第一部第二章『黄泉津神と禁足地の悪霊』
第81話『魔法の絨毯に乗って』
リョウマはさっそく絨毯に乗り、飛べと命じましたが、まったく動作しませんでした。
「なんじゃ? どういうことだ??」
首を傾げるリョウマを尻目に、グラウスが言いました。
「恐らくは魔力を原動力に操作する絨毯なんでしょう。魔道具の一種。私が試してみましょう。」
グラウスは魔力を解放すると、絨毯は浮遊を始め、空高く舞い上がりました。
「おお、こりゃ、たまるかーーー!」
リョウマは歓喜の声を上げます。そして残りの仲間達を乗せ、ついに死の国マガゾへと旅立ちます。
「さあ出発よ!」
アグニは意気揚々とした調子でした。
一方その頃、モントーヤ邸に戻っていたライカールトは、事の顛末を玉座の間でモントーヤ公に報告していました。
「なんと、ペロッティ殿が?!」
「はい、アグニお嬢様を庇って、地獄病に・・・」
「なんということだ。」
「それでマガゾにいる聖女に会うまでという条件で、マテウスを同行させました」
「うむ、見事な判断だぞ、ライカールト。お主にはまた届け物を渡す。マガゾまで行ってアグニに届けてやってくれぬか?」
「承知しました。して、今度は一体何を?」
「魔法使いと言えば手袋だからな。職人に豪華な手袋を作らせた。それと軍資金を合わせて届けてくれ」
「かしこまりました」
「もしマガゾでアグニが困っていたら、助けになってやってくれないか?」
「しかし、それではモントーヤおよびガレリアの警備が手薄になりますが・・・」
「万が一に備え、ファルガーは残す。兵士も300人程は直に集められる。一時的になら問題ないであろう。」
「そうですね、ファルガーがいれば問題ないでしょう。では、私も急ぎマガゾへ出立いたします」
「頼んだぞ、ライカールト」
「御意」
ライカールトは深々とモントーヤ公にお辞儀をしました。
魔法の絨毯は、二百メートルまでの高さで飛行を続けていました。空の上のため、怪物に遭遇することもなく、一同は順調にマガゾまで進んでいました。
「この調子なら一週間もあれば到着しそうだぞ」
グラウスは嬉しそうにアグニに言います。ペロッティを治す方法が残されている事で、胸に希望の炎が上がっていたのです。
「よかった、ペロッティを治せるわ」
しかし、順調に進む魔法の絨毯目掛けて、黒い翼を持ったパーピーの群れが接近してきていました。
「む、なんだ。何かが近づいてきているぞ」
怪物の気配をいち早く察知したリョウマは、皆に警戒するように言いました。
「あれは・・・パーピーの群れだっ」
「何もしてこないと良いんだけど」
「一応臨戦態勢は取っておくぜよ」
リョウマは銃を取り出し、身構えました。
決して体格の大きくないハーピーの群れの中に、巨大なサキュバスが一匹混じっていました。
「人間・・・見つけた・・・殺せっ」
パーピーの群れを従える夢魔のサキュバスは、高速でやってきたアグニ達に襲い掛かっていきました。
「来るぞ!!」
グラウスがいつでも魔法を撃てるように準備をします。
「返り討ちにしてやるけえのっ」
リョウマは二丁拳銃で応戦する構えを見せました。
「ハーピーの群れならこの私に任せて!!」
アグニは威勢よく言いました。
「ゼント、起きろ! 戦闘だっ」
絨毯の上でのん気に眠っていたゼントを、リョウマが叩き起こします。
「全く・・・人が気持ちよく寝ているというのに、楽させてくれないな」
ゼントは辟易した様子で上体を起こしました。
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