第51話 混乱

翌朝、城は大混乱になっていた。

朝起きて来ないアベルを心配して部屋を見たメイドは驚く。

アベルが床に倒れていたからだ。

急ぎ布団に寝かせ、医者を呼び、ハインリッヒに報告を行った。

「なに!アベル殿が倒れただと!具合はどうなのだ!」

「医者の話だと、疲労で寝ているようだと、少々熱があるので熱冷ましを投与して。回復を待つべきとのことです。」

「うむ、アベル殿に無理をさせていたのだな・・・ゆっくり療養してもらおう。戦の方は今日戦わねばならぬ理由も無いしな。」

ハインリッヒはひとまず落ち着き、関係者に話を伝える。


「アベルさん・・・」

話を聞いたランスロットは悲痛の顔を浮かべる。

「ランスロットさま、いかがなされた?」

「アベルさんが倒れたのは元を正せば私のせいだ、それを思うと・・・」

「ランスロットさま、それを言えば援軍の将に、任じて此処に呼んだのは私でございます。それに疲労してるだけのようですから、ゆっくり休んでもらえばいいでしょう。」

「そうだな。メイド達にしっかり世話をするように伝えておかねばな。」


オウカ国の人間は・・・

「くっ、アベル様に無理をさせてしまっていたか!」

「落ち着けサイゾウ、アベルさまの御希望の城の救済とハインリッヒさまの救出が出来たんだ、きっと気が緩んだだけだ。すぐに治るさ。」

「カケイは楽観的すぎるんだ、それにこの隙に敵がアベルさまの暗殺を仕掛けたらどうするんだ!」

「それなら、サスケとユリが護衛にいった。」

「えっ?」

「サスケは屋根裏に忍び込んでるし、ユリは侍女になって傍に控えているから少々の襲撃は防げるはずだ。」

「アイツらいつの間に。」

「まあ、寝てるだけみたいだから、アベルさまが回復するまで大人しくしてようぜ。」

「そうだな。」

オウカ国の人間は与えられた宿舎でアベルの回復を願っていた。


そして、アベルが倒れた話は町にも広がる。

「アベルさまが倒れられたとか。」

「私達を救うために御無理をなされたのが原因という話ですよ。」

「いや、それより昨日、重傷者を多く治したのが原因じゃないか?あんな奇跡を連発してたら倒れてもおかしくない。」

「そんなに凄いのか?」

「腕や脚が無くなってても元通りになったし、後は死ぬだけの奴も元通りになって生きてるって話だ。」

「本当か!」

「本当だ、しかも、治された奴はただの平民だぞ。貴族さまが俺達平民に身体を壊すまで頑張ってくれるなんて他にいない・・・」

話している男は涙を浮かべていた。

「おい、泣くなよ。」

「すまん、治してもらったのが俺の親友でな、つい感動で・・・まあ、嘘だと思うなら他にも聞いたらいいよ、かなりの数の人が治してもらったらしい。」

「そんなにたくさんいるのかい。」

「アベルさまこそ真の英雄だ!我等を敵の攻撃から助け、命まで救ってくれたんだ・・・なぁ、俺達はどうしたらいいんだろう?何をしたらこの恩を返せるんだ・・・」

こういった話が町中に広がり、城の前には・・・

「アベルさまの容態はどうなんだ?」

「これ近くの山で取ってきた薬草です。これで治りませんか!」

「寄付金を集めてまいりました、どうかこれを治療費にあててくださいませ!」

住人が押し寄せ、門番が慌てていた。

「あー住人のみなさん!アベルさまは多少熱があるようですが疲労で寝ているだけとの事です。大丈夫ですから落ち着いてください。」

門番が必死に説明を行い、混乱を静めようとしていた。


町中が混乱している中、フレイは停戦の使者としてやってきた。

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