第45話 援軍

時間は少しさかのぼる、王都で兵士五千を編成したあと、ローエン領の領都エンに向かい出発した。

「アベル殿、そこまで急がなくても!訓練がまだ!」

ジャックは止めるが・・・

「道中向かいながら行う、それより各町での募兵の時間を多く取りたい。」

アベルの意見にジャックは黙るしかなかった、アベルは子爵であり、公爵家の婿、そして、この場にユミナもいた。

「ユミナ、絶対エンに残るように、いいね!」

「わかってます、アベルさま。でも、エンに着くまでは私がいた方が都合がいいでしょ?」

ユミナがいうとおり、貴族に成り立ての俺の言葉より公爵令嬢たるユミナがいた方が募兵にも説得力がでる。

そして、ローエン領にてユミナは昔から平民にも親しくする姿から絶大な人気があるようだった。


エンに着き、ユミナが演説を行う。

「皆さん、今、我が国、我が領土は危機に瀕しております。父も募兵をしていったと思いますが、今、私も募兵をしなければならないぐらいの状況です。皆さんには苦しい思いをさせてしまってますが、何卒私に力を貸してください。」

壇上で涙ながらに訴える姿は心を打つものがあった。

そして、それは意外な人物を動かす。


エンの町で出兵に応じるものの多くはハインリッヒと共に戦場にいっていた。

だが、ハインリッヒに応じず、無視をしていた男が屋敷を訪ねて来る。

「ユミナさまにお目通りを。」

訪ねて来た男はヨシモリという裏社会の顔役であった。

「なっ!ヨシモリだと!会わせる訳にはいかない!」

門番は拒絶するがヨシモリは帰らない。

再度、面会を要請する。

それを繰り返していると


「通しなさい!」

「ユミナさま!」

入り口の騒動を聞いたユミナは直接門に来ていた。

「今は危急の時です、さあ、ヨシモリさま中にどうぞ。」

ユミナは応接室にヨシモリを通す。

「御用件はなんでしょう?」

「俺が指揮する裏社会の人間三千、ユミナさまに協力したい。報酬は過去の犯罪の帳消しでいい。」

「いいでしょう、私の名で約束致します。ただし、敵前逃亡したものは除かしてもらいますよ。」

「ありがたい、それでいい。」

「それで1つ聞きたいのですが何故私に協力を?」

「ユミナさまは覚えておられんかも知れんが、俺は五年家族をユミナさまに助けていただいた者です。」

「すいません、覚えていないです。」

「いや、ユミナさまからしたら沢山いるなかの1人にしかないのでしょう。ただ助けられた者は生涯覚えているものです。ユミナさまが涙し協力を求めておられるのに無視をするなんて俺にはできません。」

「ありがとうございます。ただ、私は戦場に立つことが出来ません。援軍に向かうのは私の主人になりますがヨシモリさまは私の主人に従えますか?」

「ユミナさまの主人なら問題ありません。」

「ならば、お願い致します。主人をそして、父を助けてください。」

「必ずや。」

思わぬ兵も増え、訓練に明け暮れていると更に千の兵士が集まってくる。それは・・・

「サイゾウ、その人達は?」

「はい、本国より来た援軍です。皆サチさまに恩のある方たちです。」

「そんなに!」

「サチさまはいろんな方を助けておられました。此処にこれたのもは運良く船に乗れたもの達です。」

「じゃあ、オウカ国には?」

「もっと多く集まっていたそうです。」

「・・・でも、助かる。みんな精悍な顔をしてるし頼りにさしてもらうよ。」

「お任せあれ。」


「アベルさま、敵がノースの町に攻撃を始めたとの事です。」

「時間切れだな、全軍に指示を、これよりノースの町を救いに行く。主発準備を急げ!」

「はっ!」

すぐさま軍が準備された。

「いいか、これよりハインリッヒさまをお救いにいく!キツい戦いになると思うが耐えてくれ。」

「おお!」

俺は総勢1万2千の軍を指揮して救援に向かった。

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