第2話
「みちる!おはよう!」
こいつは望。この世界に来て、初めて友達になった奴だ。望はいい奴だ。この無駄に高いテンションも俺からすればありがたい。
「今日も相変わらず暗いねー!もうすぐ『ミッション』の季節でみんな浮足立ってるって言うのに!まぁ、君も僕もメダルは四つしかないから、今回も参加できるかは微妙なラインだけど…。けど、『ミッション』まであと二週間はあるし、それまでに君と僕が得意なステージだって二回づつはある!頑張ればまだなんとかなる!そうすれば、満を持しての初挑戦だ!それだっていうのにテンションひっくいなー!転生したくないの?ここで四年も待ってるのに…」
ただ、話し出すと長いのが玉に瑕だ…。
「したくないっていうか、今と何が変わるんだよ。つーか、お前は転生してどうすんの?なんでそんなに転生したいわけ?」
「わっかんないけどさ!転生すれば、もう十代で死ぬことはないって言うし、ここに来た時みちるだって聞いたろ?それにほら、『家族』!もう覚えてないけど、僕にもいたはずなんだ!もちろん君にだっていたはずだろう?会いたいと思わないのかい?」
「家族」というものを俺らは単語でしか知らない。いや、覚えていない。
「『家族』な…。でも、『転生』の理屈からすれば、同じ姿では戻れないんじゃないか?」
「姿は違っても分かるよ!だって、『家族』なんだもん。」
「何を根拠に…」
「よく本であるだろう?記憶喪失の主人公が家族と再会して、『なんでだろう、あなたにずっと会いたかった気がする…』ってさ!」
「お前、本のお読みすぎだぜそれは…」
「僕からすれば君は読まなさすぎだよ。こんな何もすることのない世界で本を読まないで何するんだよ。」
この世界には娯楽が極端に少ない。ゲーム端末もなければ、スマートフォンもない。あるのはカードゲームと本くらいだ。テレビもあるにはあるが、放送されるのはステージのハイライトとニュースくらいだ。そういえば、ゲーム端末やスマートフォンがあるなんてこと、俺らはどうして知っているんだろう。これも不思議なことのひとつだ。
「俺はこれがあるからな。」
そう言って俺は左手に持っているアコースティックギターを軽く持ち上げた。
セカンドイノベーション 桜 @87aleka
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