第45話『戦士ギルドへ』

アグニとグラウスが買い物に出かけている一方で、軍鶏鍋屋にてラズルシャーチへの具体的な道のりを模索していたピエタは、徐にこう言いました。


「これから先の戦いは益々激しい物になる。回復専門術士の仲間が必要じゃのう」

「そうですね・・・ピエタ様には火力も出して頂かないと困りますし」

「ウチらとはパパイヤンで別れるし、確かにおまんら4人の道中が不安だな」

「うむ・・・」


 ピエタが深刻な表情で考え込んでいたとき、アグニとグラウスが軍鶏鍋屋に戻ってきました。


「ただ今戻りましたわ、ピエタ様」


 アグニがとても弾んだ声で賢者に語りかけます。


「ふむ、お主達、買い物はもう済んだのか?」

「ええ、この装束を見てください」


 グラウスは得意げにピエタ達に新装束を見せ付けます。


「おまんら、その装束、どこで買うた?」

「近くにあったテンバーイっていう防具屋よ」

「テンバーイだって?!」


 リョウマがいきりたって立ち上がりました。


「どうしたの?」

「その装束、全く同じ物がウチの店なら1万ジェルで買えるぜよっ」

「なんですって~~~」


 アグニとグラウスは驚きの表情を浮かべます。


「私達、この装束に200万ジェルも払ったのよっ」

「あの店は典型的な転売商人の店ぜよっちいとまっとれっウチが金を取り戻しちゃるきにのうっあの極悪商人、頭に来たから追放したるきにっ」


 そう言うと、リョウマは全力疾走で軍鶏鍋屋を出て行きました。


 それから暫くして、リョウマは199万ジェルを持ってアグニ達の所へ戻ってきました。


「ほれ、もうあの店で買ったらいかんぞっ」

「ありがとう、リョウマ。助かったわ」

「パパイヤンには富豪が多く住んでるので、極少ないですが、正規品を適正価格で売らない店もあるんですよ」


 ミヨシは口惜しそうにそう言いました。


「パパイヤンの信頼を落とす行為ぜよ。そういう悪徳転売商人は全員駆逐せねばならんなっこの件はムツに厳しくウチが言っとくきに。ミヨシ君はきに止めるな」

「すみません、スセリ様・・・」



 リョウマは鼻息を荒くして言いました。


「これからは気をつけないと・・・」


 グラウスは反省したようです。


「さてと、話も一通り終わったし、ウチは戦士ギルドっちゅーところに顔を出しに行ってみるぜよ」


 リョウマはカバンを背負い、軍鶏鍋屋を出る準備を始めました。


「戦士ギルド? それは自警団みたいなものかえ?」


 ピエタはリョウマに尋ねます。


「何でも設立されて間もないそうで、ウチも詳細はわからんぜよ。だから話を聞いてこようと思ってな」


「私も行くわ。戦士ギルド、素敵な殿方が沢山いそうな響きがするもの」

「ワシも行くぞい。良い仲間を紹介してもらえるかもしれんからのう」


 アグニとピエタはリョウマに付いて行く気満々でした。


「一緒に来てくれるがか? 心強いぜよ。ゼント、おまんも来いっ」

「ふん・・・仕方ないな」


「私がゼント殿の代わりに行きましょうか? 彼は少々お眠むのようですし」


 ミヨシがアグニ達に割って入ってきました。


「いや、ミヨシ君も少し疲れたじゃろう? もう暫く休んでおけ。ウチラだけでいい」

「お心遣い痛み入ります、リョウマ様。では、どうか道中お気をつけて」

「ワシがついておる。安心せい」


 ピエタは得意げにそう言いました。


「グラウス、ペロッティ、おまんらはどうする?」


「私は富裕層の住む地区で、エクソシストの仕事の口を探しがてら、もう少しパパイヤンを適当に散策してみようと思います」


 パパイヤンという都市にやってきて、グラウスは久しぶりに優秀なエクソシストとしての仕事人の顔つきをし始めました。


「私はリョウマ殿のお店で手ごろなレイピアを購入しつつ、少し時間を頂いて、夜までに何か自分に役立つ道具を作ろうかと」


 ペロッティの道具という言葉に、金の匂いを感じたリョウマは質問を返しました。


「道具? 道具って何だ? ペロッティ」


「いえ、大した物ではないんです。簡単な時計でも作ってみようかと・・・」


「時計? そか、時計か・・・。高級そうなもんできたら、ウチがカバンで増やした後に買うから、絶対売ってくれろ」


「ええ、わかりました。ぜひ買ってください」


 リョウマは少々残念そうな表情をしつつ、再び言葉を発します。


 実はペロッティは賢者の国ジャスタールの名門魔道具技師の家の子で、優秀な魔道具を作れる技師でありました。


 彼がこの後作成しようとする時計のような魔道具は、後の仲間達にとって非常に有益な一品となるのですが、それが明らかになるのは今暫く先の話です。

 


「よしっ事が済んだら、ウチの経営する宿屋で待っていてくれ。ミヨシ君、2時間ほど休んだら、グラウス達の案内を任せたぞ」

「かしこまりました」


「ピエタ様、道中の無事を祈っておりますよ」


 ペロッティは不安げな表情を浮かべ、ピエタの手を取りました。


「心配するな。宿屋で待っておれ」


 こうしてアグ二達は軍鶏鍋店を出て住宅地区にある戦士ギルドへと向かいました。

 アグニ、リョウマ、ピエタ、ゼントの四人は軍鶏鍋屋を離れました。

 そして近くの路面電車の停車駅から電車に乗り込み、戦士ギルドのある住宅地区へ向かいました。


 さっそく住宅地区に到着すると、ゴシック建築で建てられた家の数々の中で、一際目立つ大きめの建物がありました。

 どうやらそこが目的地の戦士ギルドのようです。


「さっそく行ってみるとするか」


 リョウマは三人を誘導するように先頭を歩き始め、そしてギルド内部に足を踏み入れました。

 内装は色合い豊かであらゆる調度品が置かれており、とても豪華な見栄えのする施設でした。


 入ってきたリョウマに、早速案内役の獣人族の雄が近づいてきて声をかけてきます。


「いらっしゃいませ。戦士ギルドへようこそ。何かお困りごとですか?」

「いや、ウチは会合衆の一人、パパイヤンの市長のリョウマ・サイタニぜよ。戦士ギルドのマスターに会いに来た」

「これはこれはリョウマ様。お噂は常々うかがっております。どうぞ、ただ今マスターのいる部屋へお通しします。二階へお上がり下さい」


 リョウマ達は案内役に連れられ、二階のマスター室へ入りました。


「漣・エローレ・雪定様、パパイヤンの市長、リョウマ・サイタニ様がお見えになられました。」

「通して」


※次回予告:ついに待望の新キャラの女性登場! 果たして彼女はアグニ達の仲間になってくれるのか? そして新たなる事実が明らかに?? お楽しみに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る