第34話 戦争

ランスロットが赴任して2ヶ月がたった。

新兵の訓練も一応終えた時。

「兵を纏めよ!今こそ蛮族どもを根絶やしとしてくれん!」

ランスロットは駐留軍1万に王都から連れてきた5千そして、新たに徴兵した5千、合わせて2万の兵をもち北の王国サクソンに兵を向ける。


ランスロットは王国1の剣士トリスタンを先陣として2千の兵士を預け、名将と名高いケイとガレスを副将として各5千、本陣に8千を配置して進行を開始した。


そして、その知らせは王都にも届く。

「なに!ランスロットがサクソンに進行を開始しただと!」

「はっ!既に戦端は開かれてるものと思われます。」

「何を勝手なことを!」

「陛下如何なさいますか?一度戦端が開かれた以上止めることは難しいかと・・・」

宰相のマリクが思案を質問してくる。

「西と南に急使を送れ、此度の戦に他国が攻めてくるやも知れん。あと!王都の騎士団にも収集をかけろ、もしもに備え、軍を動かせるようにしておけ!」

「はっ!」

マリクは指示を出すため、謁見室を後にする。

「アーサー如何にすれば良いか?」

「ランスロットの武勇があるとはいえ、1万程の駐留軍でサクソン王国を占領するのは難しいでしょう。ここはいつでも停戦出来るように命令を出しやすくする為、権限を持たした者をなるべく近く、出来ればノースの町まで行かすべきかと。」

「うむ、しかし、誰が良い?」

「適任がいなければ私が行きますが。」

「いや、お前はダメだ、お前に何かあれば国が乱れてしまう。ここは別の者が・・・」

「それならローエン公爵は如何でしょう、彼は領土もノースの隣、兵士を集めるのにも都合がいいかと。」

「うむ、そうだな。ハインリッヒに1軍を預け国境の防衛と外交権限を与えよう。誰か、ローエン公爵をこれに!」

ハインリッヒは国王に呼ばれすぐさま登城する。

「陛下、御尊顔を拝し光栄にございます。此度はどのような用件にございましょう。」

国王は事情を説明する。

「なんと、ランスロットさまが・・・」

「うむ、息子の不始末を押し付けるようで悪いがノースの町に行ってもらえぬか?」

「わかりました。御下命拝命致します。つきましては息子ユリウスを王都に残す事を御許しいただきたい。」

「・・・そうか、ハインリッヒよ、そなたはこの戦、厳しいと見るか?」

国王は息子を王都に残して行く意味を察していた。

「ハッ!サクソン王国は近年軍備の近代化に成功したとの報告を受けております。また、地の利も向こうにある以上、制圧するのには時間がかかる上、冬がくれば雪深いかの国、我が軍は撤退も出来ずに全滅の憂き目に合うかと。」

「そうか・・・ならば、ワシの命令を持たせる、そなたの判断で遠征軍を撤退させてもかまわん。」

「はっ!でわ私は直ぐに向かおうと思います。」

「待て、今軍を編成しておる。それと共に行けば・・・」

「いえ、時は一刻を争うやも知れません。直ぐに領地に戻り兵を集めようと思います。陛下、王都の軍が編成すみ次第、私の元に送ってくださいませ。」

「うむ、わかった。ハインリッヒよ。頼んだぞ。」

「はっ!」


屋敷に帰ったハインリッヒは執事に旅支度を準備させ、ユリウス、ユミナ、アベルを部屋に呼ぶ。

「ユリウス、父は直ぐに領地に帰らねばならなくなった。後の事は頼んだぞ。」

「父上いったい何が起きたのですか?」

「聡いお前なら直ぐに知ることになるだろうが、ランスロットさまがサクソン王国に攻めこんだ。」

「なんですと!そんな勝ち目のない戦など・・・」

「うむ、ワシもそう思うが始まった以上どうしようもない、よってワシは王命により国境の防衛と外交権限を預かっておる。すぐさま領地に帰り軍を起こし、防衛に入るつもりだ。」

「父上、私もお供を!」

「ならん!此度は危険すぎる、ユリウスよ、お前は王都に残り、我が跡継ぎとしてワシに何か合った時はローエン公爵家を継ぐがよい。」

「父上!」

ユリウスは涙を浮かべていた。


「お父様、娘の私なら一緒に戻ってもよろしいのでは?領地の皆さんにローエン公爵家が自分の一族だけ、逃がしたと言われるのは心外にございます。」

「ユミナ・・・たしかにそうだが、お前にも王都に残ってもらい、アベル殿と幸せに暮らしてもらいたいのだが。」

「ハインリッヒさま、此度の一件、アーサーさまを治療した、私が深く関わっています。ましてや、お世話になってるローエン家の危機に王都でのんびり過ごすなど出来ません。どうか私もお連れください。」

「アベル殿・・・」

「感謝いたす、だがアベル殿は援軍を率いてくれんか?」

「援軍ですか?」

「今、王都にて軍の編成が行われている。その将には信頼出来るものについてもらいたいのだ。」

「しかし、私は軍属ではありませんが・・・」

「それぐらい、陛下に進言すれば叶うであろう。いいか、私の為について来てくれる覚悟があるならいち早く軍を纏めて、私の元に来てくれ。これは信頼出来るアベル殿にしか頼めぬのだ。」

「わかりました。必ずや軍を纏めてあげハインリッヒさまをお救いに上がります。」

「そうか、それはよかった、これで後顧の憂いがなくなるな!よし、陛下に上申しておく、そうだ肩書きが子爵だけだと弱いな、良しユミナの婿として登録すれば、義息子として兵を率いても大丈夫であろう。アベル殿今後もよろしく頼む!」

ハインリッヒは早口でアベルに告げる。

「えっ?婿?えっ?」

アベルは困惑していたが・・・

「うむ、ユミナもそれでいいな。」

「はい、アベルさまの嫁として嫁いでまいります。」

「よし、結婚の宴は戦の後にするぞ!これでワシも死ねん理由が出来たわ!」

ハインリッヒの覚悟に口を挟むのもはばかられ、俺の結婚は流されて決まっていった・・・



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