第14話 公爵家
俺は崖を登るの諦め、崖下に広がる森を抜ける事にする。
「しかし、この辺はかなり手付かずだな、おっ、変わった草発見♪鑑定、鑑定♪これはハオマ?効果は栄養満点、治癒の促進か。これは採取しとかないと。」
俺は探知と鑑定を使いながら森を移動するが、ここはあまり冒険者が来ないのか、貴重な薬草が多数あり、俺は採取にいそしむ。
「しかし。魔物もいないな?なんでだろ?」
かなりの時間を探索しているが魔物の姿を見る事はなかった。
そして、日が暮れるまで探索にあけくれ、森の中で夜営することになった。
俺は周囲に罠を張り、警戒網を作ると火を起こし、食事をとった後厚手のマントにくるまり、眠りにつく。
それから3日間、森を探索し、4日目になってやっと森を出たのであった。
アベルが森で採取に励んでいた時、王都に戻ったマルクスは責められていた。
「マルクス、お前の忠義はわかった。しかし、ユリウスの話を聞かないのはどうなんだ?」
「も、申し訳ございません。」
王都の屋敷に戻り、医者を呼び寄せ、ケガを確認すると既にケガはなく、ユリウスは父ハインリッヒに報告、ケガを治してくれた命の恩人を崖下に放置して戻って来たのが発覚した。
「ユリウスの話によると、ユリウスは片足をなくす程の大ケガだったそうだ、それをここまで治してくれた御方だぞ、しかも、ユミナも意識がなく危険な状態だったと聞く。それをお前は・・・」
ハインリッヒは激怒していた。
貴族には珍しく恩義を大事にする性格なうえ、貴賤に問わず才能で人を判断する所があった。
その彼が、片足を無くしても回復させる事が出来る名医と縁が切れかねない行為をした騎士マルクスに怒りを覚えても仕方ない所があった。
「申し訳ありません、直ちに捜索隊を編成して、救助に向かいます。」
「必ず見つけて謝罪してこい!いいか、その後は丁重にお連れするんだぞ、かの御方の機嫌次第でそなたの罰を決めるとする。いいな!」
「はっ!」
マルクスは慌てて捜索隊を編成していた。
「ふぅ、ユリウス、よく覚えておきなさい、身分で判断するといずれ足元をすくわれる事になる、我等が栄えていられるのも全ての人が我等を支えてくれているからだと肝に命じておきなさい。」
「はい、父上。私もそう思います。しかし、あの御方に不義理な真似をしてしまいました。私もいかに謝罪すべきか考えておきます。」
「うむ、仕方なかったとはいえ、家名を名乗った以上、我が家名に恥じぬ行動をとるように。」
「はい。」
そこにユミナが入ってくる。
「お父様、お話は終わりましたか?」
「おお、ユミナ、ケガの具合はどうだ?」
「はい、全く問題ありません、それより、侍女に確認した所、幼き時から合った小さな傷跡も消えておりました。」
「何?そうなのか?」
「はい、人に見られるような所ではないのですが、少し気になっていたのですが。」
「ユミナは何処をケガしているか、わからなかったからね、かの御方が全身くまなく回復してくれていたから、その効果じゃないかな?」
「そうなのですね、私もお会いし、お礼をのべなくては。」
「そうだね、見つかり次第二人でお礼を言おう。」
「まてまて、父親のワシもお礼を言うべきであろう。」
「そうでした、でも、公爵たる父上が出るとかの御方に迷惑がかかるのでは?ここは私が。」
「それなら嫡男が出ただけでも、同じであろう。」
「あらあら、それなら私だけが御挨拶しますね。」
「「だめだ!みんなでするぞ。」」
親子3人、アベルの発見を心待ちにしていた。
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