第27話 リリーに会うが・・・

「アベルさん!」

開かれた扉の向こうにはリリーがいた。

「リリーさん!なんで此処が?」

「シンディから連絡を貰いました。」

「・・・シンディさん、いつの間に?」

「最初に見た時に連絡入れて貰ったの。」

「シンディさん、確認もせずに情報を流すのはどうかと?」

「リリーに会うのはいいんでしょ!」

「そうですが、この流れだと・・・」

「アベル、探したぞ!」

当然オズマも来ていた。


「オズマ・・・」

俺はいつでも神速が発動出来るようにする。

「オズマさん!何を威圧しているのですか!謝罪に来たんでしょ!」

リリーはオズマの前に立ち、威圧してくるオズマを叱る。

「リリーちゃん、しかし、こいつは隙を見て逃げ出そうとしてるぞ。」

「えっ!」

「さすが剣聖ですね、それで、どうしますか?此処でやりあいます?」

俺も腰の剣に手を伸ばす。

「ま、待ってください!商業ギルドでの争いは厳禁ですよ!」

「シンディさん、客の情報を勝手に流すのは禁止じゃないんですか?」

「それは・・・」

「おかげでこちらは命のやり取りになりそうですよ!」

オズマは既に剣に手をかけている。

片手とはいえ、剣聖とまで呼ばれた漢、何処まで通じるか・・・

「やめなさい!!」

そこにユミナの声が響き渡る!

「そこの剣士、誰かは知りませんがアベル子爵に手を出すというのなら、ローエン公爵とやりあうつもりでいなさい!」

ユミナは兵士を連れアベルの救援に来ていた。

「ユミナ!」

「アベルさま、どうぞ此方へ!」

盾を持ち隙間なく防御する。兵士に囲まれ、俺は商談室を出る。


「ユミナ助かったよ。」

「アベルさま、御無事で何よりです。」

ユミナは見せつけるように抱きついてくる。

「ああ・・・」

リリーから声にならない声が出る。

「シンディさん、この件は問題にさせてもらいますよ!」

俺はシンディに告げる。

「そ、それは・・・」


「な、何事だ!」

奥から商業ギルド長、ゼニーが走ってきた。

「ギルド長!」

「シンディくん、説明をしてくれるかい?」

「そ、それは・・・」


「あなたがギルド長ですか?」

ユミナが問いかける。

「お嬢さんは?」

「ユミナ・フォン・ローエン。ローエン公爵家の長女にございます。」

「ローエン公爵家!こ、これは失礼致しました、この度はどのような用件でございましょう?」

「私はアベルさまを守りにきただけです。しかし、商業ギルドは情報を他所に漏らすのでしょうか?」

「そのような事はございません。商売は秘匿性が大事な事もあります。ギルドで知った事は親兄弟でも漏らすことは禁じております。」

「おかしいですね、そこの女性はアベルさまが来訪したことを其処の二人に伝えておりますが?」

「なに!」

「そもそも、アベルさまが此処に訪れた事も話してますよね。ギルドの情報管理はどうなっているのですか!」

「シンディくん、どういう事だね?」

「え、えーと、それは・・・」

シンディはしどろもどろになっていた。

「すいません、私が教えてもらったんです。私がアベルさんを探してて、シンディは私に協力してくれただけなんです。」

リリーは頭を下げ、シンディを庇おうとするが。

「君は?」

「シーマの町の冒険者ギルド受付のリリーと申します。」

「シーマの町からですか、しかし、情報を漏らしたのはシンディですからあなたの頼みだからとかは関係ありません。シンディ、あなたには罰をおってもらいます。ユミナさまどうかこれでおさめてもらえませんか?」

「罰の内容も言わずにおさめろと?ローエン公爵を侮辱しているのですか?」

「それは・・・必ず結果をお伝えしますので。」

「そうですか、では、個人情報漏洩、ギルドを使用しての私信の送信、剣聖をよびアベル子爵の暗殺未遂、この件についての回答をお待ちしております。結果次第ではギルドを訴える事も致しますから。覚悟してください。」

「それは・・・」

ゼニーは言葉に詰まる、これだけの罪状ならシンディのギルド追放だけではすまない、良くて奴隷落ち、悪くて死罪だった。

そして、ゼニー自身も監督責任で降格・・・

せっかく上り詰めた地位を失う事を感じた。

そして、当事者のシンディは顔を青くしており、両目から涙がポロポロこぼれ落ちていた。


「ユミナ、そこまでしなくていいから。」

俺はユミナを止めに入る。

「でも、アベルさま!」

「いいから、リリーさんには世話になったし、問題を大きくしたくないんだ。」

「アベルさまがそう言うなら・・・」

「ユミナ、ありがと。俺の為に怒ってくれてたんだろ?でも、ユミナには笑顔が似合うから、笑っててほしいな。」

「アベルさま・・・」

ユミナはポーとしてアベルを見つめる。


「さて、俺としてはオズマが来た事以外は許せるのですが、その辺を考えると罪はどうなりますか?」

「・・・子爵の暗殺未遂に荷担しただけでも非情に重い罪となります。」

「なら、貴族じゃなければ?」

「えっ?」

「国王陛下には任命されましたが、まだ御披露目もすんでない状態です。名乗っても問題ないのでしょうが、御披露目まで名乗らないと言うことも出来るのではないでしょうか?」

「それは・・・」

「アベルさま、少々詭弁になるかと思うのですが・・・」

「ユミナは反対かい?」

「私は・・・アベルさまの考えに従いますわ。」

「ありがと。どうでしょう?貴族の暗殺未遂がなくなれば少しは軽くなるのでは?」

「そうですが、いいのですか?」

ゼニーは再度確認する。

「ええ、かまいませんよ。」

「では、シンディの罪状はギルドの情報漏洩と私信に使用した事で減給1年でどうでしょう?」

「まあ、俺はいいですよ。シンディさんは?」

「・・・いいんですか?」

シンディは絶望していたところから救いの光を見た。

「ええ。」

「あ、ありがとうございます。」

シンディは安堵から号泣した。


「さて、シンディさんは片付いたから、次は・・・」

俺はオズマを見る。

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