【TVアニメ第2期制作決定!】はたらく魔王さま!/番外編『はたらく魔王さまのメシ!』新作短編

和ヶ原聡司/電撃文庫

はたらく魔王さまのメシ! ――特別新作短編

魔王軍、卓上の封印を解く

 茜色が地平線に落ち、藍色の空に星々が瞬く頃、その気配は静かに、秘かに、だが確実に街中に蔓延しつつあった。

 それは平和に見える街並みの中を、揺蕩うように、だがどのような隙間をも見逃さず、力を拡大してゆく。

『その気配』に絡め取られたが最後、人間は、文明と歴史の中に封じたと安堵していた己の暗部に気付くことになる。

 ある者はそれを『欲望』と呼び、ある者はそれを『飢餓』と呼んだ。

『罪』と呼ぶ者もいれば、『謂われなき暴力』と形容する者もいるだろう。

 だがその呼び方がどうであれ、それに絡め取られた者ができることは、抗いがたい野生の本能と湧き上がる衝動、飢餓感による焦燥に身を焦がすことだけなのだ。


「く……ま、まさか、これは……!」


『その気配』が忍び寄ることに気付いた男が身構えたときには、既に手遅れだった。


「バカな……信じられねぇ、こんなこと……」


 男ははっと己の右手を見た。

 手遅れなのだ。小刻みに震えている。

 気配の端緒に触れただけで、己が肉体の衝動を抑えられなくなる。


「くっ!」


 わずかでも触れたその気配は瞬く間に男の全身を押し包んだ。

 途端にその瞬間まで感じていなかったあらゆる不調が肉体を蝕んだ。

 めまいがし、息が早くなり、全身の疲労が耐えがたいほど深くなり、足がもつれる。


「クソ……俺の体は……もう、ここまで……!」


 男は己の肉体の、心の弱さに震えた。

 かつて『魔界』と呼ばれた荒れ果てた地獄に蔓延る『悪魔』の全てを制し、『王』として膝下に跪かせた男は今、姿も見えない、形すら無いその気配に身も心も屈しようとしているのだ。

 男は走った。無我夢中で。目的地はもう目の前だ。

 無限にも思える街路を駆け抜け、二段飛ばしで階段を駆けあがり、薄い木の扉を蹴り破る勢いで開くと、そこは最早、理性を本能で染め上げる香りに満ち満ちていた。


「お帰りなさいませ、魔王様」


 出迎えた低い声に、魔王と呼ばれた男は最後の理性で本能を抑え、問いかけた。


「今日の晩飯はカレーか! あし!」


「左様にございます。魔王様」


 魔王は己に臣従する長身の男、芦屋の答えに満足げに頷くと、遂に耐え切れず、その腹から、ぐぅ……、と音を立てた。


    ※


 東京都渋谷区笹塚の一角に建つ、築六十年の木造アパート、ヴィラ・ローザ笹塚。

 その二階、六畳一間の二〇一号室の開け放たれた扉から放出されているその香りは、紛うことなきカレーの匂いだった。


「二つ先の角くらいからもうカレーの匂いしてたんだ。これでうちの晩飯じゃなかったら泣くとこだった。仕事の疲れが一気に腹に来た。マジ腹減った」


「今しばらくお待ちください魔王様。最後の仕上げにかかっている最中です。今、隣でベルとエミリアが付け合わせを作っています。さんももう少しでいらっしゃいますので」


 仕事上がりの空腹で目を回しかけていた魔王は、芦屋のその残酷な宣言に悲愴な顔をする。


「お前こんないい匂いさせておいて殺生なこと言うなよぉ!」


「皆揃ってからです。もう少し、我慢してくださいね」


「マジかー! ちーちゃん早く来てくれー!」


 帰宅した部屋の、日に焼けた畳に倒れ伏して子供のような悲鳴を上げる『魔王』に、別の男の声がかかった。


「こっちはもう一時間も前からお腹減らしたままお預け食らってんだから駄々こねるなよ。そんなこと言うならおうは店で何か食べてくりゃよかったじゃん」


「ああ?」


 魔王、ではなく真奥、と呼ばれた青年は、畳直置きのパソコンデスクに座り込んでだらだらしている小柄な男を睨んだ。


うるしはら、お前な、働いてないお前と朝から労働に勤しんだ俺と一緒にすんな」


 漆原と呼ばれた小柄な男は真奥の突っ込みを、肩を竦めただけでいなした。


「でも何で突然カレーなの? 今まで作ったこと全然なかったじゃん。どうしたのさ」


「やむを得なかった。私だって本音を言えば作りたくはなかったんだ。全ては我らの宿敵の責任だ」


「は?」


 カレー一つに宿敵だの責任だのと言い出した芦屋に漆原が眉をひそめたときだった。


「だから悪かったって言ってるでしょ」


 二〇一号室の扉が開き、大皿いっぱいのサラダを両手に持った髪の長い女性が、渋い顔で現れた。


「エミリア……貴様があのとき迂闊なことを言わなければ……」


「何だ、今日の晩飯はの発案か?」


 エミリアと恵美。二つの名で呼ばれた女性は、二〇一号室に上がり込みながら手にしたサラダを、部屋の中央の使い込まれたカジュアルコタツの中央に置く。

 そしてその恵美の後ろから、小さな影が続いて上がり込む。


「ぱぱ! おかえりなさい!」


「おー、ただいまアラス・ラムス」


「きいてきいて! まさぁだてつだった!」


 一房の紫色の前髪と美しい銀髪を持つ、三歳前後の小さな少女が得意げに鼻を膨らませ、真奥を『パパ』と呼んた。


「偉いな! 何やったんだ?」


「みにとまとのくさぷっちん! ね! まま!」


 恵美を見上げて胸を張るアラス・ラムスの頭を真奥は撫でてやる。


「ままは褒めてくれたか?」


「うん!」


「そうかそうか、偉いぞ? でも、何だかんだノリノリな感じに見えるが、何で芦屋がそんなに恵美を恨みがましい顔で見てるんだよ」


「私だってまさかベルの部屋にいて普通に話してて、あんなことになるなんて思わなかったのよ」


すずの部屋で何が起きるんだよ?」


 真奥は隣室二〇二号室のある側の襖を見る。


「何てことは無い。それこそ今晩の夕食をどうするかという普通の話をしていただけだ」


 そこに、恵美の後ろから和服姿の小柄な女性が、沢山の食器を持って入って来た。


「ああ、アルシエル。私の部屋でも間もなく米が五合炊き上がる。それでなんとかしのぐぞ」


「已むを得んな。ベル、そちらの弾はサラダだけか?」


「カレーに合う付け合わせを用意できなくてな。だが米が尽きたらうどんという手がある」


「カレーうどんか、悪くは無いが、ルゥが持つかどうか」


「あとは、殿の差し入れで強制的にストップをかけるという手もある」


「佐々木さんが今日お持ち下さるのは、おかず類ではないのか?」


「そうではないようだ」


 真奥に鈴乃と呼ばれた和服の女性と、芦屋が深刻な顔で話し合っている。

 その様子を見て、先程カレーに喜んだ真奥の顔が僅かに青ざめ恵美を見た。


「おい……まさか……」


「ええ。そうよ」


 恵美も深刻な顔で頷いた。


「私はただ、ベルの質問に答えてただけなのよ。私が永福町のマンションでどんなカレーを作ってるのか、って。そうしたらそこを……」


 その瞬間、ばしり、と共用廊下に面したガラスが激しく鳴った。

 格子が嵌められているはずの窓に二つの手形がつき、そのむこうから、


「じゅるるル……」


 本能に支配された獣の声が聞こえる。


「まだかナ~……まだかナアアアア……」


「アシエスに、聞かれちゃって……」


 恵美がすっと目線を外す。

 芦屋も鈴乃も緊張の面持ちになるが漆原はあまり意に介していない。


「あしぇす! ちーねちゃがくるまでいいこするの!」


 そしてアラス・ラムスは、窓に浮かんだホラー現象に対してびしりと告げた。


「ネーサマ……ソンナゴムタイナァ……」


 怪現象は、小さな子供の一言で微かに気配を遠ざけた。

 その結果僅かに緊張が緩むが、真奥は震える声で言う。


「鈴乃、さっきちーちゃんがどうとか言ってたが、アシエス相手に止められるようなものがあるのか?」


「分からん。分からんが、千穂殿は今日、デザートを持ってきてくれるのだそうだ。カレーが足りなくなったら、それで区切りとさせるしかあるまい」


「まぁ、アシエスもちーちゃん相手なら無茶はしないか?」


「ああ、だが実は、千穂殿の様子も、おかしかったんだ」


「は?」


「そう言えばそうだったわね」


 恵美も眉根を寄せて頷く。


「今日はカレーだって話したら、聞いたことない声で『えっ!』て叫んだの。千穂ちゃんらしくないからどうしたのかなって思って」


「おいおい。何なんだよ。久しぶりのカレーの日になんで不吉な事態が重なってんだ」


 立ち尽くす真奥と芦屋と恵美と鈴乃。

 漆原は一人、空腹をさすりながらぼやいた。


「ま、佐々木千穂が来るのを待つしかないんじゃない?」


「おなかすいたー」


 大人達の不吉な予感をものともしないアラス・ラムスの明るい声が重なった。



 佐々木千穂は、通い慣れた薄暮の道を、緊張の面持ちで一歩一歩踏みしめるように歩いていた。

『食事会』と改まって言うほどのことでもない、でも、大切な異世界の友との『一緒にご飯』。

 その献立がカレーだと知ったとき、思わず大声を上げてしまい、電話の向こうの恵美と鈴乃に思いきり不審がられてしまった。

 だが、それも仕方のないことだった。

 千穂がヴィラ・ローザ笹塚二〇一号室の『魔王城』で真奥達と定期的に食事をするようになってからかなり経つが、これまで一度としてカレーが食卓に上がったことはなかった。

 カレーと言えば、大勢でする食事で作るメニューの定番だが、出ないこと自体は別に不自然でも何でもないので、そのことをこれまで特に疑問には思わなかったのだ。

 昨日、学校の教室で、あの会話が始まるまでは。

 千穂は今日の差し入れが入った白いボール紙の箱を抱え、ごくりと唾を呑み込む。

 この箱の中に入っているのはいくばくかの好奇心と、微かな罪悪感だ。

 それを抱えるに至った経緯を思い返す度、抱えた罪悪感の重さが増す気がする。だがどうしても気になってしまったのだ。

 千穂の想い人である真奥貞夫が、『どう』なのか、を。

 間もなくヴィラ・ローザ笹塚が見えてくる頃、強烈に食欲をそそるカレーの香りが千穂の鼻腔をくすぐった。

 芦屋だろうか、鈴乃だろうか、それともカレー好きな恵美だろうか。

 お店と母親以外のカレーを食べる機会は、人生でも思ったより少ない。

 だから単純に楽しみな部分もあるが、どうしても心が重い。

 でも、仕方ないではないか。

 今千穂が抱えている罪悪感は、昨日の学校での出来事がなければ、抱く必要の無いことだったのだから。

 共用階段を上がって廊下に入ったところで、


「わあっ!?」


 千穂はぎょっと立ちすくむ。

 廊下の陰に蹲り、食欲で瞳を赤く光らせているのは、年の頃は千穂より少し下、だが真実は真奥と恵美の『娘』であるアラス・ラムスの妹、アシエス・アーラだった。


「チホ……その匂いは……ケーキ?」


 地獄の底から湧き上がる亡者の声が、千穂を一歩後ずさらせた。


「ケーキ! ケーキだよねソレ! ケーキだよネ!! ワタシの分もあるよネ!!」


 アパート中に満ちるカレーの香りの中から、どうやって保冷材に挟まれたショートケーキの匂いを感じ取ったのかは分からない。

 だがともかく地球上に住む霊長類の中で最も大食いであるアシエス・アーラの存在が、今日の献立決定に大きく影響していることを理解した。


「け、ケーキだよ。あ、アシエスちゃんの分もちゃんとあるから、お、落ち着いて……」


「ち、ちーちゃん危ない!!」


「千穂ちゃん! 早く部屋の中に入って!」


 二〇一号室の中で息をひそめていた真奥と恵美が、アシエスの絶叫に気付き千穂を守ろうと部屋の中に引き入れ、


「どうどうアシエス! 千穂殿も来たからすぐにいただきますをするからな。我慢だ我慢だ」


「ガルルルル……!」


 鈴乃がアシエスを必死に抑えている。


「あの、芦屋さん、これケーキなんで、一旦冷蔵庫に入れてもらえますか」


 廊下の騒動を振り返りながら千穂は芦屋に箱を手渡す。


「ありがとうございます。食後に皆でいただきましょう。さ、座ってください」


 芦屋は外の騒ぎを聞かないようにしながらいつも通りの笑顔を浮かべる。

 千穂はシンクで手を洗わせてもらってから、カジュアルコタツについて、その時を待った。

 芦屋と鈴乃がライスとルゥを皿に盛るのを見ながら、千穂はこの二日間の学校でのことを思い出していた。

 一体だれがあんなことを言い出したのだろう。

 あんな話が持ち上がらなければ、こんな気持ちになることなど無かったのに……。


    ※


 きっかけは、教室の中での些細な会話だった。

 何なら千穂は最初、その会話の当事者ですらなかった。

 だがいつしかその話題は教室中に波及してゆき、いつしか千穂はその会話に巻き込まれていたのだ。


「なぁなぁショージー、佐々木。お前ら家でカレーってどうやって食ってる?」


「え?」


「いきなり何?」


 クラスメイトで部活の仲間であるこうむらよしが、佐々木千穂と東海林しょうじおりが話している席に乱入し、その話題をブッ込んできたのだ。


「いやだから、家でカレーってどうやって食ってるのかって話」


「どうもこうも普通に食べてるけど?」


 佳織が面倒くさそうに答えると、義弥は更に食い下がって来た。


「だからそういうことじゃねぇんだって。なぁ、普通カレーってご飯とまんべんなく混ぜて食うよな」


「えっ!?」


「はあ!?」


「えっ、何だよその反応」


 義弥は、千穂と佳織の反応に逆に意外そうに目を瞬いた。


「え、だって、まんべんなく混ぜてって、ルウとご飯を全部混ぜちゃうの?」


「そうだよ」


「あんたそんな食べ方してたの?」


「何だよその目は。そうやって食った方が美味いだろう? ドライカレーとかカレーピラフとかそんな感じじゃんか」


「ええっと……」


「いやいやそれは無い。ドライカレーとかは最初からそう作ってあるでしょ。あんたが言ってるのはカレーライスなんじゃないの?」


 千穂は愛想笑いを浮かべながらも眉根を寄せ、佳織は言下に無いと断じた。

 だがそれでも義弥はまだ引き下がらない。


「じゃあお前らどうやって食ってんだよ」


「少なくとも全部ぐちゃぐちゃに混ぜることはないわね。ねぇささちー」


「うん。それはしないかな……って言っても、本当に私も普通だよ? ご飯の上にルウをかけて、ルウとご飯をスプーンで……」


「えっ?」


「えっ?」


 千穂の『普通』に、今度は佳織が驚いた顔をした。


「え、私何か変なこと言った?」


「ささちー、ご飯の上全部にカレーかけちゃうの?」


「う、うん。うちの家族はみんなそうだけど……」


「カレーって普通、お皿の中にライス半分、ルウ半分で盛らない?」


「うちでは違うかなぁ。だってあの半々盛りって、何だか食べにくくない?」


「食べにくいって何がよ?」


「外で食べるとき、半々盛りのって真ん中の端っこから食べるでしょ?」


「真ん中の端っこ。うんまぁ、そうね」


「あれって食べ進めるとライスとルウが分かれちゃって、ライスからルウの方に寄せて行かなきゃならないじゃない」


「うん。そうだけど」


「あれって最初が半々なのに、絶対ライスとルウのバランスが保てなくなるから……」


「ええ? 私そんなことないけどなぁ。むしろ上からかける方がバランスよく食べるの難しくない?」


「ええ? そうかなぁ?」


「上からルウって、ある程度のご飯の量越えるとそれ以上ルウかけられなくなるじゃん」


「その分大きなお皿使えばいいでしょ? そもそもそんなにご飯大盛にすることってないし」


「いや、俺は大盛にするぞ? 佐々木の言うみたいにバランス悪くならないように、全部混ぜを……」


「「全部混ぜはしないから!」」


 女子二人に声を揃えられて、義弥は初めてひるむ。

 だがその後、元々「カレーの食べ方」を話し合っていたクラスメイト達を巻き込んで、意外にも「初手から全部混ぜてしまう」という食べ方が支持を集めていることに、千穂は大いに驚いた。

 またこの議論の間に最も場が沸いたのが、クラスに一人だけ、家庭でもあの、

『魔法のランプの蓋だけなくしちゃったような銀色の食器』

 を使っている者がいた事実が発覚し、しかもそれが男子だったときだった。

 その日の部活中の佳織は、


「話に参加した男子の半分はそこまで食べ方にこだわりがあったわけではなく、女子は三分の一くらい嘘をついていた」


 と分析していた。

 つまり、男子はなんとなく大胆に荒々しく食べるのが普通、という空気が蔓延したために大人しめに食べている者達もそれに同調し、逆に女子はそんな雑な男子の食べ方と同じ食べ方をしていると思われたくなくてちょっと自分を上品に装ったのではないかと言うのだ。


「まぁテーブルマナーが要求されるタイプの食べ物じゃないし、正しい食べ方なんてあって無いようなもんだからいいと思うんだけどさ」


「うん」


「でも、もしかしたら私も適当こいた中の一人って誰かに思われてるかもしれないと思うと、ちょっとムカつく」


「か、考えすぎじゃないかな」


 千穂は曖昧に笑って佳織のグチを流し、実際にそこまで大きな問題を引き起こす話題でもなかったため、明日には皆この話題を忘れると誰もが思っていた。

 だが、話はここで終わらなかったのである。



 翌日、あの『魔法のランプの蓋だけなくしちゃったような銀色の食器』を使っていた男子が、とんでもない問題提起を始めたのである。

 曰く、


「お前らショートケーキってどうやって食ってる?」


 どうやら彼はあの後、カレーの銀ランプユーザーであることを男子達の間でそこそこからかわれたらしく、そのことを根に持っていたようだ。

 そのため新たな『食べ方イレギュラー』のあぶり出しを画策し、その火種を教室に放り込んだのである。


「そんなの最初に上のイチゴ食べて、後は普通に食うだろ」


 最初に返した男子は、こともなげにそう言ったが、別の女子が、


「えー、私イチゴは最後まで取っとくなぁ」


 と言い出した。

 最初に食べる派は圧倒的多数を占めたものの、二割ほど、イチゴを最後まで残す派がいたことは、最初に食べる派にとっては衝撃だったようだ。


「ささちー、どっち? 私最初派」


「ショートケーキなら私も最初かなぁ。あ、でも誕生日とかクリスマスのケーキの上のチョコのプレートとかは最後に食べてたかも」


「それとこれとは違わない?」


 千穂と佳織は今回も最初の議論から少し離れた場所にいたが、この火種を放った男子は、更にとんでもない爆弾を投げ込んできた。


「外でケーキ食うときさ、ケーキについてたビニールの帯のクリーム、どうする?」


「うっ」


「あっ」


 これには佳織と千穂も動揺を露わにした。

 なんと意地の悪い問いかけだろう。

 肝は『外で』という縛りだ。


「……ささちー、どう?」


「……えっと、私は……」


 佳織と千穂も、突然キレが悪くなる。

 家の中であれば、ケーキを覆っていたビニールについたクリームを、フォークなり指なりで舐めとるくらいは誰にでも経験はあるだろう。

 だが、外で、となると話は変わる。


「外では、私、諦めるかも」


「マジか。私は無理。諦められない。何で諦められるの?」


「小さい頃からそうだったからかなぁ。家でなら何も言われなかったけど、外ではやらないようにってずっと言われてきたから」


「いやあ、分かるよ。うちもそうだったけどさ、でも食材ロスとかこんだけ言われてる世の中、食べられるものを捨てることの方が罪深くない?」


「まぁ、それはそうなんだよね。ただほら、外で食べるとあのビニールからクリーム取るのって難しくない? お皿そんなに大きくないから、テーブルの上でやらなきゃだしさ」


「そうだけど。そうなんだけど実際のところ、親もどうよ。家では普通にやってるし、うちの親とか結局外でもこっそりやってるよ?」


「うちはどうだろ。お父さんとケーキ食べることなんてもう長いことしてないし」


「む、そりゃそうか」


「でもやっぱりちょっとまだ外ではやりづらいなぁ」


 千穂と佳織がぼそぼそやり合っている間に、話題はケーキを『クリームとスポンジの層を順に上から食べる派』と『先端から上から下まで一気に削って食べる派』と『背中の厚めのクリームを食べてから背中から食べる派』で三つ巴の戦いが起こっていた。


「こ、この勢力争いは、カレーのときの比じゃないね」


「こんなことでクラスが割れるなんて」


 話は休み時間が終わって次の教科の担当教員が来ても収まらず、その教員が、


「ケーキのマナー云々言う前に時間になったら授業を受けるという学生のマナーを守れ」


 と一括し、クラス全体にくすぶる火を残したまま、強引に話題を打ち切ってしまったのだった。



 学校から帰る道で、千穂はずっと渋い顔をしていた。

 この二日間、教室で紛糾した話題が頭の中でぐるぐる回っているためだ。

 カレーにせよショートケーキにせよ、食事マナーを厳守しないと人としてみっともない、と言うほど難しい食べ物ではない。

 むしろ、そんなものを気にせず食べることの方が圧倒的に多いカジュアルな食べ物だ。

 とはいえ、そんな個人の生き方や好みが反映されるカレーの食べ方とショートケーキの食べ方の話題は、千穂の心を騒がせていた。

 今まで気にしていなかったことが浮彫りになってしまったため、自分の身の回りの人間がどうなのか、急に気になり始めたのだ。


「江村君にはあんなこと言っちゃったけど」


 義弥がカレーのルウとライスを全部混ぜてから食べる、と聞いた時、自分の中では『それってアリなの?』という感情が芽生えたことは間違いない。

 だが、意外にもその食べ方が市民権を得ていると知ったとき、思ったのだ。


「真奥さん、どんな食べ方してたっけ」


 想い人の食事マナーの良し悪しは、女子には結構重要な要素だ。

 これまで千穂は幾度となく真奥と食卓を囲んでいるが、真奥の食事マナーは基本的に良い。

 と言うか、真奥に限らず魔王城に住む悪魔の三人は、漆原も含めて食事マナーが良い。

 箸の持ち方は綺麗だし、好き嫌いも無い。

 おかずが沢山あるときは自然に三角食べをしているし、咀嚼音も気になったことはなく、当然のように食べ残しもしない。

 だからこそ気付いたのだ。

 真奥がカレーライスを食べる姿を見たことがないのを。


「そもそも皆でカレーを食べたことないなぁ」


 ヴィラ・ローザ笹塚二〇一号室で真奥、芦屋、漆原、恵美、アラス・ラムス、鈴乃と食卓を囲むようになってかなり経つが、カレーライスが食卓に上がったことは一度も無いのではないだろうか。

 もっと言うと、エンテ・イスラの事情に関わる面々とカレーを食べたことが無かった。


「ケーキは前に芦屋さんがパウンドケーキ作ってくれてた時期があったけど」


 同じように、魔王城の食卓に、店売りしているような三角形のケーキが上がった記憶も無かった。


「どうしてだろ」


 カレーは大勢で食事をする場では、定番のメニューではなかろうか。

 過去には千穂もアイスクリームを差し入れたこともあるので、誰かが店売りのケーキを用意することが一度くらいあってもよさそうなのに。

 何故、カレーとケーキは、これまで魔王城の食卓に上がらなかったのだろう。


「……」


 そんな疑問を抱きながら歩いていた千穂は、いつの間にか百号通り商店街に足を踏み入れていた。

 そのとき、千穂のコートのポケットの中で電話が震えた。

 画面を見ると鈴乃からだったので、千穂は自然な動作で通話を取った。そして、


「えっ!?」


 今日のメインの献立が、カレーライスであると知り、携帯電話を取り落としそうになるほど驚いた。

 何とかその驚きを誤魔化して通話を切り、冷や汗を浮かべた顔を上げると、そこにはかつて千穂が恵美とエメラダとアルバートを連れてきたケーキ屋『パティシエ・ティロン』が。

 これは神の悪戯であろうか。


「……たまには、ご飯もの以外でも、いいよね」


 自分以外がどうなのか、世の中の常識がどうなのか、『普通』とは一体何なのか。

 親友の佳織とすらあそこまで考えが違ってしまった事実が、千穂の背を、危険な好奇心へと押したのだった。

 


    ※

 

「私はカレーにはうるさいわよ」


「うるさい黙れ」


 配膳されたカレーを目の前にして、突然恵美が言い放つのを芦屋は軽くあしらう。


「アラス・ラムス用の甘口カレーは別に作ってあるが、大人はアシエス対応で全員同じ鍋だ。余計な注文は受け付けん。全員辛口だ」


「分かってるわよ。でも、千穂ちゃんは辛口で大丈夫なの? 確か辛いもの、苦手じゃなかった?」


 図らずもカレーとケーキが揃ってしまったせいでいらぬ緊張をしていた千穂は、振られた話を聞き逃しそうになった。


「激辛とか辛さ何倍! みたいなのでなければ大丈夫ですよ。普通のルウの辛口くらいなら、お水少し多めにもらえれば大丈夫です」


「申し訳ありません。アシエス対応で量を確保するために仕方なく……」


 千穂に対しては腰の低い芦屋は申し訳なさそうに続けた。


「実は、カレーを作ったことも外で食べたことも数えるほどしかないので、どの程度が普通の辛さなのか分からないのです」


「「えっ!?」」


 これには、千穂とともに恵美も驚いた。


「ちょっと意外だわ。カレーなんて、下手すれば週に四日くらい食べるでしょう?」


「四っ!? あ、え、ええと、あんまりカレー食べなかったんですか?」


 身を乗り出す恵美と驚きのベクトルが違ったことに逆に驚かされた千穂だが、ともかく純粋な疑問をぶつけてみる。

 魔王城の台所番にして、家事万端調った主夫オブ主夫の芦屋が、まさかカレーを作った経験が無いなどとは思いもしなかった。

 魔王城の住人は、人間の基準で言えば若い男三人の所帯。

 カレーなど真っ先に献立の候補に挙がりそうなものだ。


「俺の記憶違いでなけりゃ、芦屋が晩飯にカレー作ったのは日本に住むようになってから二回だけだな」


「あるしぇーる、カレーきらいなの? おいしいのに」


 真奥と、真奥と恵美の間にいたアラス・ラムスが口を開いた。


「そうだよなー? カレーって、美味いよなー?」


 真奥は娘の頭を撫でながら苦笑した。

 改まって言われると、それをいちいち認めるのもこそばゆくなるほど、カレーというのはごく当たり前の料理だ。


「だからさ、つい過剰に食いたくなっちまうんだよ。それで、な」


 分かるだろ、という顔をされて、千穂も恵美も首をかしげる。


「米の消費がね、芦屋の予想を越えちゃったんだよ。二回の内一回は、僕がこの部屋に住むようになってから」


 そこに新たに口を開いたのは、先程からずっと室内の状況に背を向け、窓際のデスクで旧式のノートPCをいじっていた漆原半蔵だった。


「僕も真奥もお代わりしすぎて、芦屋の献立計画と予算案を浸食しちゃって、それ以来ね」


「ああ……」


「そういう……」


 ようやく千穂と恵美は事情を理解した。

 千穂や恵美が真奥達の日常生活を知るようになる頃まで、魔王城の家計は今よりもずっと厳しく管理されていた。

 中でも米の消費量はエンゲル係数算出の最も分かりやすい指標として芦屋の中で確立していたらしく、健啖家である真奥と、人並みに食べる漆原にカレーを供して消費される米の量は、芦屋には看過できないものだった。


「それに、カレーライスのような単品料理は、食べ終わるまでの咀嚼回数が少なくなるため満腹中枢への刺激が不足し、一食の満足度が消費される食材の量に対し効率が良くないと物の本で読んだのです。なので意図的に避けていました」


「芦屋はケチな上に、真奥の健康にもうるさいからね。そういう意味でカレーとかラーメンとかスパゲッティとか、それだけで一食成立しちゃう料理って滅多に出ないんだよ」


「カレーは綺麗に食べきるのも難しいとか言ってたよな。レシピ通りに三人分作ってもお替わりしたら足りないし、かといって六人分とか作ったらとんでもない量になるし」


「それだけで成立しちゃう系の料理が出るようになったの、ベルが引っ越してきてからじゃないかな? うどん大量にもらったろ。消費するために仕方なくね」


「だな。それでもカレーは遂に出てこなかったが」


「そういうことだったんですね」


 芦屋がカレーを作らなかった理由に思わぬ歴史があり、千穂は驚く。

 そして知ったからこそ、アシエスがこの場にいて、芦屋がカレーという選択を取ったことに、魔王城の発展と芦屋の懐の拡大を思わずにはいられない。


「そうだアルシエル。アラス・ラムスのは、ルゥとライスを半々でよそってくれる?」


 そんなことを思っていると、恵美の注文が飛び込んできて、千穂は思わず身を竦ませる。

 芦屋が配膳の手を止めて尋ねる。


「む、何故だ」


「丸ごとかけると途中で飽きちゃうの。合間合間で白いご飯食べたいらしいのよ」


「分かった、いいだろう」


「ほー。アラス・ラムスはグルメな食べ方するなぁ?」


「ぐぅめ?」


 真奥は一人だけお店で出てくるようなカレーを置かれたアラス・ラムスに微笑み、千穂は、なるほどライスとルウで皿を割る派にはそういう事情もあるのかと得心した。


「アルシエル。私の部屋の釜でもあと二十分で米が五合炊き上がる。アシエスのお替わり分は、それで」


「……助かる」


 鈴乃が、芦屋に小さく耳打ちし、それが聞こえたわけでもあるまいが、芦屋の背後でアシエスが流れるよだれをとめようとじゅるりと口を鳴らす音が、


「食うゾ~~!」


 という悪魔の唸り声とともに聞こえた。


「待て待てアシエス。よし、皆席についたな。アラス・ラムス、合図頼む」


「あい!」


 アラス・ラムスが小さな手をぱちんと鳴らして合わせ、高らかに宣言した。


「いたたたきます!」


    ※


 ジャガイモと人参と玉ねぎ、そして豚小間という、最も典型的な取り合わせのカレーライスが、千穂の前で湯気を立てていた。

 魔王城ではカレーのルウはご飯の上にまんべんなくかけられる、佐々木家と同じ形式だった。


「あふ、あふ」


 舌を灼くのに、熱すぎず、野菜と肉の甘みが炊き立ての米に染み渡った辛口のカレーだ。

 ただでさえ空腹に耐えかねていたところにこのカレーが入れば、もう手は止まらないし止められない。

 大きめに切られた人参は甘く、肉は柔らかく、ジャガイモと玉ねぎはとろけるようだ。


「ルウは何を使ったの?」


 半分くらい食べ進めたところで、ようやく恵美が口を開く。


「こくとろカレーの中辛とバージニアカレーの辛口を一対一だ。アラス・ラムスのはこくとろの甘口だな」


「ふーん。今度やってみよ」


 ほとんど作ったことがないと言いつつ、自分なりのブレンドを決めているあたり、さすが芦屋である。

 うちのカレーは何を使っていただろうか。

 千穂はそれを聞きながら、帰宅してから確認しようと決める。


「やっぱ久しぶりに食うと美味いな。よーく噛めよアラス・ラムス。芦屋、おかわり頼む。量は最初と同じくらい」


「かしこまりました。アシエスの分は残しておいてくださいね」


「それは何かおかしくねぇか」


「今この場で一番ダイジなことだヨ! 私もオカワリ!」


 芦屋が真奥の分をよそっている横からしゃもじを奪い、アシエスは豪快にご飯を盛る。


「絶対アシエスの体の中、物理法則が歪んでると思うわ」


「そんなこと言っていいのエミリア。未来のアラス・ラムスの姿かもしれないんだよ」


 アシエスが盛るライスの量に苦笑した恵美に、漆原がにやにやと笑いながら突っ込んだ。


「やめてルシフェル。考えないようにしてるんだから」


「まま、おかわり!」


「あア、ネーサマもおかわリ? 私がよそうヨー!」


「アシエス! 待って! アラス・ラムスそんなに食べられないから!」


 床が抜けるのではないかと思うほど、皆がカレーを巡ってドタバタと駆け回る。

 アシエスは義弥が言っていたように、ご飯とカレーをぐちゃぐちゃに混ぜて飲み物のようにカレーを胃に注ぎ込んでいる。

 一杯目は芦屋の盛り方に従っていた恵美は、お代わりのときにはご飯との半々がけ。

 意外にも漆原も半々がけで、真奥と芦屋は二杯目もご飯の上に全部がけ。

 そして鈴乃は……。


「鈴乃さん、それ、いつの間に……!!」


「ん? カレーライスはこのグレービーボートを使うのが正式な食べ方なのだろう?」


「最初からそれ使ってましたっけ!?」


 この狭い食卓にあまりに自然に載っていた『魔法のランプの蓋だけなくしちゃったような銀色の食器』に千穂は目を剥く。


「グレービーポートって言うんですか? それ」


「グレービー『ボ』ート、だ。舟形だからボートなんだ」


 カレーうどんしか食べたことが無いと豪語していた鈴乃が得意げにそう言う横から、


「家で食うカレーでそれ使う意味あるか? 汚れ物増やすだけだろ」


 真奥が冷静な突っ込みを入れる。


「気分の問題だ。効率ばかりの生き方では、心が豊かにならん」


「最近忘れてたけどお前金持ちなんだよな。金持ちの理屈が貧乏人に通用すると思うなよ」


 真奥は顔をしかめるが、鈴乃は余裕の表情。

 だがよく見ると、鈴乃はグレービーボートからカレーをよそってライスにかけるとき、一度必ず混ぜてから口に運んでいた。

 それを見た千穂は、自分が如何に浅いことで勝手に狼狽えていたかに気が付いた。

 カレーはそもそも、楽しく美味しく食べるものだ。

 そして各家庭にはルゥや材料、調理法の選択から独自の流儀があり、食べ方ともなればそれこそ千差万別なのだ。

 何が正しいということも、良い悪いということもない。

 誰かと一緒に食べるとき、その場の全員が楽しく豊かに食事ができれば、それ以上求めるものは何も無いということに気付いた千穂の心の中から、この二日間学校で抱えたもやもやが、カレーの匂いに乗って窓の外へと消えていった。


「佐々木さんも、お代わりいかがですか?」


 そんな食卓を眺めていた千穂の皿がもう少しで空になりそうになったとき、芦屋が声をかけてくれた。

 千穂は元気よく、


「お願いします!」


 と皿を出した。


    ※


「あいつらまーだやってんの」


 翌日の教室では、まだ何人かが飽きずにケーキやカレーの話題を続けていた。

 佳織はそんなクラスメイトを呆れ半分に眺めながら、


「これは目玉焼きに何をかけるかで戦争が起こるね」


「私は醤油」


「ソースっしょ」


 親友の佳織とすらここまで分かり合えないことに千穂は苦笑するが、結局のところ、


「まぁ、よっぽどみっともなくなければ何でもいいんだよね」


「そうね。そういうこと気にしなきゃいけない店や場所に行けるようになったら考えよ」


 ということなのだ。

 昨夜、鈴乃の部屋で炊かれた米まで食べ尽くした後、千穂が持ち寄ったショート―ケーキがふるまわれた。

 そこで、全員が何らかの方法でケーキを包んでいたビニールについたクリームを舐めとったのだ。

 それについて誰も何も言うことはなく、恵美だけがアラス・ラムスに、


「おうちのときだけね? お外ではあんまりやらないのよ?」


 と、極めてファジーで都合のよい注意を入れていた。

 恐らくアラス・ラムスは聞いてすらいなかっただろう。

 それを見た千穂は、改めて自分がなんてつまらないことで心を乱されていたのだと反省した。

 普通の食事は『食卓の皆が楽しく美味しく気持ちよく』が守られてさえいればいい。

 それよりも、恵美が魔王城の食卓を『おうち』と言ったことのほうがはるかに重要だ。


「ささちー。なんかいいことあったの?」


「ちょっとね」


 微笑む千穂の顔を見てつられて微笑む佳織。

 そこに突然義弥がまたばたばたと駆け込んでくる。


「なぁ佐々木、ショージー! お前ら天ぷらどうやって食べる!?」


「天つゆでしょ?」


「塩一択」


「醤油派は俺だけかよ嘘だろおお!! 衣はサクサク派? シナシナ派!」


「んなことどうでもいいでしょ。人それぞれだってそんなの」


 佳織にいなされ頭を抱える義弥を見て、クラスで笑いが起こる。


「こりゃしばらく尾を引くね」


「そうかもね」


 次はどんな派閥争いが起こるのか分からないが、とりあえず、


「今日のお昼はどうすんの? ささちーはいつも通り弁当?」


「うん。かおは?」


「学食。一緒に来てくんない?」


「いいよ。カレー?」


「この流れでカレーは無いわ」


 そろそろ空腹を覚える三限目。

 千穂は今日のお昼も美味しく楽しく食べようと、心に決めたのだった。


                                 ― 了 ―

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