第6話 リリーの家

「ごちそうさま。リリーさん凄く美味しかったよ。」

「満足いただけて何よりです。」

「ありがとう、俺の帰還を祝ってくれて。」

「どういたしまして、私こそ無事で帰ってきてくれてありがとう。」

「俺さ・・・仲間に捨てられた直後だからさ、こうやって祝ってくれてホントに嬉しいよ。」

「アベルさんを捨てるなんて許せません。」

「はは、そう言ってくれるのはリリーさんだけだよ。」

「ふふ、アベルさんの良さは私が1番知ってるのです。・・・ねえ、アベルさんまだ冒険者続けるの?」

「そりゃね、それで稼いでいるし。」

「ギルド職員の話受けてみない?」

「引退したら考えるけど、俺はまだ若いし。」

「でも!私はアベルさんに危険な事をして欲しくないの!ねぇどうしたらいいの?」

リリーは泣きながら、俺に抱きついてくる。

「まあ、落ち着いて、リリー、俺はさ、元々孤児なんだ。」

リリーは俺に抱きついたまま、見上げてくる。

「拾ってくれた教会でも上手く馴染めなくて、カインとマインだけが友達だった。そんな時、旅の吟遊詩人の歌を聞いたんだ、それは1人の冒険者の物語さ。

子供心に冒険者になって有名になれば、親が家族が見つかるんじゃないかと、まあ単純だったんだろうな・・・

それでも、カインに冒険者に誘われた時は迷うことなく飛び付いた。俺の原動力はきっとそれなんだと思う。

そして、俺はまだ有名にもなっていない。

カインやマインはいなくなったが、俺の夢はまだ無くなってないんだ、だから、俺はまだ冒険者を止めたくない・・・

まあ、恥ずかしい話だ、なんて事はない、子供のまま変わってないだけなんだ。

リリーも忘れてくれていいから。」

リリーを熱のこもった瞳で俺を見つめてくる。

「アベルさん、私が家族になるんじゃダメですか?産みの親にはなれませんが、人生の伴侶になって一緒に歩む事は出来ますよ。」

リリーはギュッと抱き締めてくる。

「アベルさん・・・わたし・・・」

「リリーさん、ダメだよ、そんな瞳でみつめられると・・・」

2人のくちびるが重なる瞬間・・・

「帰ったぞ!アベルはいるか?オーイ」

ギルドマスターの声が響く。

あわてて2人は距離をとる。

「なんだ、いるじゃねぇか。返事ぐらいしろよ。」

「お父さんのバカ!!なんで帰ってくるのよ!」

「ちょい、待てよ!なんで怒ってるんだよ!」

リリーはその辺の物をギルマスに投げつける。

「リリー?お父さんって?」

リリーは手をとめ、思わずしまった~という顔をして。

「実はギルマスのマッドは私のお父さんなんです。でも、ギルドでは公私混同は良くないからお父さんと呼ばないようにしてるの。」

「俺はいいんだけど、リリーがうるさくてな。」

「お父さんは何も考えてないだけでしょ!」

「違いねぇ。がはは。」

「それで、俺を呼んでましたが何かありましたか?」

「いや、一応報告だ、カインとマインはDランクに降格、たぶんこの街から出ていく事になるだろう。」

「そうなんですか・・・」

「どうした、何か引っ掛かるものがあるのか?」

「いえ、逆です。あれだけ一緒にいたのに何も思うものが無いんです。それに戸惑ってて。」

「まあ、あんなめに合わされたんだ、仕方ないのかも知れないが・・・アベル、今日はここに泊まれ。」

「えっ?」

「お前が泊まる宿はあいつらと同じだろ?今は会わない方がいいだろう。」

「ご厚意ありがとうございます。でも、いいんですか?リリーさんみたいに年頃の女性がいますよ。」

「何、どうせ俺が帰って無かったら今頃乳繰りあってたんだろ?」

「お、お父さん、何を言ってるの!」

「隠すなよ、帰って来た時の雰囲気で気付かないほど鈍くないさ。」

「あぅ、あぅ。」

リリーは顔を真っ赤になり、声が出ないようだ。

「まあ、リリーはまだ16歳だから、優しくしてやれよ。」

ぷしゅー

リリーの頭から湯気が出てフリーズしたようだ。

「マッドさん、あまりリリーさんをからかうのは止めてください、可愛いけど可哀想です。」

「かわいい・・・」

リリーの顔は更に赤くなる。

「お前も充分弄ってるじゃねぇか。」

「ウソは言ってませんよ。」

「くく、泊まっていけ、これはギルマス命令だ。」

「おとまり・・・」

リリーは単語に反応した。

「わかりました。普段のリリーさんの可愛い所を見せてもらいますね。」

リリーは完全停止した・・・


「さて、アベル、真面目な話だ。どうやって生き残った。」

「言わなきゃダメですかね?」

「ダメではないが、普通は死んでるだろ?となると普通じゃない何かが合ったと考えるべきだが、知らないと協力してやることも出来ない。リリーが選んだ相手だ、ギルマスとしてではなく、リリーの父親として協力さしてくれないか?」

真剣な眼を向けるマッドに俺はスキルの事を話だした。

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