第46話 アベル軍、戦闘開始!

俺がノースに着いた時には守備兵が敵に突撃するところだった。

「いかん!皆疲れているところ悪いが友軍を助けに行く!全軍突撃!」

俺を先頭に立ち突撃していく。

「アベルさま!我等も続け!アベルさまを戦わせるな!」

サイゾウはオウカから来た兵を指揮してアベルに続く、

「サイゾウさん!」

「アベルさま、先頭はお止めください!道は我等が切り開きます!セイカイ!イサ!」

「「おうよ!!」」

セイカイとイサは持ち前の怪力を発揮し金棒を振るい敵兵を吹き飛ばして行く。

「お前らばかり働かせねえよ。」

ネズが馬上から矢を放ち、敵の指揮官を射ぬいていく。

指揮官が射ぬかれ、指揮系統が乱れた所に豪傑が突撃してくる。

アベル周囲の敵は軽い混乱がおきていた。


そして、アベルの傍にはサイゾウ達オウカ国の十人が周りを囲み敵兵を近付けることはなかった、それに加え、オウカから来た兵の士気は尋常ではなく、アベルを守る為に凄まじき武勇を発揮していた。

「な、なんだあの戦力は・・・」

副将に任じられていたジャックはアベルがお飾りということを利用して王都から連れてきた五千と徴兵で集まった内の二千の計七千を指揮していた。

彼はこの戦争で手柄を立てて救国の英雄として出世が目的だった。

しかし、このままだと手柄を立てる事が出来ない、慌ててアベルに続き突撃を開始する。これが第2波として効果を発揮し、敵に大打撃をあたえる事になった。


「ハインリッヒさま!お助けに参りました!」

「アベル!」

「遅くなり申し訳ありません!これより敵を撃破致します。」

「アベル、今、城には兵がほとんどいない、いくらか守備に入れてくれ!」

「大丈夫です。既に手はうってます。」

アベルはヨシモリに命じて手勢三千を城に潜入してもらっていた。もし、何かあれば奪取するために、

ヨシモリは裏社会にいた事もあり、ノースの町の潜入方法に詳しかった。

密輸入用の搬入口から城内に潜入。

現在ハインリッヒがいなくなった城をヨシモリが守っている状態になっていた。


「何ですかあの軍は・・・」

サクソン軍指揮官のフレイは突如現れた援軍のあまりの強さに驚きが隠せなかった。

あと一息でこの戦争が終わる所なのに・・・

「フレイ!俺が突撃してくる、いいか!」

「テュール!」

「俺がヘマしたせいでこんな戦況にしてしまった。俺の武勇で取り返してやる。」

「そうですね、あなたならやれるでしょう、オーズ、スルーズ、テュールを援護してください。」

「任せろ!」


ハインリッヒを助けたアベルは再度軍を動かす、そして、それは同じく突撃を開始したテュールと正面からぶつかり合う。


「敵将何処にいる!カケイが相手になってやる!」

「ほう、元気なのがいるな、サクソン軍オーズが相手になってやろう。」

「かかってこい!」

カケイとオーズが一騎討ちを始める。

その横をテュールが駆け抜ける。

「オーズ此処は任したぞ!俺は敵将を討ちにいく!」

「おい、何処に行きやがる、お前はこのアナヤマが相手になるぞ!」

「テュール先に行け!」

スルーズがアナヤマの前に立つ。

「ヌウ!」

アナヤマが振るう槍を受け止め、スルーズと相対する。


そして、テュールはアベルの前に来る。

「お前が大将か?」

「援軍の将は俺だ、お前は?」

「サクソン軍、テュールお前を斬る者だ。」

テュールは矛を構える。

「俺は・・・」

俺が名乗りをあげる前にサイゾウが遮る

「アベルさま、此処は私に。アベルさまが相手になさるような者ではございません。」

「貴様!一騎討ちの邪魔をする気か!」

「一騎討ち?なぜ総大将がする必要があるのです。」

「ならば、貴様を倒して、そいつの首ももらおう!」

テュールが矛をかざしサイゾウに斬りかかるが・・・

サイゾウはクナイを連続3発投げつける。

テュールが弾いた隙にサイゾウは網を投げテュールの動きを封じる。

そして、網が絡み付き動けなくなってるテュールの首に刀を突き刺した。

「がっ、き、きさま・・・とびどうぐにアミとは・・ひきょうだ・ぞ・・」

「あいにく私は武人でないもので卑怯と言われても平気ですね。」

サイゾウはそのまま首をとる。

「敵将テュール討ち取ったりーーー!」

高々と声を張り上げる。


少し離れた場所で声を聞いたオーズは・・・

「何?テュールが!嘘だ!」

ショックが大きかった、テュールの武勇はサクソン軍でもトップクラスだった、その強さを知るオーズとしては信じることが出来なかった。

そして、その意識がそれたのが致命的だった。

「一騎討ちの最中に俺を無視するとはな、冷めるな。」

カケイはアッサリ肩から腰にかけて切り落とした。

「なっ!」

オーズが斬られていることに気付いたのは既に半分ほど斬られた後だった。


残されたスルーズは文句をいう。

「オーズ!くそっ!お前達には一騎討ちの矜持というものが無いのか!」

「なんだそれ?俺達は命のやり取りをしてるんだぞ、隙を見せるのが悪い。」

「マトモにやればオーズがやられるわけが無いのに!」

「無駄だな、遅いか早いかの違いだ。さて、お前もそろそろ死んどけ。」

アナヤマは槍の速度を上げる。

「なっ!なに!は、早い!」

「ほれほれ!」

アナヤマの突きを捌ききれずスルーズの腕に刺さる。

「ぐっ!」

スルーズは腕を刺された事で槍を落とす。

「なんだもう終わりか?じゃあ止めを。」

「ま、待て、もう武器も持てん、後日再戦せん!」

「何を言ってる、一騎討ちじゃないか最後までやるに決まってるだろ!」

「ま、まて!ほ、捕虜になる!なるから命だけは!」

「断る、それに俺にそんな権限は無いしな、さっさと死ね。」

「ま、まて!」

スルーズの首が切り落とされる。


そして、アベルと共にサイゾウ達も集まってきた。

「みんなありがとう。さて、敵本陣も叩こうか!」

「おう!」

俺は敵将を討った勢いのまま、敵本陣に突撃する。


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