第49話『ジャックポット男』
そして夜。適当に時間を潰した一同は、各々合流し、カジノ特区へと足を運びました。グラウスは一件ほどエクソシストとしての簡単な仕事をこなしており、富裕層から報酬として3億ジェルももらっていました。
このカジノ特区には目玉の一つとなる大掛かりなオークション会場が、アイテムのレア度によって複数あり、観光客用の豪華な宿屋も数え切れないほど存在しています。夜になると沢山の富裕層や旅人達や住人がカジノやオークションに明け暮れているのです。
リョウマは濃緑のレザージャケットに鎖帷子、ホットパンツにニーソックス、そしてブーツと服装を変えていました。
「ここがカジノぜよ」
リョウマが巨大な建物を指差します。豪華な電飾でライトアップされ、夜だというのに周囲はとても明るいです。ちなみにこのカジノ特区はリョウマが総責任者であり、ムツが管理している地域です。
「これが、カジノ?」
「何やら巨大な洋館みたいじゃのう」
入り口にはカジノ・ド・モンテカルロと書かれた電飾掲示板が備え付けられています。すでに開店後ということもあって、多くの富豪や観光客が入れ替わり立ち代り入場しています。
「さっそく中に入るとするか」
リョウマはさっそく一同をカジノ内に案内しました。
カジノの内部はけたたましい音と多くの客の阿鼻叫喚の声で溢れていました。中央には沢山のコインが入った巨大な筒状のガラスケースが存在感を放っています。
「すごい熱気ですわね。一体どんな物があるのかしら?」
アグニは早速カジノの入り口横にある景品コーナーの看板を覗いて見ました。
パパイヤン富豪地区一等地永住権5000000
謎の筒300000
伝説の鞭100000
イチャラブプリンス60000
イチャラブプリンセス50000
イチャラブショタボーイ40000
マグマの盾40000
月牙刀30000
VIPパス20000
英雄の槍10000
英雄の斧10000
英雄の鎧10000
世界樹のエキス5000
無明の破片レア度C3000
バニースーツ1000
魔力水300
狂毒回復草200
無明の破片レア度F100
おみくじ10
と書かれています。
「まだまだ景品は増える予定ぜよ。」
「どんな遊びがあるの?」
アグニはリョウマに陽気な調子で尋ねます。
「スロットちゅー機械で縦に回転する5つの絵柄を揃える遊びと、ドキドキパネルという神経衰弱で、当てればアイテムが貰えるぜよ。それに双六、ポーカー、ブラックジャック、ルーレット、ガレリアの闇街にあるチンチロリン、花札もできる。そして現在地下にはなんとモンスター格闘場やコロシアムも絶賛営業準備中でな。あと3ヶ月か4ヶ月もすれば開業できるきに。ただ今は建築士が人材難でな。ひょっとしたらもっと遅れるかもしれんけど、まあ何とかなるだろう」
「一体なんでこの都市にはこんなに金持ちが溢れておるのじゃ?」
ピエタはカジノ周辺を歩いている豪華な服を着込んだ富豪達や住民を見て目を丸くしておりました。
「パパイヤンでは住民税や商品購入時の付加価値税はやや高めじゃけど、個人所得税や相続税、贈与税の類は一切取っておらんきに。だから富裕層がこの都市に大量に集まって暮しちょるんだ。都市の収益の6、7割はカジノ特区だしな。今後は商業地区をもっと発展させてガンガン収益を出そうと思ってるんだけど、鍛冶特区にちと問題もあって、都市開発計画は少々難航しちょる」
「ふむ。なるほどのう。この街が短期間でここまで急発展した理由が少し読めてきたわい。」
ピエタはリョウマの発言に納得したように頷きました。
しかし堅物のグラウスはカジノで遊ぶ事には消極的でした。
「いいんですか? ピエタ様。私達はこんなとことで遊んでいる場合じゃないのでは?」
「グラウスよ、お主は真面目な善人じゃが、少々頭が固いのう。よいではないか、所詮人という物は、多かれ少なかれ、俗があるもの。ワシは大賢者じゃが、賢者だからとて、聖人である必要など無い。誰よりも高潔であろう、真面目に生きよう、などと考えすぎると、人は時に歪んだ正義感を持つことがあり、邪悪な思想に毒されてしまうこともあるのじゃよ。お主が人として全うに生きたいと願うなら、適度に俗にそまった方が良い。それになんと言っても、その方が楽しいぞい」
「・・・そういうものでしょうか」
「うむ、所詮人間など、大した生き物ではない。ワシらの旅は困難を極めそうな予感がしておるが、とりあえず、今は思いっきり、楽しめるときを楽しもうではないか」
ピエタは天使のような笑みを浮かべ、グラウスに優しく語りかけました。
「カジノって、よくわからないけど、素敵だわ~一体どれから遊ぼうかしら~」
俗物の権化、アグニは死の宣告も忘れ、完全に遊ぶ事に集中していました。
「ねえリョウマ、一番稼げる遊びは何ですの?」
「一番稼げるのはスロットじゃき。一通りの施設で遊んでコインを稼いだら、スロットに集中するのが正攻法だな」
その後リョウマは、中央の柱にあるジャックポットを当てた人間の記録に目を付けました。そこには一部を除いて殆ど同一人物の名前が記載されていました。
「テオ? 誰かわからんが、漣は勇者がカジノにいるちゅーとったし、このテオって奴、こいつがその話に聞いた勇者ルクレティオっちゅー奴かな? なんだか随分と強運な持ち主だなぁ」
リョウマは金色に輝くジャックポットボードを見て、少々驚いていました。
「ジャックポットって何ですの?」
アグニが再びリョウマに尋ねます。
「ジャックポットちゅーのは、VIPスロットで77777を取れば、あの中央に設置された色んな人の外れコインが蓄積されたガラス製の大筒に入った大量のコインを独り占めできて、がっぽり儲かる仕組みぜよ。しかしそれにしても同じ人物が当て続けるとは、大層な奴だなぁ」
「その勇者ルクレティオという者。漣の話から察するに、強さの底がしれん。どのような戦い方をするのも、全く読めぬしのう。ひょっとしたら、何か小細工をしておるのかも知れんぞい」
ピエタがルクレティオの事を勘ぐり始めました。
「ふむう。ま、ウチはさっそくそのジャックポット男、ルクレティオちゅー奴を探してみるきに。とりあえず、おまんらはこのコインでカジノ遊びしておれ」
リョウマはカバンから会員証のカードをゼント以外の一同に渡しました。カードにはそれぞれ1000枚のコインがストックされており、VIPパスの表記もありました。
「ほほう。ではワシは遠慮なくドキドキパネルというものを楽しむとしようかのう」
「私もピエタ様に同行します」
ピエタとペロッティは意気揚々とドキドキパネルのコーナーへと向かいました。
「ウチはVIPルームに行ってくるきに。おまんらも来るか?」
「行くわ、私はスロットに興味があるの」
「私もです」
スロットに興味深々のアグニとグラウスはリョウマに付いて行く事にしました。
「ゼント、おまんはどうする?」
「俺は俗っぽい物には興味が無い。外で待たせてもらう。」
「そか、では外でまっちょれよ」
「ああ」
こうしてアグニ、グラウス、リョウマの三人はVIPルームへと向かいました。
次回:ついにご対面となった噂の勇者様。しかし彼は話を聞くどころか、問答無用でアグニ達を殺そうと襲い掛かってくるのであった。絶望している勇者の残酷すぎるその特殊能力とは?? 果たして一体どうなる??
次回『絶望勇者は悪魔になっておりまして・・・』お楽しみに♪
※次回更新日は年明けの1/10となります。
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