点Pが移動した時の距離を求めよ

四志・零御・フォーファウンド

点Pとの距離を求めよ

「おい、どうしてお前は動くんだよ!」


 直線Aは反対側に立つ点Pに向かって叫ぶ。


「私だって、動きたくないわ。でも、問題文さんがいつもいつも私のことを動かしたがるのよ」


「そんなの無視すればいいじゃないか!」


「出来ないのよ!無視しようとしても、あの問題文さんに逆らえないわ。いつもテストの終盤に出してくれるから、その好意を拒否することなんて私には無理!」


 点Pは身体を小刻みに震わせて涙ながらに訴える。


「あれが好意だって?いいか、アレは嫌がらせに決まっている!終盤であっても最後ではないじゃないか!溶けそうで溶けないキミの心を上手く利用して沢山の時間を取らせる。最後の問題に辿り着いた時なんて、制限時間ギリギリなんだぞ!」


「わかっているわよ!」


「まぁまぁ、2人とも落ち着いたらどうだ?ボクなんていつも周囲をグルグルされて――」


「池さんは黙ってて!」


 点Pがヒステリックな叫びを上げる。池さんはビクリと驚いてから下を向いて何処かへ行ってしまった。


「なぁ、点Pどうにかして止まっていることは出来ないのか?」


「出来ないことはないわよ」


「そうなのか?」


「えぇ、でもそれは私であって私じゃなくなるの」


「それはどういうことだ?」


 尋ねると、点Pは目を閉じて天を仰いだ。すると、彼女の身体が青白く光りだし、一瞬、眩い光が周囲を満たした。


「うわっ!なんだ!」


 思わず目を閉じる。


「見て、これが答えよ」


「えっ」


 ゆっくりと目を開ける。光に慣れた視界に飛び込んできた光景に感嘆の声を漏らす。


 なんと、目の前には点Pと全く同じ顔をした存在が2人立っていたのだ。


「これはどういうことなんだよ!」


「直線A君、これが最終手段である点P'よ」


「て、点P'!?」


「同じ存在ではあるものの、全く別の存在。二面性を持ったもう一つのカタチなのよ」


「そ、そんな……」


「――あら、残念なお知らせだわ。問題文さんが直線Bさんを呼んでる」


「直線Bだって!?」


 直線Aとは対を成す位置に存在するのが直線Bだ。直線AとBはウマが合わず、いつも平行線の存在だ。


「アイツのところなんて行くんじゃない!ずっと俺のところにいてくれ!」


「大丈夫よ。点Pはずっとここにいる」


「でも、点P'は……ッ!」


 点P'は直線Aの肩を優しく掴んだ。


「そう焦らないの。大丈夫。きっと私たちを繋げてくれる存在が現れるわよ」


「でも、これ以上問題文さんには提示するものがない!」


「問題文さんじゃないわ」


「え?」


 点P'は直線Aの頬をそっと触れる。


「私たちの関係を解き明かす存在が絶対に現れるわよ」


「点P'……」


「そうね、例えば直線Cさんを生み出して私たちの関係をもっと前進させてくれるんじゃないかしら?」


 点P'は涙ながらにそう言い残して直線Aの目の前から消えた。



~完~

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点Pが移動した時の距離を求めよ 四志・零御・フォーファウンド @lalvandad123

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