第26話 シンディ、リリーの為に!

「その人なら昨日大聖堂で見かけたよ、公爵家のユミナ御嬢様と一緒に。」

「おいおい、情報が遅いな、国王陛下から子爵に任じられたらしいぞ。」

「本当か、それってユミナ様と結婚の準備じゃねぇか?」

「あーその人、公爵家の嫡男ユリウス様の命の恩人らしいぞ、崖から落ちてた所を助けたって聞いたぞ。」

「俺は公爵家内の反乱を静めたとか聞いたが?」

シンディが名前と容姿を伝えると情報が次々と集まってきた。


シンディは集まった情報をリリーに伝える。

「えっ、それって本当なの?」

「噂の状態だよ、でも、どうなんだろ?」

「それでアベルさんは今何処に?」

「宿に泊まっているところを兵士に連れて行かれたという情報も合ったから公爵家にいるのかも?」

「・・・どうにか会える方法ってないかな?」

「リリー、行くの?アベルさんはユミナ様といい関係という話もあるよ?」

「それでも!私はアベルさんに会いたいの!」

「・・・わかった、商業ギルド経由でアベルさんに手紙を出してみる。」

「お願いシンディ!」

「でも、会ってくれるかはわからないよ。」

「うん、それでも、わたし!」

リリーは涙を浮かべてシンディにすがる。

「泣かないで、私が何とかしてみるから。」

シンディはギルド経由で公爵家にアベル宛の手紙を出した。


「商業ギルドから手紙?なんだろう?」

俺は自分宛に届いた手紙を受け取りクビを傾げる。

ここでお世話になってることは知らない筈なのだが・・・

手紙を読み驚く、

「リリーさんが王都に来てる?俺に会いに?何があったんだろう?」

俺は手紙を受け取った翌日、商業ギルドを訪れていた。

受付にいたシンディさんに話しかける。

「シンディさん、手紙を受け取りましたが、リリーさんがこちらに来ているのですか?」

「アベルさん!少々お待ちください、別室でお話しましょう。」

シンディは席を外す為、他の人に代わりを依頼し、俺を連れて商談室に向かう。


「アベルさん、リリーの友人と言うことに間違いはないですか?」

「シンディさんとの繋がりはわかりませんがシーマの町の冒険者ギルドのリリーさんは友人ですよ。」

「ええ、それなら同じ人ですね。私はリリーの幼馴染みなんですよ。この前たまたま王都でリリーに会いまして、アベルさんを探していると聞きましたから。」

「リリーさん、よくわかりましたね。行き先は言わずに出てきた筈なのですが。」

「調べたみたいですよ。それより、なんで行き先を言わずに出ていったんですか!」

「それは・・・俺は欠損の治療が出来るのですが・・・」

俺はオズマの話をシンディに説明する。

「なるほど、リリーの親でもあるマッドさんもオズマさんの味方だから、逃げてきたと。」

「まお、そんなとこですね。いざ、襲われたら勝てるかわかりませんし。」

「私も見ましたけど、理性的な方と見受けましたが?」

「少なくとも治療の依頼に来ていた時は理性的ではなかったですね。」

「そうですか、でも、リリーには会っていただけますか?」

「もちろんかまいませんよ、しかし、オズマには会いたくないですね。」

「彼も反省しているようですが?」

「どうだか?少なくとも治すメリットが俺にないですよね。」

「剣聖と呼ばれた彼が味方になってくれるとしてもですか?」

「保証はないですよね?そもそも傲慢な方が一度拗れた相手に好意をもちますか?」

「難しいところですね。1度話してみるのは?」

「遠慮したいところです。」

シンディが説得に入るもオズマに会うことは拒絶していたが・・・


その時、商談室の扉が開かれる。

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