転世者カガリのセカイ日条
@Hairow
第1話 俺とアイツ
____俺の名前はカガリ。転生者だ。
それ以上でもそれ以下でもない、タダのそれだけの存在だ。
普通の男子高校生として、普通の日常を過ごす筈だった俺が何故こんなところに居てそしてこんなド田舎の森の中の世界で何をしているかって?
そりゃこの異世界に呼ばれた理由なんて、俺の方が知りたいくらいだ。
はぁ___とだるそうなため息をついて、俺は考えていた。窓の外はチュンチュンとか言う雀の声が聞こえてきそうな夜明け。
いつも通り、もう1年だ。
この異世界に来てからは、そこそこの時間が経った。
特に何も無かった訳ではないが殆んど何も無かったがな、と俺は自虐ネタを勝手に完結させ熟考をしていたベッドから降りる。
隣にはスヤスヤと安眠をするプニプニの頬をした謎の生命体が居るがまぁそれは置いといて。
床の板が微妙に冷たい。
やはり4月の始まりとは言えど寒さには弱い。
俺はボーッとした顔を洗いに一度外へ出る。井戸へと手を伸ばし、ガラガラと金バケツを上げる。
以外と力の必要なこの作業は、4月の朝日に照られされて行われる。
やがて半分を小さめのタライに分けて、俺は顔を洗った。これもいつもの作業である。
そしてそのまま朝御飯を作ることにした。
___ポッ、と炎がキッチンに立ち上る。
___昨日から残っているパンの素ことイースト菌を混ぜた生地。こねてオーブンで適当に焼いていく。
その隙にフライパンを用意。
ゴトリと釜戸に落とし、その上でベーコンや日本人おなじみ、卵焼きを焼いていく。俺は醤油派だがあいつは砂糖派である。
__そろそろあいつを起こすべきだろうか。
俺は一旦キッチンを離れ、火事に注意しつつも小さめのフライパンとお玉を携行し寝室へと再び向かう。
ガチャリ、とドアを開くと相変わらずあいつ_もとい彼女は爆睡していた。
「おーい、起きろー」
ガンガンとお玉でフライパンを鳴らす。
くわんくわんという金物同士の音が鳴り響き、ベッドの布団にくるまれた少女がモゾモゾと動き出す。
「うーん………あと5分…」
「いーから朝御飯出来る前に起きなさい」
我ながら容赦は無いが仕方ない。キッチンが火事になってからでは遅いのだ。
うぅ…という声と共に動き出すその少女。
寝起きという事もありボサボサの白髪。寝惚けたその紅眼は焦点が合っていない。
体格は極端に小さい__が、やがて思い出したかのようにふわふわと浮き始めた。
「じゃ、着替えたら早く来いよな…朝ごはん出来てるから」
「ふぁ~い…………」
……いかにも眠そうな返事である。
少々不安だが俺はキッチンへと戻り、ベーコンや弱火で熱した卵焼き、そしてオーブンからパンを3つ取り出す。
……因みに、パンを2つ食うのはあいつである。
やがてあいつはやってきた。
いつものシックな貫頭衣に、ふよふよと空中を浮いている。
コイツに限っては落とし穴にかかることが無いんじゃないかと俺は密かに思ってたりする。
ふー、とため息をついて席に座ると向こうもお子様用の椅子にちょこん、と座った。
皿を渡すと嬉しそうに受け取ってくれた。
この辺りもいつもと変わらない。
「いただきまーす」
「いただきます」
俺もアイツも感謝の言葉を述べ、ゆっくりと食べ始める。
「ん!美味しぃ!」と子供らしい声をあげる眼前の幼女。
「そーかそーか、良かったな」
嬉しそうにする彼女を見ていると、自然と顔も綻んでいく。
これが、俺とこの少女__「ペタトリス」であった。
転世者カガリのセカイ日条 @Hairow
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