第13話 トラブル
馬車が走り出し、早くも5日、今走っている山を越えれば王都に着く。
「大変だ!馬車が落ちてるぞ!」
前を走っていた馬車が足を止め、下を覗き込んでいる。
俺が乗る馬車も足を止め、救助出来ないか検討している。
そして、俺も馬車を降りて下を覗くと高価そうな馬車が落ちていた。
「どうする、見なかった事にするか?」
「いや、ヤバイだろ?あの馬車絶対貴族だろ?」
「放置したら俺達もヤバくないか?」
そんな会話が聞こえてくる。
見る限り、落ちている高さは10メートルぐらい。
生き残りがいるかもわからない。
だが、崖を降りれる人がいないのか、崖の上から見るだけだった。
俺は勇気を振り絞って崖を降りていく。
「君、危ないぞ!」
「大丈夫、それよりロープを用意しておいてください。生存者がいたら引き上げに協力を。」
「わかった!君も気をつけて!」
俺は気を付けながら、崖を降りる。
そこには大破した馬車と死んだ馬、そして、従者がいた。
「これは酷いな・・・」
俺は壊れてる馬車の扉を開ける。
そこには、12歳ぐらいの少年と10歳ぐらいの少女の二人がいた。
少年は足が潰れており、出血がひどい。
少女は見た目は外傷がないが口から血を吐いた痕があり、内臓が傷付いている可能性があった。
「おい、大丈夫か?」
俺は二人に声をかけると、少年が、
「あ、あなたは・・・?」
「助けに降りてきたんだが、大丈夫じゃないな?」
「え、え、せめて、妹だけでも助けてく、れ、ませんか?」
声も絶え絶えに俺に訴えてくる。
「ダメだ、二人とも助けてやる、少し我慢してろよ。」
俺は左手を少年の潰れた足に、右手を少女の体に当てる。
そして、回復魔法を使う。
手が熱くなるが、1人に使うより明らかに俺への負荷が強かった。
「くっ!こりゃきついな。」
「ああ、何ですかこれは・・・気持ちいいです。」
少年の顔色が良くなっていく。
完治とはいかないが、だいたい治ったところで、
「すまない、君の方はだいたい終わった、ここからは少女の方を優先さしてもらう。」
「お願いします、妹をユミナをどうかお助けください。」
「力は尽くすよ。」
しかし、見た目でどこが怪我しているのはわからないユミナの治療は困難を極めた。
手を全身に這わせ、全てを癒していく。
回復魔法を使い続けて2時間、だいぶ疲労が出てきて、頭もクラクラしてきた。
そんな中、スキルから声が聞こえてくる。
魔力が枯渇します。
魂を使い、回復しますか?
これは・・・YES!
魂を使用しました。
残り魂47
保管期間残り2日
すると頭もスッキリして楽になった。
これなら!
俺は回復魔法の出力をあげ、体の奥底まで届くように魔法を浸透させる。
すると胸の辺りに手を這わせた時に意識に反応があった。
「ぅ、うん。」
「よし、ここか!」
俺は胸に手を当て深く回復魔法を送り込む。
すると、治癒出来ている感覚がわかった。
そこから重点的に治療した。
ユミナの治療を終え、少年の治療の続きをしようとする。
「さて、君も最後まで治しておこうか。」
「ユリウスさま!ご無事ですか!」
崖の上から声がする。
「マルクス、ここだ!ここにいるぞ!」
「ユリウスさま!今引き上げます!」
ロープが降りてくる。
「君はユリウスって言うんだね。」
「これは失礼いたしました。私はローエン公爵家、嫡男ユリウス・フォン・ローエンです。」
俺は慌てて頭を下げる。
「こちらこそ失礼を!数々の御無礼御許しください。」
「そんな、顔を上げてください。あなたは私と妹の命の恩人です。御名前をうかがっても?」
「そんな、私のような平民にそのような御言葉をかけていただけるだけで、光栄にございます。」
俺が頭を下げている間に
「ユリウスさま!さあ、こちらに。」
騎士が籠と共に降りてくる。
「マルクス、ユミナを先に頼む!」
騎士は俺の方を見ると汚い物を見るような目をした後、
「はっ!しかし、その後すぐに引き上げますぞ!」
「頼む。」
その後、騎士達にユリウスも引き上げられたが、ロープが投げられる事はなかった。
「ひどいはなしだ、まあ、あのマルクスとか言う騎士の仕業だろうな。騎士さまの思惑はどうでもいいとして、これからどうするかな?」
俺は崖を登らず、王都に行く手段を考える。
その頃、崖の上では
「マルクス、早く救助をださないか!」
「ユリウスさまの御身の方が大事にございます。見たところかなりのお怪我をなされているとお見受けいたします。」
ユリウスの服はかなり血で汚れていた。
「ケガは治っている、それより早く命の恩人を助けろ!」
「ユリウスさま!平民を気にするお心は素晴らしいですが、御身の為にも早く王都にお戻りを!皆、ユリウスさまを馬車へ!お乗り次第王都に出発する!」
「マルクス!話を聞け!」
ユリウスは騎士に馬車に押し込められ、その場を後にする。
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