第23話 温かい心
私は、エルクル様のおかげで、自身の表情を取り戻せた。
私は彼の優しさのおかげで安心でき、その結果、表情を作れるようだ。
「本当にありがとうございます。エルクル様のおかげで、私はこの表情を作れるのです。今は、あなたの傍にいなければなりませんが、何れ、どこでも表情を変化させられるようになる気がします」
「いえ、僕で力になれたのなら幸いです」
エルクル様に対して、私は感謝の気持ちを伝えた。
そして、私は彼にもう一つの気持ちを伝えなければならない。
この気持ちを、隠しておくことは簡単だ。しかし、それは彼に対して不誠実である。誠実だった彼に倣って、私も己が思ったことを打ち明けるとしよう。
「エルクル様、実はあなたに伝えたいことがあるのです」
「伝えたいこと? なんですか?」
「単刀直入に、事実だけを述べさせてもらいます。私は、あなたのことが好きです」
「え?」
私は、自分の嘘偽りのない気持ちを彼に打ち明けた。
回り道をするよりも、まずこの事実を伝えるべきだと思った。なぜなら、彼も私にそういしてくれたからだ。
「私は、エルクル様と一緒にいると安心できます。それは、先程話した通りです」
「え? ええ……」
「そうやって安心できるのは、エルクル様の温かい心があったからです。私は、その温かい心に惹かれたのです」
「温かい心……僕が?」
私の言葉に、エルクル様は少し驚いていた。
彼は、かつて自分の心に温かいものはないと言っていた。だから、驚いているのだろう。
しかし、それは大きな間違いである。なぜなら、私は彼の心の温かさを、しっかりと感じていたからだ。
「私を思うエルクル様の気持ちは、嘘偽りのない気持ちです。もしかしたら、貴族の前ではエルクル様は割り切っているのかもしれません。でも、私に向けられた気持ちは、とても温かいものでした」
「そうなのでしょうか?」
「ええ、私はその温もりを感じました。だから、間違いありません。あなたの心は温かい。その温もりに私が救われてしまうくらいには……」
私は、笑みを浮かべながら、エルクル様にそう言った。
上手く笑えているかわからないが、この気持ちは彼に伝わるはずだ。彼が、私の気持ちをわからない訳がない。
そんな少し高慢な考えを、私はしているのだ。それ程に、彼のことを信頼しているのだ。
こうして、私はエルクル様に自分の心を打ち明けたのだった。
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