第30話 快気祝い
アーサーの快気祝い、その名目で宴は開かれた。
国王の名において開かれた。その宴には国内の貴族のほとんどが集まっていた。
「皆の者、我が子アーサーの為によく集まってくれた。皆のお陰でアーサーの眼は完治いたした。今宵はその祝いである。皆楽しんでいってくれ。」
「ははっ!」
一同平伏す。
「そうだ、皆に紹介したいものがいる、アベルよ此処に参れ。」
俺は国王陛下に呼ばれ前に出て行く。
「このアベルのお陰でアーサーは完治することとなった。よって、ワシはこの感謝の気持ちを込めてアベルを子爵とする。よいな。」
「申し上げます、陛下、子爵とは些か身分が高すぎるのでは?此処は男爵辺りが妥当かと。」
高位貴族の1人、ガラハッド侯爵が意見を述べてくるが。
「これは私の気持ちである、皆も認めてくれんか?」
「陛下の御意志が堅いようですね、それならば臣として申すことはありません。」
「うむ、しかし、彼もいきなり子爵では苦労するであろう、よって、ローエン公爵に後見を頼んである。アベルが何か粗相をしたらローエン公爵に訴えるがよい。」
会場の貴族がハインリッヒを見る。
「私も息子の命をアベル殿に救われた身である、彼をもう1人の義息子として扱うつもりであるから、皆もそのつもりでいてくれ。」
ハインリッヒの宣言に他の貴族はおののく、平民上がりの貴族と侮ると痛い目に合う事が確実だった。
国王陛下とハインリッヒの宣言の後、俺は他の貴族の方がたと挨拶を交わしていく。
そんな中、ダンスが始まったようだ、会場では若い男女が踊り始めていた。
此処にきて俺はやっと休めると壁際に避難していた。
そこに女性が・・・
「あの、アノー男爵家の二女メアリーと申します、よろしければ一曲踊りませんか?」
十代前半ぐらいの女性から踊りに誘われるが・・・
「すいません、踊りは覚えていないもので・・・」
「あら、メアリーさん抜け駆けはいけませんわ、私はフレンチ子爵家の三女、アンと申します、私と先に踊ってもらえませんか?」
急遽、授爵された平民でローエン公爵に息子といわしめた人間に幾つかの家は娘をあてがおうとしていた。
「あら、アンさん、メアリーさん、ご機嫌よう、彼は私とお話がありますのでダンスは別の機会にしてもらえませんか?」
「「ユミナさま!!」」
2人は驚いていたが・・・
「な、なるほど、義息子とはそういうことででしたか、ユミナさま、これは誠に失礼致しました。メアリーさん、いきましょうか。」
アンはすぐにローエン家の思惑に気付き、撤退する。
「アンさま、そんなに引っ張らないでくださいませ。ユミナさま、すいません、失礼します。」
メアリーはアンに引っ張られ離れていった。
「ユミナ助かったよ。」
女性に踊りに誘われ困っていたから、ユミナの登場は非常にありがたかった。
「いえ、それより私からあまり離れないでくださいね。他の貴族の方も狙ってるようですので。」
「それは困るな、踊りなんて出来ないよ、」
「なら、今度練習いたしませんとね。」
「覚えないと駄目なのかな?」
「覚えた方がいいと思いますね。大丈夫ですよ、私が一緒に練習しますから。」
「ありがとう、頼らせてもらうよ。」
俺は壁際でユミナと話していると、
「貴様がアーサー兄上を治療したのか!」
何かキラキラした人に話しかけられた・・・
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