第10話漢
今まさに裏切者の死刑が執行されようというとき、医務室に新たな訪問者が現れた。寝ているフリューと同じく、先ほどバカ三人と戦ったユミナとメリディアだ。
ユミナ「医務室なのに騒がしいと思ったらやっぱりあんた達なのね。フリューを無理に起こさないように静かにしてて頂戴。」
メリディア「あの、さっきの試験は、お疲れ様でした!」
極度の人見知りであり、克服のために頑張って声を出そうとすると無意識に大声を出してしまうらしい。ユミナが口に指をあてて”しーっ”っと注意をすると、またやっちゃったと自己嫌悪に陥ってしまった。
リューズ「おぉ~。ほっこりするな~。」
クルヴィ「男クルヴィいきます!」
裏切者など可愛い女の子の前では些細な事。ガルイクを放り出し、つかつかと二人に向かって歩を進めるクルヴィ。
リューズ「やめろ、クルヴィ!今のお前に勝算なんかないぞ!時期が早すぎる!戻れ!」
クルヴィ「もう俺に立ち止まることはできないぜ。行くぞ!新世界!」
無謀であるにも関わらずまっすぐと進むその男の背中はとても広く見えた。こいつは今から一つ、階段を上ろうとしているんだ。自分のさっきの発言を恥ずかしく思う。俺にはこの漢を止めることなんかできねぇ!
リューズ「いけぇクルヴィ!お前は立派な漢だ!!」
クルヴィ「すみません、そこのお二方!」
な!?二人同時にだと!?こいつ、一気に二段も上るつもりか!がめつい。が、今のお前ならなんとかなるような気がする。いけぇええ!!お前は今、最高カッコイイぞ!!
クルヴィ「これから僕とお茶でもどうですか!悪い時間にはしませんよ!」
ユミナ「あら、まさか二人いっぺんに誘ってくるなんてね。間抜け一号のくせになかなか面白いじゃない。あたしはいいわよ。」
メリディア「えと、これって..ナンパ?多分ユミナちゃん目当てだけど私に気を遣ってくれているんだと思う..あの、その、二人で楽しんで来てください!」
彼女は自身を過小評価してしまっている。ここで突き放すお前じゃないだろ。今こそ漢を見せろ!クルヴィイイイ!!!!
クルヴィ「いえ!メリディアさん。僕はあなたともお話がしたい!僕じゃダメですか?」
上手い!彼女が自身を卑下するなら、こちらも下手に出ることでフォローした!!あいつ、さてはそうとう場数を踏んでるな。
メリディア「えぇ!?あのあのあの、あぁふぁぁ...」
ユミナ「あまりのショックにオーバーヒートしちゃったわね。しょうがないから後でメリーを連れて二人でお相手するわ。あなたも二号と共に来てもいいわよ、問題ないでしょ?」
クルヴィ「全然問題ありません!本館2階のカフェテリアでいつまでも待ってますのでいつでもお越しください。それでは失礼します。」
二人の元を離れ、やり切ったクルヴィは満面の笑みで涙を浮かべていた。
クルヴィ「リューズ..俺、やったよ..」
リューズ「よくやったなクルヴィ!!お前は本物の漢だ!」
部屋の隅で、男二人は熱い抱擁を交わし、成功を喜び合う。今、確実に、世界は彼らを中心に回っている。
リューズ「しかし、俺もお呼ばれされるとはな。へへ///」
クルヴィ「いや、お前は来るな。」
リューズ「は?」
クルヴィ「お前はお呼ばれされたんじゃなくて同伴を許可されただけだ。言わばペットのようなもんだな。だから来るなよ。お前が来ると失敗するのが目に見えてる。」
ぶちぎれて言い返すと思いきや、珍しく黙り込むリューズ。納得したのか一度大きく深呼吸して、屈託のない笑顔で向き合う。
リューズ「わかった。今回はお前の漢気の成果だからな。大人しく引き下がるよ。」
クルヴィ「わかってくれてうれしいぜリューズ。それじゃ、着替えてカフェに行くわ。またな。」
嬉しそうに走って医務室を後にするクルヴィを尻目に、笑いと思考が止まらない。お前の一人勝ちなんて許すわけないよなぁ。俺を勝者に入れてくれないのならお前だけを敗者にしてやるよ!!
お前は所詮、敗北者じゃあ!!
バリューズ @taoru-5454
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。バリューズの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます