第25話 リリー

「アベル殿、よくやってくれた。ワシからも感謝する。」

屋敷に帰ったあと、ハインリッヒからも謝礼を言われる。

「あ、ありがとうございます。」

「しかし、子爵になるとは思わなかったな。」

「いいのでしょうか、俺みたいな平民がいきなり子爵になるなんて。」

「まあ、周りに嫉妬はされるだろうが、その時は私の名前を出すがいい。陛下も言っておられたがアベル殿は当家の庇護下の貴族になる。」

「その時はお願いします。」

俺は頭を下げる。

「かまわんよ、これぐらい。ワシの頼みを聞いてくれた結果なのだから。」

そこにユリウスがやってきた。

「アベルさん子爵就任おめでとうございます。」

「ユリウスさま、ありがとうございます。」

「こんな短期間に子爵になるなんて驚きを隠せませんね。」

「自分も何がなんだか、困惑しているところです。」

「アベルさんは屋敷はどうしますか?」

「屋敷?」

「爵位を得られたのですから王都に家を持つのでは?」

「全く考えてませんでした。どうしましょう。」

「このまま当家に滞在してくれてもよろしいですが、アベルさんの望むようにしたらいいですよ。」

「しばらくは滞在さしてもらっていいですか?屋敷を持つにも先立つ物が無いもので。」

「急な話ですからね、アベルさんがよろしければいつまででもいてくださっていいですよ。」

「御言葉に甘えさしてもらいます。」

どうやら家なき子にはならずに済んだようだ。

俺の公爵家に滞在が決まった。


その頃、町では・・・

「いいですか、オズマさん!アベルさんに会ったらまず謝罪をしてください。」

「わかってる、リリーちゃんも仲介を頼むよ。」

リリーはアベルからの別れの手紙を受け取ったあと、マッドに事情を問いただし、必死の調査の末、王都に来ていることを掴んでいた。

それから、オズマを護衛として雇い、王都にやってきた。


「あれ、リリーじゃない?王都に来てるなんて珍しいじゃない?」

町を歩き冒険者ギルドを目指しているとリリーは幼い頃の友人シンディに会った。

「えっ?シンディ?嘘ここで会えるなんて凄い偶然だね!」

「ほんとだよ、来るなら連絡ちょうだい。」

「ごめんね、急にきたから。」

「もう、仕方ないか~どう、お茶でも奢るわよ。」

「うーん、そうだね。お茶しよ、ちょっと聞きたい事もあるし。」

「なんでも、聞いてよ。それに私も良いこと合ったから人に話したかったんだぁ♪」

「えーなんだろ?彼氏でも出来たの?」

「ふふん、お茶しながら話すね。」

シンディとリリー、そして、オズマは喫茶店に入り、お茶とする。

「ところでリリー其方の方は?リリーの彼氏かな?」

「違います、父の友人で護衛をしてもらってるの。」

「へぇーダンディな方だよね。」

「そうかな?」

「リリー、眼が悪いんじゃない?まあ、はじめましてシンディと言います、見ての通りリリーの幼馴染みです。」

「オズマだ。」

「やーん、声も渋いじゃない!リリーの彼氏じゃないなら私が狙ってもいいかな?」

「それはいいけど、話さしてもらっていいかな?」

「もう、ノリ悪いなぁ、それで何?」

「うん、冒険者で最近、都に来た、アベルって人を探しているの。噂でも良いから情報ないかな?」

「アベルさん?それなら・・・」

「シンディ!知ってるの!」

リリーは立ち上がりシンディに詰め寄る。

「リリー落ち着いてよ、何処にいるかは知らないの。」

「・・・なんだ・・・それで何を知ってるの?」

「数日前に貴重な薬草を沢山持ってきてくれたのよ。」

「そうなの?」

「うん、お陰で商業ギルドから私は褒賞金が沢山出て、ウハウハ状態なんだけどね。」

「そんなに貴重だったの?」

「ギルドの売上が約金貨500枚だって、それで私に褒賞金として金貨5枚がきたの♪」

「そんなに貰ったの?」

「うん♪また来るって言ってたから来たらリリーに連絡するね。」

「お願い!」

「うん、でも、アベルさんとリリーってどんな関係なの?」

「それは・・・私の好きな人なの・・・」

リリーは赤くなりながら小さい声でいう。

「あらあら、じゃあ何で王都に来てるの?」

「それはね、そこのオズマさんのせいなの!」

怒りのこもった視線をオズマに向ける。

「リリーちゃん、悪かったって。勘弁してくれよ。」

「リリー落ち着いて、リリーが嫌われてないなら私も協力するから。」

「お願い、王都に情報網ないから・・・」

「任せて、町の人にも知り合い多いから、聞いてみるよ。」

シンディはリリーと話し終わったあと、町に向かう。

そして、驚愕の話を聞く事となる。

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