第29話『神特攻』

 団長を含めた盗賊団5人はアグニ達四人に土下座し、許しを請いました。


「お願いします~~ほんの気の迷いだったんです~命だけは、命だけは助けてくだせえ」


 団長のポンカツはリョウマに必死に命乞いをします。


「おまんら、もう悪いことはせんか?」

「しません、二度としません。というか、俺らの事情を聞いてくだせえ」

「事情? なんだ?」


 団長のポンカツは顔を上げ、ゆっくりと話し始めました。


「実は俺ら5人はモントーヤ邸お付の大工だったんですが、そこのお嬢様のアグニって子供がとんでもない悪女で、あっしらを鬼のように苛めてしごいて、こき使ってきたんです。あっしらはその無茶苦茶な振る舞いに耐え切れず、モントーヤ邸を逃走して・・・気が付けばケチな盗賊家業に身をやつすようになってしまいました・・・。あっしらがこうなったのは、全部、全部、そのあのアグニって言う子供のせいなんですううううう」


 ポンカツはおいおいと泣き始め、それに釣られて悲しい想い出をぶり返したのか、構成員達も泣き出してしまいました。


「なんだ、全部お前のせいじゃないか」


 グラウスがアグニに冷徹な眼差しを向けます。 


「何よ、私がそんな酷い真似、するわけなくてよ」


「ひえ、そっその聞き覚えのある高い声はっ」

「そうよ、私がアグニ・シャマナですわよっ」


「ひいいいいいい」

「お願いします、お嬢様。お願いですから鞭打ちだけはご勘弁を~~~!!」

「ローソクは低温の物を使って下さい~~~~!!」

「あっしらは実験台じゃありません~~しがない大工なんです~~~~」


 盗賊団たちは必死にアグニに懇願しました。


「お前、一体彼らにどんな残虐な振る舞いをしたんだ?」

「全く記憶にございませんわっ潔白ですわよ」


 アグニは可愛らしくそう言いきりました。


「無駄じゃ、アグニには人格変性の魔法がかかっておる。過去の記憶も美しい物に変わっておるのじゃよ」

「全く。。。」

「そいなら、ピエタ様。ウチも無事じゃったし、今回はこのアホ共を見逃してやることにするぜよっ」

「うむ、そうじゃのう」


 必死に頭を垂れる盗賊団を尻目に、ピエタはリョウマの手にしている銃に目を凝らしました。


「ところでお主、その右手に持っている物は何じゃ??」

「ん? これはリボルバー式の拳銃、ちゅうもんがぜよ」

「リボ・・・ルバー? 拳銃?? なんじゃい、それは?」

「昔、異世界に迷い込んだときに出会った人に貰ったきに。ウチの秘密兵器ぜよっ」


 リョウマは得意げに言います。


「ふむ・・・その拳銃とやら、特殊な魔力を感じるのう。さてはそれにも魔綬がかけられておるな?」

「ご名答、神・魔族・魔物・対人特攻の四つの魔綬がかけられとる」

「また神特攻じゃと? その出会った者に神特攻の魔綬をかけてもらったのか?」

「いや、異世界からオフェイシスに戻ってゼントと旅をしとるときに出会った人にかけてもらったぜよ」

「何じゃとっ一体何者じゃ???」

「もう三年前の話だ。確か流浪、とか名乗っちょったな」

「流浪・・・う~~んまだこの世に魔綬を使える者がおるとは、しかも神特攻とな。全く、旅に出てから驚きの連続じゃ。世界は広いのう・・・」


 ピエタは少し気落ちした様子で呟きました。


「さて、リョウマも無事救出したし、戻るとしましょうよ」


 アグニが陽気に切り出しました。


「そうじゃの、行くとするか」

「おまんら、もう悪さするなよ~」


 リョウマは盗賊団に釘を刺します。


「はいっこれからは心を入れ替えて表の食い扶持を探してみせますっ」


 団長のポンカツは泣きはらした顔を上げて叫びました。


 こうしてアグニ達は盗賊のアジトを後にしていきました。


「お達者で~~」


 盗賊団は表まで出てきてアグニ達を見送りました。

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