第2話 子猫

翼の前には紅い、紬の前には黒い液体がそれぞれ置かれた。翼はさっそく口をつける。

「コーヒーをブラックで飲むのは大人、みたいなことを言う人いるけど、よく分からない。そんなのただの味の好みじゃない。もしブラックコーヒーを飲むことが大人の証なら世の中大人だらけだわ」

言いながら、紬は角砂糖を二つカップに入れた。

「子供舌という言い方も気に入らない。大人だって好き嫌いはあるし、子供がおいしいと感じるものは大人もおいしいって感じるでしょう」

くるくると角砂糖をかき混ぜながら紬はぼやいた。まあ、そうだなと首肯した後、翼は思いついたように言った。

「子供舌じゃなくて、味覚が少女(あのころ)のまま、って表現にすると、なんか神秘的に感じてよくないか?」

「否定はしないけど、同調もしないでおく」

紬は軽く流した。

「まだ熱い?」

カップに口をつけない紬を見て翼は訊ねた。

「うん、まだ人肌じゃないから」

カップを手で包み込みながら紬は応えた。

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つむぎとつばさ 柚月ゆうむ @yuzumoon12

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