第70話『情熱紳士と鬼畜魔族』

時は少しだけ巻き戻ります。

 謎の亜空間に閉じ込められたペロッティは、ザルエラと相対していました。


「貴様が私の妻を殺したのか?」

「あなたの妻、ペミスエは無実の人々を傷つけ、殺しました。人間の掟に従ったまでです」

「ペミスエがそんなことを? そうか・・・それは済まぬ事をしたな」


 素直に謝罪をしてくるザルエラに、ペロッティの心中は多少動揺していました。

 しかし彼の中に芽生えた熱情が、闘争心をかき立てるのです。


「罰として、お前には、死ぬよりも恐ろしい恐怖を味合わせてやる」

「私はそう簡単にはやられませんよ!! この命に代えても、あなたを今ここで倒しますっ」


 ペロッティは勇猛果敢にザルエラに向かっていきました。


 彼のレイピアによる刺突の雨をあっさりと交わし、ザルエラはイグナ・グラムスを唱えます。


 ペロッティもその魔法を避けて、聖櫃砕き《ポゥ・トゥーレ》をザルエラに叩き込みました。


 これにより、ザルエラのレベルが大幅に下がります。


「ほう・・・貴様、そんな技が使えるのか。だが、軽い。さては、止めを刺したのは貴様ではないな」


「そんなこと、今となってはもはや関係ないでしょう!」


「一体誰を庇っている? 言えっそうすれば少しは楽にしてやるぞ?」


「私がやりました。それが事実です」


「あくまでもシラを切りとおすか、まあいい。では、お前には病原菌を送り込んでやる。」


 ザルエラは右手をどす黒い魔力で覆い尽くしました。その禍々しさは、ペロッティを後ずさりさせるには充分すぎる代物でした。


 そして高速でペロッティに近づいていくと、彼の喉を右手で掴もうとしましたが、素早さで勝るペロッティはその右手での拘束を避けました。


「急所打ち!!」


 ペロッティは自分に近づいてきたザルエラに、得意の剣術を見せ付けました。


 これにより、ザルエラは多少の損傷を負いましたが、彼はまだまだ戦える状態です。


「やるな、獣人族のコアラよ。だが、私は本気を出していない。私が力を出し切れば、貴様など、簡単に捕らえることが出来るぞ?」


 ザルエラはそう言うと、突然体を分裂させ、一気に五人に増えました。そして一人を除いて十字を切るようにペロッティを囲んだのです。


「なっくっそ。本体はどれだ!!?」


「本体なら全てだ。全てが私だ。さあ、食らうがよい。地獄病になっ」


 分裂した五人のザルエラがペロッティ目掛け、一斉に飛び掛っていきました。



 ペロッティは、イグナ・ネオ・アンプロポスを使い、必死にザルエラの右手に捕らえられぬよう逃げ続けました。


「やるな、コアラ。だが、遊びは終わりだ」


 ペロッティはイグナ・ネオ・アンプロポスの範囲外にいたザルエラに背後に回り込まれ、後ろから首根っこを掴まれて、体内に病原菌を送り込まれてしまいました。


 そして・・・。

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