第10話
朝8時。
俺はぼんやりと歯を磨いている。
洗面所の窓から、今日行く海をぼんやり眺めながら、歯ブラシを動かしていく。
晴れ渡る青い空。
海から吹きつけてくる潮風。
ここ数年、家の目の前にありながら、あまり気にしてこなかった場所。
今日はここのビーチに遊びに行って遊ぶのか。
そんなことを考えながら見つめていた。
やはり、完全には不安はぬぐい切れていない。
幼い日にあった怖い体験をどうしても振り切れないでいた。
もしパニックになってしまったら、俺はおどうなるのか?
そんなことばかり考えてしまう。
そうなったとしても、あおいちゃんや宮には迷惑はかけれない。
そんなことをしてしまったら、あおいちゃんあたりは落ち込んでしまうかもしれない。
そんな心配ばかりが頭の中を埋め尽くしていく。
なんだか自分でも分かるくらい、ピリピリとした空気が張り詰めていた。
そんな心配がピークに行こうとしていた時。
トントン、トントン。
後ろから肩をたたかれる。
誰かなと思って後ろを振り返ると、あおいちゃんだった。
【あおい】
『おはよう』
【恵】
「おはよう」
【あおい】
『今日はいい青空』
パジャマを着たまま、まだ眠そうな顔であおいちゃんがニコニコ笑っている。
【恵】
「今日は海に行くの楽しみ?」
【あおい】
「…………(コクコク)」
にこやかに微笑みながら、あおいちゃんがうなずく。
【あおい】
『みやはもうお昼作りはじめてる、楽しみ』
【恵】
「そっか、みやも楽しみなんだね」
【あおい】
「…………(コクコク)」
そんなやり取りをして、少し勇気が出た気がする。
今日一日は海に行って泳がなきゃと言う部分よりも、今日一日は海に行って楽しもう。
そう思えてくる。
大丈夫、今日が天気も穏やかだし、小さなときとは身長も体重もぜんぜん違うんだから。
そうそう簡単に波に飲まれるわけが無い。
それに今日はあおいちゃんもついていてくれるらしいし。
怖がることは何も無い。
そう自分に言い聞かせながら自分も準備をしていく。
みんなにおいていってしまわれないように。
あおいと俺 時雨朝 @asa_sigure
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