第28話『神の銃』

 リョウマの能力に驚いた盗賊団の構成員は、尻餅を付いてしまいました。

 そして彼女は悠然と立ち上がります。 


「さてっと。ここがどこかわからんが、皆と合流せんとのお」

「ふんっレベル3の分際で、偉そうな小娘がっ早くカバンを開けて肝を出さんと、ホントに泣かすぞっ」

「レベル差など、手にした武器や能力で幾らでもひっくり返せるぜよっおまんらも見てわかっただろうがっ」

「何を~生意気なガキめっこの俺、シュウカツ様のレベルは17だぞっとっても強いんだぞっ」

「この俺、アポカツ様は11っ」

「この俺、ハロカツ様は13っ」

「この俺、フクカツ様は16っ」

「そして団長の俺、ポンカツ様は、なんとレベル38だっどうだ!! めちゃんこ強いだろ?! 失禁しろっ」


 これは決して笑い話などではなく、一般的な人間のレベルは3から、高くても10なのです。彼らは普通の人間としては充分強いのです。団長は、特にです。彼らは自らのレベルを誇示することで自分よりレベルの低い人間を恫喝し、金品を巻き上げていたのでした。 


「はぁ・・・だったらおまんらであのべヒーモスを倒したらばよかったろうもん」


 リョウマは辟易した調子で言いました。


「なっ馬鹿な事を言うな。あいつは、俺達の手には負え・・・、

 いや、俺達がわざわざ相手にするまでもない奴だっ戦う必要など、ないっ」


「・・・話にならん。ウチは帰るきに、そこをどけっ」


 リョウマは置いてあったカバンを背負うと、歩き出そうとしました。


「貴様、動くなっ本当に泣かすぞっ」


 リョウマはため息をつき、着くずしたオーバーオールのポケットからリボルバー式の拳銃を取り出すと、団長に向けました。


「おまんらなど、これで充分ぜよっ」


「なっ貴様、なんだそれはっ」

「おまんらには教えちゃらんっさあ、そこをどけっどかんと痛い目に遭うぜよ? ウチは本気じゃきにのう」

「ええい、かまわねえっ死なない程度に痛めつけろっ」


 盗賊たちはリョウマ目掛けて再び一斉に向かって行きました。


「おまんら・・・ほんまに馬鹿じゃのう」


 リョウマはそう呟くと、銃を発砲しました。

 銃弾はレベル11の盗賊の右足を貫通していきました。


「うぎゃあああああ~~~~痛てぇ~~~痛ぇよ~~~」

「なっ」

「おい、大丈夫か??」

「貴様、何をした~~~っ」

「・・・だから言ったじゃろう。判ったら早く手当てをしてやり。さもないとそこのレベル11、ほんとに死ぬぞっ」


 一方、足跡の先にあった洞窟に辿り着いたアグニ一行は、盗賊団構成員の悲鳴を聞きました。

 その洞窟は木組みで道が作られており、見事な大工仕事がなされていました。


「なんじゃい、今の悲鳴は?」

「殿方の物よ」

「リョウマ君の身に何かあったのかもしれないっ」

「うむっ二人とも、急ぐぞっ」


三人は大急ぎで洞窟の中へ入っていきました。 


「痛い~~~お母ちゃ~~~~~んっ」

「うっうるさいっわめくんじゃねえ」

「こっこのガキ。そんなわけのわからねえもんで、俺達をやれると思うなよ」

「・・・・次は頭を狙うぜよ? そしたら、おまんらは一撃でお陀仏だ」

「ぐっ・・・」


 リョウマの脅しに、隊長のポンカツと残った構成員達は後ずさりしました。


 と、そこへ、アグニ達三人が駆けつけてきたのです。


「無事か、リョウマ君!!」

「おお、おまんら、来てくれたがかっ!」


「何だと?」


 構成員の一人が後ろを振り返りました。そこにはアグニ達が戦闘態勢を取って待ち構えている姿がありました。


「ぐ・・・挟み撃ちとは、卑怯だぞっ」

「盗賊の台詞じゃないぜよ・・・」 


 リョウマは少し呆れたといった表情で言いました。


 構成員の一人は、幼女姿のピエタに目を付けました。


「おい、あのガキの女はレベル1だぜ」

「俺達でも倒せるな」


 盗賊二人がピエタに切り掛かって来ました。


「むっ」

「危ない、ピエタ様っ」

「構わんっふう・・・イグナ・シールドッ」


 ピエタの体の周囲に防御シールドが貼られ、切り掛かった盗賊の剣は防御壁の前で止まってしまいました。


「なっ何??」

「こいつ、魔術師かっ」

「ふ~む・・・愚かな奴らじゃのう。倒す気も失せるわい」

「全くもうっ馬鹿馬鹿しくて、お話しにならなくてよっ」  


 アグニの発言にいきり立った盗賊団は、抗議をはじめました。


「何を~生意気な女めっ俺のレベルは17だぞっとっても強いんだぞ」

「俺は13っ」

「俺は16っ」

「そして団長の俺は、なんとレベル38だぁ!! どうだ!! 強いだろ?! 傅けっ」

 

 一通りの口上を聞いた後、アグニはため息をついて、そして言いました。

 

「ワタクシのレベルをよーく見なさい、53よっ」

「自慢して言える事か・・・」


 アグニのレベルを聞いた構成員達は怯えてしまい、その場を七転八倒しました。


「なっなんだって~~~~~」

「ひいいいいいいいいいっ」

「殺される~~~~~~」

「団長、助けてくれ~~~~~」

「なっなに、俺一人にやれと言うのか? お前ら!」

「だって団長は、レベル38もあるじゃないですかっ滅茶苦茶強いじゃないですかっ」

「ぐ・・・そっそうだな、所詮レベル差なんて、武器や能力次第でどうにでもなるしなっ」

「ゼントが聞いたら怒りそうぜよ・・・」


 リョウマは再び大きくため息を吐きました。

 

 団長は人間にしてはレベルが高く、多少の剣技が使えるというだけで、

 特に戦闘に有益な特殊能力は、一切持ちあわせていませんでした・・・。


「おい、お前ら、私のレベルをよ~く見ろっ」


 身構える盗賊たちに、グラウスが止めをさすように威勢を張りました。


「何・・・っげげげげっれ・・・レベル70~~~!!!!!! 化けもんだあああああああっ」

「なによ、あなたも得意げに言ってるじゃないっ」


 アグニがグラウスに猛烈に抗議をしますが、グラウスは涼しげな顔でこう続けました。


「私は昨日もっと強い、本物の化け物と戦ったんだがな・・・・」


 グラウスは心底うんざりしたような表情で言い捨てると、腰に挿したナイフを抜きました。


「お前ら如きに魔法はいらん。このナイフで、切り伏せてやるっ」


「ひいいいいい団長~~~なんとかして下さい~~~~っ」

「くっ・・・くっそ~~~こうなりゃヤケだ~~~っ」


 隊長は剣を振り上げると、グラウスに切り掛かってきました。

 グラウスは反撃の構えを見せましたが、リョウマが間に入って二人を制止しました。


「ならんグラウス、殺すなっ盗賊でも、命は命ぜよっ!」

「リョウマ君・・・」

「がっガキ・・・」


 隊長のポンカツは剣の切っ先を地面に落としました。


「ピエタ様、そこのレベル11のアホを治療してやってくり」


 リョウマは傷ついて呻き声を上げ続けている盗賊の回復をピエタに催促しました。


「むう・・・やれやれ、魔力の無駄遣いじゃわい」


 そう言ってピエタは倒れている盗賊に近づくと、回復魔法をかけてあげました。

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