第24話 両想いになって
私は、エルクル様に自らの気持ちを打ち明けていた。
その言葉に、彼は信じられないというような顔をしている。
しかし、だんだんと状況が理解できてきたのか、その表情が変わっていく。
「う、嬉しいです。あなたに、そのように思ってもらえるなんて、思っていませんでした。あ、いえ、もちろん、そう思ってもらいたいと思っていましたし、そう思ってもらえるように努力しようとは思っていましたが……なんでしょう。嬉しくて、言葉がまとまりません……」
「大丈夫です。エルクル様の喜びは伝わってきますから」
冷静になったエルクル様は、とても喜んでくれた。
それは、私にとっても、嬉しいことだった。もちろん、彼が私の思いを喜んでくれることは予想できていたことだ。彼の方から告白してくれていたのだから、それが予想できない訳がない。
ただ、わかっていても、嬉しいものは嬉しいのだ。私の好意を喜んでくれる。好きな人が、その気持ちを受け止めてくれる。これ程嬉しいことは、他にないだろう。
「これで、僕達は、両想いという訳ですか……」
「ええ、でも、どの道夫婦にはなる予定でしたけどね……」
「それは関係ありません。心が通じ合っている方が、絶対にいいですからね」
「まあ、それはそうですよね……」
私は、エルクル様と笑い合った。
自分が、きちんと笑顔をできているかなど、もう心配していない。
彼の前では、私は鉄仮面を外すことができる。今は、それを確信している。だから、私は絶対に笑顔なのだ。
「ああ、そうだ。訓練を再開しないといけないのでしょうか? でも、僕の前で表情が作れるというなら、訓練の必要はないということですか?」
「そうですね……強いて言うなら、エルクル様が傍にいてくれたら、私にとっては訓練になるということでしょうか」
「なるほど……それなら、普通にお話でもしましょうか。何も考えなくていい、気ままな時間を過ごすとしましょう」
「ええ、それでお願いします」
こうして、私はエルクル様とともに、しばらく談笑するのだった。
そうやって、エルクル様と話していけば、きっと私の表情は完全に取り戻すことができるだろう。
無表情で不気味と婚約破棄された令嬢は、王子に溺愛されています。 木山楽斗 @N420
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