第41話『生の宝石の価値』
一同はミヨシの案内で、路面電車に乗りながら各地区を見学してまわりました。
しかし広い領土の割に建築中の建物が目立っています。
「建築中の建物が目立ちますね・・・」
路面電車の窓から風景を見つめていたペロッティが言いました。
「人口自体は商人達の宣伝によって急速に増えていってるんですが、如何せんガレリア王国が大規模な魔族の襲撃を定期的に受けている状態でして。優秀な大工達は皆、常にガレリア王都の再建に召集されている状況なのです。その為土木作業関連が現在大変遅れていて、特に腕の立つ建築士や大工の人員が大幅に不足しているんです」
「イマイチ広大な土地を使いきれんのは、ガレリア王国への定期的な魔族襲撃の為ですか・・・」
「はい。腕の立つ大工など、そういう人材は大変貴重でして、各国で引っ張りだこ状態ですから・・・中々まだパパイヤンまでは来てくれないんですよ。道中もべヒーモスがいて危険ですし。まあ魔族が世界樹を敬ってこのパパイヤンに攻めて来ないのだけが唯一の救いですけどね」
ミヨシはパパイヤンの深刻な建築関連の人材不足を嘆いていました。
「何かよい方法はないものかのう・・・優秀な大工。何かどこかで会ったような気もするが、もう忘れてしもうたわい」
ピエタは少し思案している様子でした。彼女はクソ雑魚のポンカツ旅団のこと等すっかり失念していたようです。グラウスとアグニも同様でした。
「さて、一通りの見学も終わりましたし、そろそろ軍鶏鍋屋に行きましょうか」
軍鶏という言葉にアグニは敏感に反応しました。
「軍鶏? それは何ですの?」
「軍鶏という特殊な鶏の肉の事ですよ。リョウマ様が昔ラズルシャーチの領地内で偶然つがいの二匹を見つけて、その卵をカバンで大量に増やして、今は生産地区で大繁殖させてます」
「肉?? まあ素敵、楽しみだわ~」
肉が大好物なアグニは、軍鶏という言葉に胸を弾ませました。
「あまりはしゃぎ過ぎるなよ」
「おい、カジノへ寄って無いぞい! カジノに連れて行ってたもれ」
「ピエタ様?」
グラウスがピエタの発言に多少の違和感を覚えました。
「カジノは現在夕方から朝にかけてしか営業していないんです。今はまだお昼ですから、軍鶏鍋屋で食事を取り、時間を潰し、夜に参りましょう」
ミヨシの提案に、ピエタは渋々同意しました。
一方商業地区にある顔なじみの素材買取専門店に向かっていたリョウマとゼントは、早速店に到着し、中に入りました。
店の内部には沢山の客から買い取った怪物などの貴重な素材が綺麗に陳列されています。少し薄暗い空間です。
「おーい、トットーネさん。おるかーー? リョウマぜよ~」
「はーい、ああ、スセリビメ様。お帰りなさいませ」
リョウマの声を聞いて店の奥からやってきた恰幅のよい容貌のトットーネ・ヒロフミは、リョウマがもっとも信頼している豪商人の一人で、現在の会合衆の副代表です。彼女の意に沿うように政を行いつつ、商いもしている、世界でも名の知れたサラバナ出身の立派な商人です。普段は素材買取専門店に居ますが、他にも商業地区で多くの武器屋、防具屋等を経営しています。
「その名で呼ぶのは止めちくり。ウチはリョウマぜよ」
「はは、こいつはどうも、クセでして。お久しぶりですね。で、今回の旅で何か収穫はありましたか」
「うむ。超巨大なべヒーモスの肝を手に入れた。4つあるきに、それを全て買い取って欲しいんだが」
「超巨大な、べヒーモスの肝?! そんな大層な代物を手に入れたんですか? それは素晴らしい。ぜひ鑑定させてください」
リョウマは言われた通りにリュックサックからべヒーモスの肝を一つ出しました。
広い店内が肝で覆いつくされます。
「ひいい・・・こっこいつはとんでもない、この私も見たこともないような、超極上の肝ではないですかっ?」
「そうじゃろ? 1つ3億でどうじゃろう?」
カウンターから出てきたトットーネが、ルーペを使って巨大な肝の鑑定を始めました。
「3億ですか・・・保存状態は極めて良好で、傷一つ見当たりませんね。とてつもない上等品です。これなら5億が妥当ですよ、姫様。ですが流石に5億となるとサラバナに交易品として直接卸さないといけなくなりますね。その方がパパイヤンも潤いますし。べヒーモスの肝は使用用途も多岐に渡りますからね。いいでしょう、5億ジェルで買い取りましょう。でも本当にこの私が買い取っていいんですか? 直接サラバナまで行って富豪に直に売りつければ、人によっては20億程度はポンと出すほどの一品ですよ?」
「いや、ウチはサラバナには行く気ないし、富豪達に姫が商いをするわけにもいかんきに。トットーネさんそういうの得意じゃろ? 今回はそれでよか。それより今すぐ金をくれんかな?」
「少々お待ちを。流石にそれほどの大金のやり取りになると、今すぐという訳にはいきません。なんといっても全部で20億ジェルですからね。一週間程、お金を用意するのにお時間を頂きたいです」
「わかった。では一週間後に取引といこう。ウチもしばらくパパイヤンでのんびりしたいしな」
「了解しました。いやあ、流石はリョウマ様にゼント殿。非常に希少価値の高い素材を持ち帰りましたね~」
「それほどでも~」
リョウマは少し気恥ずかしそうに頭を掻きました。
「あの、リョウマ様、ひょっとして、肝をカバンで増やしてますか?」
「おう。今は1個だけだが、2週間もあれば1個は増えるかもな」
「もしよろしければ、この私めに定期的にその肝を売ってくださいませんか? 値段も5億ジェルで。非常に希少価値の高い一品ですから」
「ああ、まあ、それはおいおい考えておくぜよ。あまりバンバン売りすぎると、価値も下がるしな」
「まあそれもそうですね。では、またお暇なときにでも売りに来て下さいませ」
「うん。また来るぜよ」
「よろしくお願いします」
トットーネは丁重にリョウマにお辞儀しました。
「あっそうだ。あと、ついでにこれも」
リョウマは、今度はゼントが手に入れたモンスターの素材の山を店内一杯に敷き詰めました。
「ひええ・・・何という数ですか~」
「これも全部買い取ってほしいぜよ」
「わっわかりました。ではそちらも一週間後に。これは久々に大仕事になりそうですね、あはははっ」
「うむ。頼んだぞ、トットーネさん」
肝と素材の売買手続きが終わり、リョウマとゼントは自らのお店、サイタニ屋へ顔を出しに行きました。
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