第31話 ランスロット

「あの~どちらさまでしょう?」

「貴様は私を知らないのか!」

「すいません、平民上がりな者で。」

「アベルさま、此方は第2王子のランスロットさまです。」

ユミナが紹介してくれた。

「これは失礼致しました。アベルと申します、以後お見知りおきを。」

「このような無礼者が貴族とは・・・父上も何を考えておられるのだ。」

「ランスロットさま、陛下の御批判は控えた方がよろしいかと。」

俺が指摘すると顔を真っ赤にして怒りだした。

「うるさい!貴様に言われずともわかっておる。」

「おやおや、ランスロット、私の恩人に失礼じゃないか、文句があるなら私に言えばいいだろ。」

アーサーがやって来てランスロットをたしなめる。

「兄上、このたびは快気おめでとうございます・・・」

ランスロットは悔しそうに告げる。

「ランスロット、もう少し表情を隠せるようになりなよ。まあ、直接仕掛けてきたんだ、覚悟しておく事だな。」

「くっ!失礼します。」

ランスロットは離れていく。

「困った弟だよ。」

「アーサーさま、助かりました。」

「いやいや、弟が迷惑かけてすまない、それに私を治療したことで私の派閥と思われてるようだしな。」

「派閥?」

「今、後継者問題で貴族でも2つに別れているのだよ。私か、ランスロットかとね。」

そうなんですか・・・」

「くくく、君は興味がなさそうだ。」

「ええ、よくわからない、が答えですかね?」

「いや、それでいいよ、でも、何かあれば頼ってくれ。できる限りの事はしよう。」

「ありがとうございます。」

「アーサーさま、大丈夫です。ローエン公爵家がちゃんと対処致しますわ。」

「ユミナ嬢、そうだね、君がついていたら大丈夫かな。アベルさんの事をお願いするよ。」

「はい。」

ユミナは笑顔で返事をした。


一方ランスロットは・・・

「クソッ!平民の分際でいらない事をしおって!」

控え室に戻り、苛立ちから家具を破壊していた。

「ランスロット少しは落ち着け。」

ランスロットの教育係でもある、マーリンが声をかける。

「マーリン、しかしだな、兄のケガが治ってしまったぞ。」

「治れば今一度やればよいのです。そんなことより家具を壊して周囲に小さい器と見られる方が問題です。」

「ぐっ!では、どうする?兄の話だと何かしらの罰が出るはずだ、さしずめ、蟄居あたりか?そうなると行動が取れなくなるぞ。」

「たしかに動けなくなるのは些か都合が悪い、なら此方から罰を決めればいいのですよ。」

「罰を決める?」

「軍部に働き掛け、ランスロットには最前線に行ってもらいます。」

「なっ!最前線だと!」

「なに、最前線と言っても相手は弱い蛮族、ランスロットの連れていく兵と駐留軍で征服してしまうのです。そして、その成果を国民に広く流布し、ランスロットには英雄になっていただきます。」

「なるほど、英雄になれば次期国王の座も・・・」

「ええ、蛮族を支配し、国民に支持される英雄。その肩書きがあればアーサーさまから王太子の座を奪うのも夢ではないかと・・・」

「うむ、よい案だ!マーリンに任せる、上手く手配をしてくれ。」

「かしこまりました、私にお任せあれ。」

マーリンはランスロットの前を去っていく。

残されたランスロットは自信の輝く未来の前にアベルの事など忘れ去っていた・・・

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