兄妹だけの尊き魔法 『鏡花孤剣』
「可哀想…」
絶体絶命だった俺と
「龍って、もっともっと…美しくて、綺麗な生き物なんだよ?健やかに眠りについた花龍を無理やり蘇生して何もしていない獣人達を殺す兵器にするなんてーーほんっっとにクソだね。」
こいつ…怒ってる。かんっっぜんに怒ってやがる!
「それにーーこれは、なに?」
これ?って、なんだ?疑問に思いながらどんどん大きく、ゆっくりになっていく声量に花白が怯えているのが伝わり抱き上げて安心させる。あれを使う時は少しだけこいつと離れないといけないしな
「わたしの……わたしの世界で一番大好きで、大切な………!」
ん?なんか、雲行きが怪しくねぇか?
「私の兄さんを、傷つけるなんて……楽な死に方ができると思うなよ?斬って、斬って斬り刻んで………ふふっ」
こいつ…一年ぶりの再会でブラコンが完全に発動してやがる…!!!
そんな俺の焦りは気にせず片手剣ーー
そんなにやる気なら俺も本気出さねぇとな。花白を隣に降ろしてゆっくりと頭を撫でる
「先生…?」
「今回の最後の決着はお前に全部任せる」
「えっ!?な、なんでですか!?」
「俺と有栖はーー…あぁいう龍とか世界規模の相手は諸事情で攻撃の効果が薄くなっちまうんだ。大丈夫、二人で全力で支援するから…本気の本気で、詠唱もしてずっと練習していたお前だけの魔法を使え。いいな?………俺たちを信じろ」
「……!はいっ!!」
大きく頷いた教え子に借りていた長杖を返して後方へと下がらせた後、妹を見つめる。
「有栖」
「なぁに、兄さん」
やっぱ恥ずいなーーでも
「ありがとう。すまなかった、守ってやれなくて」
「いいんだよ、お互い様だったしね」
「それでも…俺が、守ってやるべきだった。俺はお前の兄貴なんだからな」
「!!……本当はもっとゆっくり話したいけど」
「あぁ、またあとでだな」
頷きあって前を向いた瞬間、本気を出す一歩手前で張った俺の魔法障壁を
遅れてーー怒ったような咆哮の凄まじい突風が辺り一面に吹き荒れる。
「ほーー、こりゃずいぶんと怒らせたなぁ?」
「兄さんのせいでしょうに…で?初手特攻でいい?」
「「白鏡片鱗」抜いてる時点でそのつもりなんだろ。ちゃんと合わせろよな」
「もちろんだよ。お兄様?」
ったく…嬉しそうにしてる義妹を横目に「
俺の背中には左に純白の天使の翼が
妹の背中には右に漆黒の悪魔の翼が
計四枚ずつの翼が光と闇の魔力を放ちながら現れーーそれぞれが全く同じ名をした魔法を使う
「光 火 固有魔法『
「闇 雷 固有魔法『
俺の剣先には白光し炎を纏う龍。有栖の剣先には黒光りし紫電を纏う龍が現れる。
二人が持つ、俺たちだけしかつかえない。世界にたったひとつの魔法
これだけやっても蘇生された花龍は少し体制を崩す程度だろう。龍とはそういう生き物だ。だからこそーー威力を更に底上げするために俺たちは剣身を合わせ……っ!?
不意打ちで、頬にキスされる
「っ!」
「隙ありっ!」
顔が赤くなるのを自覚しながらもーキスしたことで魔力が活性化。大空が揺らぎ、大地は震え、炎と紫電は消え白と黒の翼がさらに大きくなる
前にいる花龍や敵達も異変に気付き、数々の攻撃魔法を放ってくるがーー翼で自動的に防御され、かすり傷すら逐わない
俺と有栖が本気を出すということはこういうことだ。
普通ならあり得ない光景に敵達は驚いているが、判断が遅すぎる。これだからバカは。
そんな中、双降りの片手剣は白光しながらも虹色に輝り初め、俺たちを護るように精密で美しい魔法式が展開され広がっていく。
(………ん…)
ここからが本番ってときにバカ妹は俺の服の裾を引っ張り上目遣い。ったく!
剣を左手に持ち変え有栖を抱き締め更に威力が上がるように魔力をお互い合わせ、その尊い魔法の名前を俺たちは呟く
「「白龍 『
二匹だった龍はお互いを取り込みあい大きな一匹の白龍へと進化し大咆哮。花龍へと突っ込んでいく
ーーーまず感じたのは泣き叫ぶような轟音と悲鳴のような鈍い衝突音
そして白龍は俺たちの怒りのままに龍だろうが力のままに衝突し魔法障壁を完全に砕き対魔の鎧をも血飛沫と共に空中へと四散させる。
そしてすべてを貫く魔剣を放ち、悲鳴と鳴き声が響き渡るもーー龍は、ふらふらと揺れながら完全に怒り魔法を紡いでいるのがわかる。
更に威力をあげーーくそったれ
ぎゅっっと目を瞑り必死に白龍を制御する妹を支え、後方にいる花白をみる。
戦況としては人間の敵の戦闘する意志は完全に折った。これ以上追撃する必要はない、つまりーー花龍を倒すだけだ
有栖の魔力は復活して一年程しか経っていないこともあってすでに枯渇寸前。俺だけの魔力だけだとこの妹が作ったバカバカしいほど強い花龍はギリギリ致命傷を負わない程度、止めはかわいい教え子に託すしかない。
もうすでに倒れかけている有栖を支えながら花白に七属性支援魔法をかけ、片目を瞑る。
「はいっ!あとは任せてください。先生と有栖さん!!!」
白髪狐の教え子は前傾姿勢になり聖女の杖「
「雪は吹き荒れ、私達を白く染め上げ」
「光は指し示し、私達をも明るく支え」
「大樹は我々をいつも見守り、褒美とーー罰を与える。」
「英雄の教え子であり、次代聖女である私が、貴女をもう一度、救ってみせる」
そして、俺が与えた新しい生き方を、花白は受け取り、魔法を完成させた。
「ーーーー『
その魔法の名の通り白狐神が二体現れ花白の隣に鎮座し花龍へと氷、光属性の追尾弾を連射。
薄桃色の天使のような翼が六枚現れ傷ついた味方を助けるように治癒魔法と同じ効果のある雪が降る。
大樹の枝は世界の理に反して生き返ったことを叱るように、花龍を包み込み………あっけなく、破壊し下へと堕ちてくる。
戦いなどなかったことのように、太陽が俺たちを照らし、その光で龍は灰になり
あまりにも呆気なく…妹の前世の相棒は逝ってしまった。
英雄でいるの疲れたし、拾った幼女達を育てたら隠居を…ってなんで俺に懐いてんの!? 彩雲あいら @saiunaira918
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