第53話『因縁を買う者達』
ペミスエは胸部に強烈な痛みと熱が発せられ、彼女は激痛に顔を歪ませました。
「きゃあああ痛いっ熱いっ何?? 何なの??!」
「おまんが犯人か? 許さんぜよ~~~!!!」
自分の縄張りであるカジノ特区の凄惨なる光景に怒り狂ったリョウマは、単身ペミスエに向かっていったのです。
「このチビが・・・痛いじゃないのよ~~どうしてくれるの?」
ペミスエが言い終わるよりも速く、リョウマは銃を撃ち続け、ペミスエの腹部、右腕、そして足を次々に撃ち抜いていきました。
「があああああああああああっ」
「どうだっみたかっこのどくされめっ男女平等しごきだ、堪忍せいっ」
そのときリョウマの両頬には、再び小さな奇妙な文字が微かに浮かんでいましたが、やはり直に消えてしまいました。
「(? この女、一瞬だけど・・・・レベルが3万に上昇してた? でもすぐに戻った?? 何? 何なの?? そういえばザルエラが言ってたわ、ライカールトと昔戦ったとき、奴のレベルが突然見えなくなったって・・・・一体何なの???)」
ペミスエは、リョウマの未知の強さを感じ、後ずさりしつつ、銃弾の痛みに耐え続けました。
しかし、直にリョウマの弾丸は切れ、装填が必要になったのです。彼女は必死に近くの建物の柱の影に隠れ、弾を装填していきます。
「よくもこの純粋魔族のペミスエ様に、やってくれたわねっこのチビがっ死ね死ね死ね死ね死ね~~~~~~~!!!!」
「・・・魔族? 魔族だと??」
ペミスエはリョウマ目掛けて大量の魔法弾を撃ちはなってきました。しかしその多くはリョウマに命中せず、柱に当たるに留まりました。
魔族特攻の効果を持つ銃によって、ペミスエの体は大きな損傷を受けていたのです。
「(くっこの魔族・・・凶悪ぜよ。ウチ一人ではとても厳しい。しかし、このパパイヤンを守るためにも、引くわけにはいかんちゃっ)」
リョウマはおりょうの加護を使って柱から飛び出すと、ペミスエ目掛けて銃弾を乱発しました。
しかし薄暗い夜の中、殆どまともに当たることはなく、ペミスエが自らに接近してくるのだけがリョウマに解りました。
「ぐっ・・・これでも食らえっ」
リョウマはカバンからイグナ・エル・グレーテルの込められた無明の破片を素早く取り出し、ペミスエ目掛けて投げつけました。
「くっ痛い痛い痛いっ何なのっこの小娘、魔法も使えるの??」
「どうだ、見たか! これがリョウマ様の実力じゃきに! ウチを舐めたらいかんぜよっ」
「この、リョウマめーーーーーっ」
ペミスエはイグナ・エル・グレーテルの針の雨の激痛に耐えつつかいくぐり、リョウマに急接近してきました。
「来い! 頭を撃ち抜いちゃるっ」
リョウマはおりょうの加護を発動した状態のまま、ペミスエの右腕の一撃を弾き返すと、銃口をペミスエの眉間に押し付けて、引き金を引きました。
「ぐあああああああああああっ」
ペミスエはその場に仰向けに倒れこみました。
「はあ・・・はあ・・・疲れたぜよ・・・」
戦闘が終わったことを感じたリョウマが、おりょうの加護を解き、リュックから回復役を取り出そうとした、まさにその時です。
「なーんてねっ」
ペミスエはあっという間に起き上がり、再びリョウマに一撃を浴びせようと拳を振り上げてきました。
「しまったっ」
リョウマはその瞬間、はっきりと自らの死を覚悟しました。
しかし、
「イグナ・ネオ・アンプロポスッ!!」
突然、ペミスエの動きが鈍牛のように遅くなりました。
「なっなんですって!?」
「今です、避けてくださいっリョウマ殿!!!」
リョウマを助けたのは、コアラ姿のペロッティでした。そこにはアグニとグラウスの姿もあります。
彼らはカジノの屋上から、飛び降り様に特殊能力を放ったのでした。
「おまんら、助かったぜよっ」
「燃え尽きなさい! イグナ・オメガ・グラムス!!」
アグニは全魔力を込めた火球弾を、ペミスエの背中に叩き付けました。
「ぎゃあああああああああ熱いいいいいいいいいいいっ」
「そして動きを止めるっイグナ・アースブロックッ」
グラウスの放った土魔法によって、ペミスエは自らの足元から這い出てきた土の塊に絡め取られます。
「ぐっうっ動けないっ何よこれ、何なのよっこいつら、一体なんなの??」
「大丈夫か、リョウマ君?!」
「助かった。ウチは平気ぜよっ」
グラウスは地面に着地し、直にリョウマを庇うように彼女の前に立ち、戦闘態勢に入りました。
アグニとペロッティも着地し、リョウマを守るように立ちはだかります。
「観念しなさい、この悪党めっイグナ・オメガ・グラナダッ」
アグニは右手で強力な魔力を込めた雷の槍を作り出し、ペミスエ目掛けて投げつけました。槍はペミスエの胸部を容易く貫きます。
「ぐううううううっこのクソ人間共が・・・雑魚みたいなレベルのくせに・・・・覚えてらっしゃいっ」
ペミスエは力任せに自らの足を封じている岩石を破壊し、そして天高く舞い上がりました。
「こらっ待て。逃げるのか!? 卑怯者!!」
リョウマは逃げるペミスエ目掛けて銃を乱射します。
「待ってなさい! リョウマ!! 決めたわっ一週間後、いや、三日後には、このペミスエ様がっ必ず増援を連れてっこの街を滅ぼしてやるから!!!」
そう捨て台詞を吐いて、ペミスエは空中飛行して去っていきました。
「申し訳ありません。イグナ・ネオ・アンプロポスの範囲外に逃れていったようです・・・」
ペロッティが悔しそうに言いました。
「くっそう、あとちょっとで仕留めそこなったぜよっけど、深手は負わせた。三日後か・・・」
リョウマは銃をホルダーにしまい込むと、倒れている人々の救助にあたり始めました。
「みんな、大丈夫? 一体何があったの??」
少し遅れて、漣がアグニ達に駆けつけてきました。
「あ、漣。ウチらは無事ぜよ、それより負傷者の治療を頼む。医療特区にも連絡してくれっ」
「わっわかった」
漣は、まだ恐怖と痛みに怯え、震えている負傷者達を、得意の回復魔法で癒し始めました。
「ぐっ・・・なんということだ」
周辺に転がっている富豪や貴族、上流階級の人間達の倒れる様を見て、グラウスは怒りに燃えます。
「だから魔族は嫌なのよ! こういう事をするからっ」
アグニもいきり立ちます。その言葉を聞いた漣は、何ともいえないやるせない表情をしていました。
「取り逃がしてしまったのは残念ですが、とりあえず、今は生きている人々の回復に努めましょう」
一人冷静に、ペロッティは言います。
「うむ。みんなで手分けして、この薬を負傷者に飲ませてやってくれ。傷は直せんけど、応急処置じゃき」
リョウマはリュックサックから大量の世界中のエキスを取り出し、アグニ達に手渡しました。
このペミスエの起こした惨劇で、1名の死者と200名を超える負傷者が出てしまいました。
死者が一人で済んだ唯一の幸いは、その場所に、大賢者、ピエタ・マリアッティがいたことでした。
ですが、これは比較的治安の良い安全な場所として名の通っていたパパイヤン、カジノ特区の信用を落とす大惨事となったのです。
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