第115話 『混浴風呂で大騒ぎ・後編』

 一方その頃、アグニと漣は再び口論を開始しました。どちらの胸が良いかでモメていたのです。


「このクソ魔族、私よりもほんのちょびっ~~とだけ胸が大きいからって、上からこないでよねっ私の方が美乳なんだから!」

「あらそうかしら、私の方が綺麗だと思うわよっ」


「言ったわね、クソ魔族! 私の方が弾力があるわよ、若いんだからっもう、ピチピチッ」


 そう言って、アグニは漣の胸を鷲づかみにしました。


「きゃあっちょっと触らないでよ、この変態っ」


 漣は必死にアグニの手を振りほどき、彼女を触り返しました。


「いやっちょっと止めなさいよ!! クソ魔族!」


 二人の口論とおさわりの繰り返しは中々収まりません。


「おまんら、さっきから何触りあってるんだ? 馬鹿なのか?」


「何言ってるの? リョウマ? あなた子供の作り方とか、知ってるの?」


「なんだとっ馬鹿にすんなっウチだって、もう大人だ~。子供の作り方ぐらい、めっちゃ知ってるぜよ」

「あら、じゃあ言ってみなさいよ~」

「ちょっと、アグニ、止めなさいよ」

「あのな。おしべとめしべが擦りあって、受粉っちゅーもんをすると、子供が出来るっ。どうだっ完璧だろ? ムツに色々教えてもらったぜよ」


 リョウマはとても頭が良いのですが、こと性知識に関しては、11歳の頃にムツに悪戯で嘘を教えられ、それを妄信したまま、いまだ全く無知なままでした。カジノの景品も、大半はムツの日頃のうっぷん発散と悪巧みで彼女主導で全面的に決められたものです。


 リョウマは中身を知らないまま、調達と増殖だけをさせられていたのでした・・・。リョウマには性的無知という残念な特殊体質があったのです。



「リョウマって、頭はともかく、本当に子供なのね~いいわ、私が教えてあげるっ」


「なんだ? 違うのか? なら一体どうするぜよ??」


「うふふ、あのね。まずは~殿方のを~」


「駄目、アグニっリョウマを汚さないであげてっ」


 クシナダとは同じ年ですが、純潔の血の持ち主として既に体が成熟している彼女とは違い、まだ無垢で幼い容姿をしているリョウマに、アグニが真実を教えようとしたところを、漣が必死に止めに入りました。


 そして二人は再び体の触り合いを始めたのです。


「あっ嫌っちょっと、そこは駄目よっ」


「あなたこそ、そこは止めてよっ」


「そっそろそろ止めましょうか?」


 頭部にタオルを巻いていたマテウスが、頬を赤らめながら、ピエタに確認を取ります。

 マテウスは性知識だけはしっかりと独学でお勉強し、一人で驚愕した経験がありました・・・。

 ラズルシャーチは戦士の育成には熱心ですが、性教育は大変疎かにしており、各々が独学で学んでいるのが現実なのです。


「もう好きにやらせておけ。明日は死闘になる。ガス抜きには丁度いいじゃろうて」


 アグニと漣が再び触りあいを始めたその頃、温泉に慣れていないライカールトは、湯あたりを起こし、先に出ることにしました。


「ふう・・・温泉は殆ど経験がないもので、いけませんな。私には刺激が強すぎます」


「そうですか? とても心地よいですよ。その内慣れますが、ご無理なさらず」


「うむ、そうさせてもらうよ」

 

 ピエタと共に湯治の旅をしていたペロッティは、ライカールトの体を気遣いました。 

 そしてライカールトは立ち上がり、真っ先に温泉を後にしました。しかしこけてしまい、頭をとても強く打ってしまったのです。


「ううう・・・痛い・・・・」


「大丈夫ですか、ライカールト殿っ酷い瘤ですよ」


 ペロッティとグラウスが心配し、生まれたままの人間姿でライカールトに駆け寄りました。


「平気ですか?」


 グラウスも大層心配そうです。


「だっ大丈夫です。私は頑丈ですから、痛っ」


 一方、女性陣達が浸かっている湯で、リョウマが温まりながら、神妙な面持ちで湯に浸かっていたハインに、無明の破片とダンジョンの事を話しました。それを聞いた聖女は、しばしの苦悩を忘れ、リョウマとの会話を弾ませます。


「へえ~無明の破片かぁ~。なんかすっごい便利なアイテムだね。私の血も吸収できるかなぁ?」

「それはやってみないとな~わからんな~」

「今度試させて~」

「ええぞ。それよりお勧めダンジョンの事なんだが・・・」

「おすすめダンジョンか~~マガゾには100を超える遺跡や洞窟やお城があるからねぇ。そうだなあ・・・禁朱城とか、どうだろう。あのね、マガゾにはね、禁断の地と禁足地っていう二つの立ち入り禁止区域があるんだけど、禁朱城はその中でも一番危険な禁足地のすぐ近くにあるんだよ~」

「禁朱城? それはどういう城なんだ」

「なんかね、見たこともないお城風の建物なんだぁ。私とリッヒで昔一度入ったけど、危険すぎて、すぐ抜け出してきちゃった、テヘへ」


 ハインは頭をかきつつ苦笑いをしました。


「危険? どんな危険があるんだ?」


「あのね、その城の城内では、血を流す事を禁じるっていう掟があるんだよ。床に怪物とか仲間の血が滴り落ちると、城の最上階にいるタンタラ坊やっていう赤ん坊の怪物が、どんどん強くなるんだって。しかも禁足地の近くにある影響なのか、城内にいる怪物は、平均レベルが70000を超えてて、全部魔王級の怪物ばかりで、すっごく強いんだよ~。戦わないとやってられないんだけど、下手に戦って流血させちゃうと大変な事になるし、最上階にいるタンタラ坊やを倒さないと、城内で手に入れたお宝は全部没収されちゃうらしいんだぁ。結局私達はお宝を諦めて、途中で逃げ帰ってきちゃったんだけどねぇ・・・」


「その禁朱城っての、仲間は何人まで入れるんだ?」

「最大6人までだよ~」


「なるほど・・・ウチ、そこに行ってみたいぜよ。どんなお宝があるのか、興味あるしな」

「やめといた方がいいよ~、その最高ランクの無明の破片も、そこなら何度か挑めば手に入るかもしれないけど、ホントに危険なんだから~」

「う~ん、・・・こんなとき、ゼントがいてくれたらなぁ~・・・」


 リョウマは天を見上げ、ゼントのことを思い返していました。

 


 こうして、一同の夜は順調に更けていくのでした。

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