城に帰ってきたジャックに話す。


「私が城代ですか!」

「そうだね、国境の城代だよ、やりがいがあると思うよ。」

「よろしいのですか!アベルさまがつくべきでは?」

「あー俺はいいよ、それにサクソンの人にタップリ怨みを買われただろうし、少し離れた方がいいかなと思うし、オウカの人達を帰したら戦力ないから。」

「アベルさんなら何とかしそうですが、折角の推薦です。是非やらしてください!」

「うん、今ハインリッヒさまが推薦状を王都に送ったから、承認されたら任せるよ。」

「ありがとうございます!」


それから1週間がたった。

その日、俺は城から出て、街の病院に行って治療を行っていた。

怪我の治療をして回る中、1人の老人に出会う。

「これはアベルさま、町を救っていただき感謝します。」

「ありがとう。いや、それはいいんだ。それより爺さん、苦しそうだけど、どこが悪いんだ?」

「わたしですか?私は前から臓腑を腐らせてましてな、いつ迎えが来るか待ってるところなんですじゃ」

「迎えか・・・もっと先にしてしまおう。」

俺は回復魔法をしようする。腐った臓腑、いや、悪くなっている臓腑を回復させるが、治りきらない感じがする。

「これはアーサーさまと同じか?」

俺は神聖魔法の浄化を使う。

すると治りきらなかった箇所が治っていく感覚を得る。

「よし、終わり。爺さん迎えはまだまだ先だから元気に生きろよ。」

俺は爺さんに別れを告げて、次の病人に向かう。それから重症患者全員を治した。

「完了、さてと、次は何をしようかな?」

「アベルさま!『次は何しようかな?』じゃないですよ。政治の勉強から逃げてはいけませんよ。」

俺を探しにジャックが来ていた。

「ゲッ!何で此処が!」

「町の人に聞いたらすぐにわかりましたよ。さあ、ハインリッヒさまが待ってますよ。勉強しましょう。」

「や、やだ、頭が痛くなるんだよ、見逃してくれ。」

「ダメですよ、アベルさまには今後必要になるんですから。」

俺はジャックに引きずられ城に帰った。


そして、町にはアベルの功績が讃えられる。

病気で死にかけていたものたち全てが治され、その日から元気に歩く姿を皆が目撃しており。

アベルの事を聖者さまと呼ぶものが出てきていた。


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