昭和のドロドロ愛憎サスペンスドラマの中にフランケンシュタイン博士が紛れ込んだ……そんな印象の、クレイジーな力作です。 憎しみが横溢し過ぎる濃いキャラクター達の姿は、どこかユーモアすら感じさせ、昭和感漂う背景とクローンという取り合わせの妙味は魅力的で、最後まで惹き付けられます。 科学の暴走とは、案外原始的で剥き出しの人間の憎悪から生まれるものかも……という事をふと考えさせられる、不思議な味わいと読後感の得られる作品です。
桐谷樹は幻の美少女を追ううちに、美しい樹里亜の裏に潜む陰謀と欲望が渦巻くとんでもない事件に巻き込まれてしまう。謎が謎呼ぶスリリングな展開、不倫・不義・略奪・強姦が入り乱れた泥沼としか言いようのない人間関係、愛する人のクローンを作ることに執着していく歪んだ医者……。カオスに満ちた人間関係、狂気と狂気のぶつかり合いが、作者の独特な言語感覚によって、コミカルさとサスペンスを併せ持った新感覚のストーリーとしてまとめ上げられている。
少しづつ明らかにされるストーリー。楽しみです。異形の少女の存在も気になるところです。