英雄を倒せし花龍
狂狼を放った先生のそばに使い魔の狼さんと共にかけていき対闇結界を放つ。
完全に煽ったせいか、戦意喪失している人と相当自信があるのか前に出てくる人の2組に別れてる。
豪奢な魔法士の格好をした犬族の男が長杖を高く上げ、血と黒色が混じったような禍々しい精緻な魔法式が空から地面へと走っていきーー背筋がぞわりと反応。尻尾が逆立つのを抑えられなくなり、無我夢中で先生の右袖にしがみついてしまう。
「先生、なんですかこれ…!」
「おいおい、本気だせとは言ったが国を滅ぼす気かてめぇら!!!」
「お前が英雄だろうがなんだろうが関係ない。精々足掻いて見せろっ!!」
そう言い男は絶対的優位を確信した顔で魔法式を発動。
先生は影を落としたような顔のまま動かない
目の前が真っ暗になり嵐が突然来たような風に吹かれ耐えようと足を踏んばーーえ?
「っぐっ!!!」
脂汗でじっとりと濡れたいつもと違う焦りくぐもった声を出した先生に抱えられ後退させられる。
「先生…!血が……!!」
「ただのかすり傷だ。んな事より…マズイな『
少しだけ出血していた頬を拭い笑顔を見せ掛けた先生は険しい顔で前を向いた。私も続いて前を向くとーー
「か、りゅう…?」
私たちの頭上を飛んでいたのは巨大な白銀に輝る龍だった
口には私と同じぐらいの大きさもある無数の牙に巨大な六枚の翼に真っ白な目に見えるほどの強大な魔力が舞って花龍を守っている
で、でも先生なら…!
そう思って私が希望の目で見た時先生はーー
「は…ははっ…嘘だろ…」
真っ青な顔で、泣いていた
「っ!せんせい…」
「悪い花白……これは俺一人だと無理だ、せめてあいつがーーーーくそったれ!!!!」
「!?」
声を遮り花龍が大咆哮し、鼓膜が破れそうになるのをまた先生に助けられさっきまで私たちがいたところは深く抉られていた
ただの咆哮だけでこの威力!?
「おい杖貸せ!逃げたら先に逃げた獣人へも襲いかかる、ここでせめて消耗させるぞ!」
「はいっ!!」
そうだ。泣いても、絶望してもそれでもなお…先生は前を向いている。私も教え子として役に立つんだ!
長杖を先生に渡して指示を待つため目を見る
「顕現せよ!!『
焦ったような声と共に膨大な火属性の魔力が龍の形をした魔法障壁を創り花龍を無理やり封じ込めるーーけどここまで魔法障壁の熱さが伝わってくるのに花龍は火傷すらしていない。
「これで時間稼ぎはできるな。一先ずは安心していい」
「で、でも…花龍があれを突き破って来たら…!」
「あー?何バカなこと言ってるんだ?」
「え?だって先生、泣いてたし“俺一人だと無理だ…”って言ってたじゃないですか」
「そりゃーあの時はほんとに来てくれるか半信半疑だったしな、あと泣いてはない。」
「?来る…って、誰がですか?あと泣いてましたよ?」
「見てりゃーわかるさ。」
はぐらかすようにさっきとは打って変わって嬉しそうな、それでいて懐かしそうな表情。私には見せてくれない顔……でも今、なんでそんな顔を…そう聞こうとした瞬間
飛翔している花龍よりも上の上空に巨大な花の形をした魔法陣が浮かび上がった
現実ではありえない光景に戦いを見ていた敵や味方口を開けては唖然としてる。私も意味がわからない
ただ一人。先生はーー英雄はくすくすと悪い顔で笑っている
「前世だろうが今世だろうが、俺との約束だけは死んでも守るどうしようもねぇブラコンだもんなぁ?ーーーー
先生が名前を呼んだ瞬間、膨大な英雄によく似た魔力が純黒の精緻な式が見える限りの空を覆い隠して、爆発!!
「
信用しきった声で英雄はその魔法の名を呟き。
真っ白な煙、桜の花弁と共に白髪の「聖女」は降臨した。
「兄さん…これは何?なんで前の私の濁りきった魔力と血をを無理やり使って私の大事な大事な花龍が復活してんの?」
「知るわけねぇだろ。少なくとも俺は後始末をしくったらしい。すまん」
「いや、私の方がしくってるからいいけどね……んで、貴方が
「は、はいっ!」
声が緊張で裏返る。狼さんのご主人でこの長杖を前の持ち主、そしてーー先生がこんなにも信用している人。
「兄さんの教えは地味にスパルタだけど頑張りなね」
「?」
その言葉に違和感を感じて首を傾げる。敵に魔法を放つ時はともかく魔法教えてくれる時は優しいだけだと思うけど…違うの、かな?
「ばーか。スパルタで魔法教えてたのはお前だけだわ」
「えっ。ひっど…」
「バカ妹だからな、仕方ない」
当たり前のようにこういう話してると落ち着く…んだけど、花龍が暴れて魔法障壁にはヒビが入り始めてる。
龍の目の前にいるの、忘れてない…?
焦っているのが尻尾が逆立ち獣耳がビクビクと動いているのを見て伝わったのか2人に頭を撫でられる。
「え…?」
「「だいじょうぶ」」
高い声と低い声が心地よくピッタリとハモリ笑いながら確信するような言葉を放つ
「あんな薄汚い龍ぐらい」
「二人ですぐ倒してあげるからよ」
二人の英雄は、お互いを信じ…暖かい瞳を、私に向けていた。
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