第14話

「ノア、あそこに降りてくれ!」


『わかったー。』


ドランティアに向かって飛んでいると、魔物に囲まれている馬車がいた。おそらくオークだ。オーク3匹に対して、戦っているのも3人。強い人なら問題はないが、かなり苦戦している、というより負けそうだ。見捨てるよりは助けるべきだと思う。


『オイラも戦いたい!オーク肉食べるぞ!』


「はは、ダメだよ。ウーノは危険だからおやすみ。成長したら戦わせてあげるからね。」


『ぶーー!戦いたいぞ!』


「んー、今回は僕とノアの戦いを見てて。次は戦わせてあげるから。とりあえずランクDとかからはじめよう。」


『、、、、わかった。』




「ノア、1匹頼む、2匹は僕がやるから。」


『いいよー。』


僕とノアは下に降りると、オークを瞬殺した。僕は鬼丸で首を斬り飛ばし、ノアは前足の蹴り一発だ。


「大丈夫だったか?余計なお世話だったらすまないな。」


「ぺ、ペガサスだと?」


またか。ノアはSランクの魔物だから仕方がないのかもしれないが、いい子なのにビビられるとちょっと嫌だ。


「ああ、あんまりビビらないでくれ。ノア、このペガサスは人を襲ったりしない、僕の契約獣だ。」


「そ、そうか。いや、そうですか。危ないところ助けていただいてありがとうございます。」


「いや、気にしないでくれ。それよりも怪我とかはないか?」


「いえ、大丈夫です。特にはありません。」


戦士風の男と話していると、奥から商人らしき男がやってきた。見た感じは物腰が柔らかそうな感じで、50歳は言ってないだろう、恰幅の良いおじさんだ。


「危ないところをありがとうございます。私は行商をしております、モランというものです。どうぞよろしく。」


「僕はナオキ イチノセだ。こちらこそよろしく。」


「ところで、このオークはどうしましょうか。倒したのはナオキ殿ですから当然あなたのものです。しかし、3匹も運ぶのは無理ですから、燃やすなどの処理が必要です。」


「ああ、それなら心配いらない。」


僕はインベントリの中に3匹しまった。これなら邪魔にもならないし、持ち運べる。


「なんと、空間魔法の使い手でしたか。いやはや、あの強さといい、魔法といい、素晴らしいですな。高位の傭兵ですかな?」


「傭兵?いや、僕はそういうのではない。

実は、最近まで山奥で暮らしていて世情がよく分からないんだ。できれば教えてほしいんだが。」


とりあえずは人里離れたところで暮らしていて、世間のことをよく知らないということにした。相手は承認だから、たくさん情報を持っているだろうし。


「そういうことでしたら、私たちに同行していただけませんか?私は情報を、そしてナオキ殿は護衛をしていただくということで。」



んー、やはり対価は必要だな。商人がタダで何かするわけもないし。まあ仕方がないだろう。


「分かった。だが、僕はドランティアに行く予定だ。だから、途中までということになるかもしれない。」


「でしたら大丈夫です。私どもはこことドランティアのおおよそ中間地点にあるロープルという街に行く予定なのです。」


「分かった。じゃあそういうことで。ノアは馬車の横を並列でついてきてくれ。ウーノは、僕の膝の上ね。」


『『わかった!』』


「あ、あの、それはまさか、、ドラゴン!?」


「ああ、そうだけど、気づかなかったか?」


「いえ、あの、人形だと。」


え?ウーノを見て人形?そんなわけないだろ。普通に生きてるし。人形にここまでの愛らしさは出せないよ。


「あ、あの!俺たちは銅バッチの『紅蓮隊』って言います。あの、その、ペガサスにドラゴンと契約して、その上剣術まで1級品のナオキさんに惚れました!弟子にしてもらえませんか!」


「は!?いやいやいやいや、無理だよ。僕そういうのはできないし。」


「こらこらオルタさん、ナオキ殿は山奥から出てきたばかりで世情をお分かりにならないのです。突然そんなに迫られてお困りですよ。」


「あ、あの、すみません。」


「いや、気にしないでくれ。」




それから僕たちはロープルに向けて進み出した。その道中、この世界についていろいろ説明してもらった。


「まずナオキ殿はこれまでどのような生活を?」


「ああ、物心ついた頃から山奥で師匠と2人で暮らしてた。まあ、僕が小さいうちに師匠は死んじゃったけど。それからは、森で出会ったノアやウーノと一緒に自給自足の生活をしてた。それで、僕もいい歳だしそろそろ人と交流を持とうと思って、18歳になって山を降りたんです。」


嘘です。ほんとのことなんてありません。まあ、見た目18歳なのはホントですけど。こんなにもウソがすらすら出てくるなんて、僕って意外と虚言癖あったりするのかな。


「なるほど。では、基本的なところから説明したほうがいいですね。

まず、この世界の人間は、おおよその人が国家・ギルド・神殿などに所属しています。どれか一つの人もいれば、複数所属している人もいます。

例えば私は商業ギルドに所属して行商をしております。行商ですから、定住はしていないので国家などには所属していません。

他には、この馬車の護衛をしてくれている彼らは国家に所属しているわけです。

まあ、ナオキ殿のように人との交わりがない、外部との交わりがないような山奥などの場合は、いずれにも所属していないこともあり得ますが。

今紹介した、国家・ギルド・神殿はそれぞれ独立しており、対等な関係にあります。」


「さっき傭兵とかって言ってたけど、それはどうなんだ?」


「ああ、あれは少し特殊なのです。

通常、彼らのように護衛を引き受けたり、魔物を討伐するような人は冒険者ギルドに所属しております。しかし、この国、ターリウ王国は150年前にある貴族が起こした事件により、冒険者ギルドが手を引いたのです。そして、10年前まで、この国には冒険者ギルドがありませんでした。10年前にようやく和解し冒険者ギルドが国内での活動を再開したのですが、100年以上もなかった組織ですから、まだまだ定着していないのです。

そして、冒険者ギルドのなかった140年間、その代わりの役割をになってきたのが傭兵組合です。傭兵組合はターリウ王国が運営する組織で、王国騎士団の管理下にあります。傭兵は、冒険者のように商人や街の人々からの依頼を受け報酬をもらうのですが、冒険者ギルドとの大きな違いは、公式にその地位が認められるのは王国内のみであるという点と、国家からは強制的な依頼があるということです。」


「なるほどなあ。さっき言ってた銅バッチっていうのは、具体的にどのくらいなんだ?」


「はい、傭兵組合は、新人・銅・銀・金・白という順番になっています。銅と銀に人が集中しており、金はほんの一握り、白となると2人しかおりません。白というのは、冒険者ギルドでいうところのSランク、最高ランクです。冒険者ギルドのSランクは大国なら3人、小国なら1人いるかどうかというところで、大陸でも30人程度です。


それでは次の説明に移りますね。

先程はギルドや神殿は独立した組織で、国家に所属しない人もいるという話をしました。

しかし、土地や海などは国家が統治しているものです。つまり、たとえターリウ王国に属さない人であろうとも、国内ではその法律に従うことになります。」


うん、それは当たり前でしょ。普通のことだ。


「そして、ウーラン自由都市連合国以外においては、身分制度をとっていますね。まあ、身分制度自体もその国によって違うので、それはおいおい学んでいくといいでしょう。

ターウリ王国では、国王が行政と立法を司っております。その下に、行政を行う機関や立法を行う議会があるわけです。正確にいうと、国王は議会のトップなのです。司法は裁判所が司っています。」


「へー、僕はいま何にも所属していないわけだけど、街には入れるの?」


「ええ、詰所で仮証を発行してもらい、それから1週間以内にいずれかの組織に入って、それを提出しなくてはなりません。まあ、ロープルの街で私が立ち会いますからご安心ください。」


「なんかいろいろとお世話になってごめん。迷惑をかける。」


「いえいえ、あの時助けていただけなかったら死んでいたでしょう。命の恩人にそのくらいするのは当然のことですよ。」


「あと、お金とかってどうなってんの?」


「通貨はですね、預金と現金があります。

現金は銅貨・大銅貨・銀貨・大銀貨・金貨・白金貨があります。

これは銅貨100枚で大銅貨、大銅貨10枚で銀貨、銀貨10枚で大銀貨、大銀貨10枚で金貨、金貨100枚で白金貨です。まあ、だいたい一般人の収入は月に大銀貨2,3枚といったところですね。

そして預金というのはですね、商業ギルドが運営している銀行というものがあります。これは、今のところ大陸の全ての国家が参加していますし、神殿も参加しています。

ここではお金を預けることができるんです。さらに、それぞれの組織から発行される身分証が、銀行カードと呼ばれるものにもなっていて、世界各国の商業ギルドと銀行で入金や引き出し、送金といったことができるんです。まあ、手数料がかかることもありますけどね。それだけでなく、銀行カードを使うと色々なところでのお支払いまでできるんです。これは使えるところとそうでないところがあります。基本的には、大商会とかになりますね。

銀行はお金の貸付などもしてくれるので、必要な時は使うといいですよ。」


へー、結構発展してるなあ。金融なんかはすごいな。

それとお金は、銅貨が1円、大銅貨が100円、銀貨が1000円、大銀貨が1万円、金貨が10万円、白金貨が100万円だろうな。たぶん。

あ、そういえば僕お金持ってない。


「そういえば僕お金持ってない。どうしようかな。素材とか売れるかな?」


「では、後ほど、さっきのオークの肉を売ってもらえませんか?」


「あー、そうしてもらえると助かる。なんか申し訳ないね。」


「いえいえ、大きくて、それも腐りやすい生物を運ばずに済んだのですから、こちらにも利益が大きいのです。」


「そうかな?まあ、ありがとう。」


「あ、見えてきましたね。あそこがロープルです。」

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異世界転生の素材屋〜どんな素材もお任せあれ〜 四季 @abc-abc-123

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