第29話 ユミナとリリー

公爵邸に着いて、俺が部屋に入ったあと、ユミナとリリーは話を始める。


「この度は雇っていただき感謝いたします。」

「リリーさん、感謝は別にかまいませんよ。私にも思惑がありましたし。」

「思惑?」

「はい、リリーさんにお訊ねしますが、アベルさまの事お好きですよね?」

ユミナの真剣な目にリリーも正直に答える。

「・・・はい。しかし、ユミナさまも?」

「もちろんです、今すぐにでも結ばれたいのですが・・・なにぶん歳が少しばかり足りず。」

ユミナは自分の胸を触りながら、悔しそうな表情を浮かべた。

「それは・・・」

「私の都合で、このままだと若いアベルさまが何処かの貴族のハニートラップに引っ掛かってはならないと思い、リリーさんにはアベルさまの劣情のお相手をお願いしたいのです。」

リリーは顔を赤く染め、

「劣情の相手って・・・」

「お嫌でしたか?」

「そんな、アベルさんなら私の方から・・・あっ!」

「わかってますよ。ワザワザ王都に来るぐらいですからね、」

「でも、ユミナさまはいいのですか?その私がしちゃっても。」

「私が正妻ということを認めていればかまいませんよ、アベルさまも貴族になられたのですから、側室の1人や2人は当たり前です。」

「側室って・・・」

「あら、結婚しないのですか?それなら、愛人という話になりますが?」

「ううん、結婚します!」

「そうですか、それならアベルさまの事をお願いしますね。」

「でも、アベルさんが手を出してくれるかな?」

「貴女が誘惑して、手を出さないなら他の貴族の女に流される事もないでしょう。私としてはそれでもかまいませんから。」

「うー、それは女として悔しいかもです。」

「そうでしょう、なら頑張ってアベルさまを癒してくださいませ。」

「わかりました。」

ユミナとリリーの話し合いの結果、俺の知らない所で協定が結ばれていた。

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