つむぎとつばさ
柚月ゆうむ
第1話 何の日?
とある都内の喫茶店、暖かな午後の日差しを受けたテーブル席に一組の男女が向かい合って注文した飲み物の提供を待っていた。
「ねえ」
髪を肩まで伸ばしたボブヘアの女子大生、二条紬が声を上げた。
「ん? 何?」
目の前に座っていた男子学生、鳩野翼は微笑みながら応える。
「今日って何の日か分かる?」
唐突な問いかけに微笑が固まる。翼は平静を装って頭を巡らす。
「うーん、何だろうね……」
紬の誕生日ではない、付き合って三年記念は先日済ませたばかり。何も思いつかず、翼の心臓の鼓動が速度を増す。
ふとあえて逸らしていた目を彼女に戻す。回答に時間がかかっているのに紬が不機嫌になる様子はない。となると、自分たちに関係するものではないかもしれない。
「憲法記念日」
一か八か、本日の祝日の名称を答えた。
「そうそれだ。全然言葉が出てこなかったの。もう年なのかもね」
すっきりしたように口元を緩めた。
「19歳が何言ってんの」
翼はほっと胸を撫で下ろした。
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