第96話『襲撃』
レジスタンスのアジトでは、マクスウェルとピエタ達が真剣に話し合いをしていました。
「実はもう一つ懸案事項がありまして・・・」
マクスウェルがそう重い口を開いた時でした。突然レジスタンスのサブリーダーのペイトが、彼の部屋に駆け込んできたのです。
「マクスウェル!! 大変だよ! 火縄銃部隊にこのアジトを感づかれた! 応戦した仲間達が殺された!! 今こっちに向かってきてる!!」
「何だと! そんな馬鹿な?!! 軍部かっ?」
「ブラックエンブレムだよっ」
ペイトは仲間達が殺された悲しみを堪え、怒りに任せるように吐き捨てました。
「いきなり敵襲とは、穏やかではないのう・・・」
ピエタが少し呆れたような様子で呟きます。
「マガゾは本当に危険に満ちていますね・・・お嬢様が心配です」
マテウスも杖を力強く握り締め、凛凛しい武人の表情に変わりました。
「良いか皆の者、下手に相手をして大事になってはならぬ。ここは直に逃げるぞ
! 自らの命を最優先に動くのじゃっ」
しかしピエタの案は、マクスウェルに即座に却下されました。
「いえ、戦いましょう。今のマガゾには安全な逃げ場所などありませんよ。それにここで奴らを生かしておいたら、また他のアジトを襲撃されるでしょうからね」
マクスウェルは指を鳴らし、戦闘態勢に入りました。しかし、リョウマがそれを静止します。
「マクスウェル!! ならおまんは絶対に戦うな! ここはウチに任せるぜよっ」
「しかし・・・」
「相手はよくわからんが、銃器みたいなもんを使うんだろ? 正直マガゾに銃があるなんて驚きだが、銃弾戦なら、ウチが相手になった方がいい! ゼントと他の者は生きてるレジスタンスのメンバーをここに集めて、守っちょれっ!」
「わかった・・・相手の弱点は首の後ろだ。しかも相手は幽霊だ! 気をつけて戦ってくれっ」
マクスウェルはリョウマに敵兵の弱点部位を告げました。
その二人の様子を見ていたピエタとマテウスは、言外に密かな激情を感じつつ、沈黙を貫いていました。
リョウマの勇ましい発言に感化されたペロッティは、私も行きますと声を上げました。
「おまんは病み上がりじゃき。やめとき」
「いいえ、行かせて下さい。お役にたってみせます」
「そうか、ならついて来いっ」
こうして、リョウマとペロッティはレジスタンスのアジトとなっている廃墟ビルの一階に上っていきました。
「ピエタ様、下手に相手をするのは危険では? 国の大事に巻き込まれますよ?」
冷静なマテウスが、大賢者に進言しますが、幼女はもはやどうしようもない、といった様子で首を横に振ってみせました。
入り口付近では、既に4名の火縄銃を持った銃兵隊が室内を探索しています。
そしてリョウマとペロッティの姿を見つけ、さっそく室内に銃を撃ち込んで来ました。
リョウマとペロッティはとっさにテーブルを盾にして隠れ、反撃の機会を伺っています。
「ホントだ・・・あいつら得体の知れないもん持っちょる・・・あれがクシャーダの知恵の賜物か???」
「よくわかりませんが、気をつけましょう、リョウマ殿」
リョウマがさっそくテーブルから上半身を出し、銃で応戦しました。
しかし彼女の撃った銃弾は、兵隊の体を掠めていきます。
「何!? どういうことだっ??」
「こいつら、本当に幽霊ですよっ」
「幽霊だと?!! それなら良い物があるぜよっ」
リョウマはカバンから、以前パパイヤンでの道中でグラウスより譲り受けた秘霊薬を取り出しました。
「ほれ、ペロッティ、これを飲め」
「何ですか? これは?」
「秘霊薬っちゅー奴ぜよ。幽霊に攻撃が出来るようになるっちゅう薬だ。以前パパイヤンに来る前に、グラウスに貰ったんだ」
リョウマの言葉を聞いたペロッティは、素直にその薬を飲み干しました。リョウマも続けて飲み干します。
そしてペロッティはコアラの姿に変身すると、イグナ・ネオ・アンプロポスを発動したのです。
「連中の動きを遅らせました! リョウマ殿、後は頼みますっ」
「よっしゃっウチに任せるぜよっ」
リョウマは、どういうわけか室内に侵入してきた敵兵とは異なる、後方の壁に銃弾を四発撃ち込みました。そしてその銃弾は跳ね返り、敵兵の首の付け根に次々と当たっていったのです。
すると敵兵達は苦しみもがいたあげく、次々と消失していきました。
「ふう・・・なんとかなったぜよ・・・」
リョウマはほっと胸を撫で下ろします。
リョウマはこの戦いの中で、新たな特殊能力、跳弾に目覚めたのでした。
それから2分ほど経過し、リョウマとペロッティが勝利の喜びを分かち合っていた頃、今度は孤児院から帰還したアグニ達が、顔を青ざめさせて、レジスタンスのアジトに駆け込んで来たのです。
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