第23話 お城に向かう
「アベルさま、どうなさりました?」
俺がスキル習得に呆けているとユミナが心配して聞いてくる。
「あー大丈夫、この荘厳な雰囲気に呑まれていたよ。」
「そうでしょう、ここにはかつて聖人と呼ばれた方を奉ってあるのです。教会に携わる人はいつかここに奉られる事を夢見て日々精進しているのですよ。」
・・・俺は冷や汗が止まらない、其処の聖人さんの魂を吸収したとはさすがに言えない。
「アベルさま、酷い汗ですよ。ダワ枢機卿、アベルさまの体調が優れないようなので本日はこれで失礼さしてもらいますね。」
「はい、御体にお気をつけて。また、いつでもお越しくださいませ。」
俺はユミナに連れられ大聖堂を後にした。
外に出た時には何処から用意したのか公爵家の馬車が既に待機しており、俺達は馬車に乗り屋敷に戻る。
屋敷につく頃には、自分の中で罪悪感に区切りをつけ、冷静になっていた。
屋敷に着くと、ハインリッヒが待っており、
「アベル殿!至急お願いしたい事が!」
「お父様!アベルさまは体調が宜しくないのです!後日にしてください。」
「ユミナ、もう大丈夫だから、それよりハインリッヒ様、どのような御用件でしょうか?」
「う、うむ、実はアベル殿が身体の欠損を治せる事を王に報告したのだが、王が王太子の治療を願いたいとのことなのじゃ。」
「王太子様はどこかお悪いのですか?」
「ここだけの話じゃが、眼がほとんど見えないそうだ。」
「それは・・・産まれた時からですか?」
「いや、先日、第2王子と剣の訓練中に眼に異物が入ってから、悪くなっていってるようなんだ。」
「それって、第2王子の・・・?」
「うむ、王も気付いておるがもし王太子の眼が見えなくなれば、第2王子が跡を継ぐしかないから、罰する事も出来ないようだ。」
「わかりました。すぐに治療しますが、治せるかはわかりませんよ。」
「わかっておる、王にも説明はした。それでも頼むと言うことなんだ。私と共に城に来てくれないか?」
「わかりました。しかし、城に行く服は無いですがいいのでしょうか?」
「それぐらい、すぐに用意致す。準備が出来たら向かうぞ!」
俺はハインリッヒ様に連れられ、ユミナと共に城に向かった。
「ユミナも城に行くの?」
「アベルさまが行くのなら私も行きますわ。それに私が横にいればアベルさまに嫌がらせする貴族もいないでしょう。」
「・・・ユミナ、頼りにしてるよ。平民の俺じゃ話しただけで不敬罪になりそうだ。」
「ええ、私に任してください。」
城に着き、城に入ろうとすると入口で俺が止められる。
ハインリッヒとユミナは別の入口から入れるが平民の俺は別の入口から入らなければいけなかった。
「貴殿の身分を示してください。」
「平民の冒険者です。」
「城に来る許可証は?」
「持ってません。」
「なら通す訳には行きません。」
「ローエン公爵さまに連れられて来てますので確認をしてもらえませんか?」
「嘘をいうな!なんで平民のお前をローエン公爵が連れて来るんだ!」
「しかし、入れないと困ることに!」
「怪しい奴だな、お前は別に取締りが必要な用だ、目的を吐かしてやるから覚悟しろよ。」
「いやいや、取次ぐらいしてくれよ。」
「ふん、確認の必要もないわ!このラハ男爵が取り調べて・・・」
「お待ちなさい!アベルさまに何をする気ですか!」
「あ、あなたはユミナ嬢!」
ラハ男爵は頭を下げる。
しかし、ユミナはラハを無視して、
「アベルさま、お怪我はございませんか?」
「ユミナのお陰で助かったよ。もうちょっと遅かったらケガしてたかも。」
「ラハ男爵、私の父ハインリッヒが連れてきた客に何の文句があるのですか!」
「い、いえ、ローエン公爵に文句などございません。」
「なら、通ってかまいませんね。」
「はい!」
ラハ男爵は背筋を伸ばし最敬礼を行う。
「何をあなたの勤務態度は報告しておきます。覚悟しておきなさい!」
ユミナは怒りながら、ラハ男爵に告げ、その場を離れた。
「ユミナ、助かったよ。」
「アベルさま、申し訳ありません。城にそのまま入れないとは思わなかったので。」
「まあ、平民と違うのは仕方ないかな。」
「お父様共々謝罪さしてもらいます。」
「いや、いいよ、ユミナのお陰で助かったし、それより早く行こうか。」
「はい、これより私が案内しますね。」
俺はユミナに連れられ王の私室に向かうが、ユミナの姿を見て、俺にちょっかいかける奴はいなかった。
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